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「追う」を選択

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いつか私はなのはの側に居られなくなる。代わりに別の誰かが、なのはの隣を歩くのだろう。分かってるはずなのに、分かりたくない。小さく溜息を吐いて、私はなのはが走り去った方向を見た。もうすでになのはの姿はなくて。私はこのままで良いんだろうか?


「そんなはず、無い。」


奥歯を噛みしめて、手を握り締めて。曇天の下、私は走り出した。地面には薄ら雪が積もっている。足跡は一つ。なのはの足跡だけだ。だけどなのはが何処にいるかなんて足跡を追わなくたって分かる。白い息を吐き出しながら、とりあえず走る。


「あれ?」


途中から足跡は何故かなのはの家とは反対方向に向かっていることに気が付いて、私はさらに足を早めた。この方向は、海鳴公園の方向だ。もしかしたら誰かと会う約束でもしてるのかな?それだったら私が行くとちょっと邪魔になるかもしれない。だけど、会う約束をしてるなら、そんな話を前もってすると思う。だから私は足跡を追って海鳴公園へと向かった。


「はぁ、はっ……」


やって来た海鳴公園で、私はすぐになのはの後ろ姿を見つけた。正確には、ベンチに座って何処か遠くを、或いは空を仰ぐなのはを。寒くて風邪ひくよ、って思いながらちょっと近場にある自販機で2人分の飲み物を買って、なのはに近付く。よほど物思いに耽ってるみたいで、私の気配には全く気付かず。


「なのは。」
「………ふぇっ?!」


横に立って名前を呼ぶと、なのははようやく私の存在に気が付いたみたいでびっくりした顔で私を見上げた。本当に物思いに耽ってたみたい。


「風邪ひくよ?」


それから、隣に腰かけてさっき買った温かい缶のココアを差し出す。なのはの作ったキャラメルミルクには敵わないけどとりあえず冷えた体が少しでも温まるように。


「あ…ありがとう……。」
「やっぱり追ってきて正解だったね。」
「ぇ?」


私が苦笑すると、これまた驚いたままの表情のなのはがこっちを振り向く。


「どうしたの?なのは。」


自分の手元の缶コーヒーを開けて、口元につける。それから「さっき言ってたことで悩んでるの?」と付け足すと僅かになのはの肩が震えた。それを横目で見つつコーヒーを喉に流す。


「私でよかったら、聞くけれど……」


本音を言えば、なのはの好きな人の事をなのはの口から聞くなんてとても怖い。だけどなのはがこんな風に一人で悩んでいるのを見るのはもっと嫌だ。どんな時だって私はなのはに笑顔でいてほしい。なのはの隣に居れなくなったとしても、私は────


「フェイトちゃんはさ。」
「ん?」


しばらく無言だったなのはが口を開く。私はそれまでの思考を霧散させてなのはの言葉に耳を傾けた。


「私がなぁに?」
「フェイトちゃんは優しいよね。」
「え?」


なのははそう言うと、クスッと笑い出した。


「そんな事…ないと思うんだけど。」


優しいのはなのはの方だよ、と続けるとなのはは首を横に振った。


「優しいのはフェイトちゃんだよ。今だってこうやって追いかけてきてくれたし…。」


それはなのはが相手だからね、とは口にせず「心配だったから」とかごにょごにょ言うとなのははどこか嬉しそうに微笑んで私の肩に頭を預けるように寄りかかる。


「わっ!な、なのは?///」


冷たい風にほんのり香る甘い匂い。ドギマギしているのがバレやしないかと慌ててなのはに呼びかけるとなのははいつもみたいに微笑んだ。


「ちょっとだけこうしててもいい?」
「う、うん……。」
「ありがとう、フェイトちゃん。」


こんななのはは初めてで、ちょっと戸惑ったけど。でもなのはがこんな風に甘えるなんて少し意外と言うか嬉しