短編

雑な感じですが追記から!

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「────はぁ。」


職場で上司に散々嫌味を言われた帰り道、私は小さく溜息を吐いた。私の名前は高町なのは。今年で22歳の所謂OLというやつで、今日も今日とて職場の上司に上司の子息とのお見合いだのなんだのと勧められたところ。結局断りきれなくて、明日その息子さんと食事に行くことになってしまった。


「そんなの興味ないのになぁ……」


そう小さく呟いていると、住んでいるマンションへと到着した。見上げると自分の部屋の明かりが煌々と輝いていた。その事に嬉しくなって、足早に歩を進めて部屋の前へと急ぐ。

扉の前についてドアノブをまわそうと手を伸ばしたところで。


「お帰り!なのは。」


足音で分かったのか、部屋の扉を開けて出迎えてくれた人が1人。金色の髪を腰で結び、ラフなジーンズと黒のパーカー。それから珍しくエプロンを装着している。


「ただいま、フェイトちゃん。」


そう微笑むと、すかさずに頬にキスが飛んできた。犬がじゃれつくようなそんな感じで、さっきまでの嫌な気分が吹き飛んだの。彼女はフェイトちゃん。私よりも少し年下で、少し前から私の部屋に住みついている。恋人……というにはまだ彼女を知らないことがたくさんある。たとえば本名とか、そういうものを。馴れ初めは行くところがないという彼女を私が家に連れてきただけ。だけど付き合っている。とても好き。以前、友達に「ペットと飼い主みたいね、それかヒモ。」とか言われたけど、でもそんな感じかも知れない。彼女自身、「私はなのはのペットだよ」なんて楽しそうに言っていたし。「なのは」って呼びながら寄ってくる彼女は本当に犬みたいだし。


「フェイトちゃん、何か作ってたの?」
「え?うん。……たまには何か作ろうと思ったんだけd」
「この黒い塊はなぁに?」
「卵焼き、だと思うんだけど……」


楽しそうに目には見えない尻尾をブンブン振るフェイトちゃん。ふと目に入ったフライパンの上に乗った黒い塊を見て、その正体を聞いてみる。……けど。


「ご飯、私が作ろうか…」
「………うん。」


何というかフェイトちゃんは料理が壊滅的にダメなわけで。私がそう言うと、フェイトちゃんはしょんぼりと肩を落として、心なしか目に見えない犬耳的な何かも項垂れている気がする。


「今度は一緒に練習しよう?」
「うんっ」


私が慌ててそう言うと、フェイトちゃんは直ぐに立ち直ったようで嬉しそうに頷いたのでした。そんなところも本当に可愛いのだけど。フェイトちゃんを養うためにも仕事は頑張らなくちゃ。


「なのは、何か嫌なことあった?」
「ふぇ?どうして?」
「何となく。不穏な匂いがする。」


「犬は鼻が利くんだよ」なんて言いながら耳元にキスをしたフェイトちゃん。


「それは冗談だけど、なんだか疲れた顔してる。」
「ふぇ?…そうかな?」
「うん。」


じゃれるようにキスの雨を降らせるフェイトちゃんに目を瞬くと、フェイトちゃんは「なのはの事なら直ぐに分かるよ?」と子供っぽい、だけど優しい微笑みを浮かべたのだった。……うーん、上司の息子さんとお見合いしろって言われたことは、黙ってた方が良いのかなぁ…?あんまり余計な心配させられないし、と考えて結局私はここの所仕事で会議が多いからなんて、適当に誤魔化したのだった。フェイトちゃんは一瞬考えるような仕草をしたけれど、直ぐにいつもの無邪気な笑顔に戻って「無理はしないでね?」なんて優しく前髪を梳いてくれる


「明日少しだけ遅くなるかも。」
「お仕事?」
「………うん、そんなところ。」


本当の事は言わずにそう言うと、フェイトちゃんはちょっとだけ残念そうな表情をしてから「なるべく早く帰ってきてね?」と甘える。そんなフェイトちゃんが可愛くて、今度は私からフェイトちゃんにキスをしたのだった。























そうして翌日の夜。私は少し上品な感じのレストランに気乗りしないままやって来ていた。何でもこのレストランは上司の人の行きつけのレストランらしく、私の勤める会社のグループの経営するレストラン。もちろん一人で来たのではなく、上司の息子さんと2人で。上司のパワハラとも言えるくらいの強引な押し進め。さっさと済ませて早く帰ろう、なんて思っているのに。初対面の相手の男性はやたらと良くしゃべるわけで、私は愛想笑いを浮かべて適当に相槌を打つ。


「高町さんは恋人がいらっしゃるんですか?」
「え?」
「いえ、なんでもチラっとそんな噂を聞いたものですから。」


話の中で不意に、ワイングラス片手に笑顔でそんな事を言う相手の人に苦笑いを浮かべた。恋人がいるって知ってるならこんなところに呼ばないで欲しい。ていうか常識があれば普通は誘ったりしないと思うのだけど……私の苦笑なんてさして気にしないその相手の人はさらに話を続ける。


「お相手の方は何をされてる方なんですか?」
「え?」
「お仕事など、お聞きできればと思ったんですが。」


笑顔のままそんな事を聞くその相手の人は、多分フェイトちゃんの事を知ってるんだと思う。馬鹿にするようなそんな顔だったから。


「特に何かしているわけではありませんが。」


フェイトちゃんは私の知る限り仕事をしてる様子はない。だって私が養ってるし。本当にペットといったら悪いかも知れないけれど、そんな感じだ。だから友達にヒモって言われるんだけど、それにしたってその友達の言い方はこの人のように失礼な言い方ではなかったけれど。


「じゃあ、高町さんが養ってる、と?」
「……一応年下ですから。」


ほんの少し低い声が出た。


「ではペットみたいなものですか。」
「ぇ?」
「いえ、僕もそんな感じの経験はあるので分かりますよ。貴女も寂しいんでしょう?」


人間誰でも寂しいときがありますからね、なんて見当違いも甚だしい事を続けるその人に、私は反論しようとして思いとどまる。友達に言われるのではなくてこんな人に、馬鹿にするようにフェイトちゃんを「ペット」呼ばわりされるのがどうしてか許せなかった。だけど反論できないのがもっと悔しい。……言われてみれば、私は彼女の事を良く知らないから。彼女から言うまで無理に聞かないようにしていたけれど。もしかしたら、私が彼女を好きと思っているほど彼女は私を好きではないのかもしれない。だから本名も何も教えてくれないのかな?とても不安になって、視界が涙で滲む。滴が零れたと思った瞬間に。



「わんわんっ」


不意に。そんな声と共に抱き寄せるように後ろへと体を引っ張られる。すっぽりと誰かの腕に埋まる。この感覚とか香りには覚えがある。だってこの香りは……


「ふぇ、フェイトちゃん?」
「何だお前はっ!」


何でここに?急に現れたフェイトちゃんに激昂するその相手。少し高級めなレストランに相応させたのか、いつものパーカーではなくて黒っぽいシャツに身を包んだフェイトちゃんはいつも通りの微笑を浮かべているけれど、ほんの少し怒っているような表情だった。


「何って。さっき私の話してなかった?ペットとか。」
「なっ───!」
「うーん、どっちかって言うとご主人様が心配になって迎えに来た忠犬ってところかな?」


クスクスと、フェイトちゃんは相手の神経を逆撫でするようにわざと肩を竦めて見せる。


「大丈夫?なのは。」
「ふぇっ」


いつもの子供っぽい、犬っぽいフェイトちゃんとは一変して。少しだけ大人びた表情で、だけど挑発的な視線を相手に向けるフェイトちゃんは唇で、私の瞼に浮かんだ涙を掬い取ると、椅子に座る私を後ろから抱き寄せるようにして相手に睨みを利かせる。見惚れるような鋭い紅い瞳。今まで見たこともないかも知れない。


「駄目だよ。なのはの事泣かせるなんて。───いくら温厚な私でも、咬みつくよ?」


それからいつもより低めの声の後に、冗談をめかした「犬は犬でも狂犬だからね」なんていう台詞が続いて、相手はますます激昂したような声を上げた。


「──おい!こいつをつまみ出せ!」


私の上司が上役という事もあるので彼は優先されているし、店の人物は基本的にはこの人の言うなりになってしまう。フェイトちゃんの身が危ないかと思って立ち上がろうとした私の肩を、どうしてかフェイトちゃんが「そのまま座ってて」というように抑える。どうしてか店の人も動こうとせずに、ただ静観したままだった。



「………彼をつまみ出してくれるかな。」


その数秒後。


「ふぇ?」


静かに紡いだのはフェイトちゃんで、同時に店の人たちが相手の人の腕を掴んで強制的に立たせた。……というかどうしてフェイトちゃんの言う事を?


「権力に物を言わせるのってあまり好きじゃないんだけどさ。目には目を、って。言うでしょう?」


相変わらず怒りを孕んだままの声で静かに紡ぐフェイトちゃん。眼を見開いたままの私に、フェイトちゃんはいつものふにゃりとした表情で「ごめんね」とだけ紡ぐ。


「ここって私の家の店なんだよね。」
「ふぇぇ?!」


「私の家の店なんだよね」と言ってテヘッ、なんて笑うフェイトちゃん。この店は私の会社のグループのお店だ。ということは、フェイトちゃんって───?


「私の名前ね、正式にはフェイト・T・ハラオウンっていうんだ。」


案の定。ハラオウングループの、お嬢様って事になるのかな?そう聞くと同時に相手の人の顔色が一変した。面白いくらいに真っ青に。


「だからさ。」


私に向けていた表情とは変わって不敵な、余裕を浮かべた表情で。


「どうしてもなのはが欲しいなら、持ってるもの全て捨てる覚悟でおいでよ。私は、私の大切な人を泣かせるようなクズ野郎には容赦しないから。」


穏やかな表情、穏やかな声で。恐ろしいことをさらっと言うフェイトちゃんに、相手の人は何も言えなくなって、真っ青な顔のままお店の人に連れられて行った。


「ふぇ、フェイトちゃん……」
「あはは、ごめんね。隠してて。」
「な、なんで隠してたのっ?一言言ってくれたら良かったのに……」
「そしたらなのはとの関係が崩れちゃいそうで怖かったんだ。」
「ふぇ?」
「何となく。今まで見たいに接してくれなくなっちゃったら嫌だなって。私ほら、ペットみたいに撫でてもらうのが好きだから。」
「…………馬鹿だなぁ、フェイトちゃんは。」


そう言って、椅子に座る私の横に立っているフェイトちゃんのお腹に額を寄せる。


「フェイトちゃんはフェイトちゃんだよ。」
「本当?」
「うん。助けてくれてありがと。」
「………わん。」
「ばか。……そう言えばご飯食べた?」
「うぅん。」


そう言えばフェイトちゃんのご飯用意してこなかったんだっけ、と思い出して聞くと、フェイトちゃんはちょっとだけ唇を尖らせて「まだ」と言う。もうすっかりさっきまでの格好良いフェイトちゃんはいなくて、いつもの甘えん坊なフェイトちゃんが居た。


「どこかで何か食べてく?」


そう首を捻ると、フェイトちゃんは。


「なのはの手料理が食べたいかな。」


なんて。満面の笑顔で微笑んだのでした。フェイトちゃんの事はまだまだ謎が多いけれど。ペットみたいなフェイトちゃんだけじゃなくて、もっとたくさんのフェイトちゃんが知りたいなって思ったり。








翌日、何故か私はグループ総帥のリンディさんと言う女性に呼び出されて「フェイトのお嫁さんになってくれないかしら?」とか詰め寄られたりした。……なんでも、他所にはお嫁に出したくないんだって。そこに、顔を真っ赤にしたフェイトちゃんが乱入してきたりして、何だかフェイトちゃんの家族模様が覗けたような気がしたのは余談なの。










FIN




テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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初心者ですが宜しくお願いしますorz
あと、一応リンクフリーです(^^);

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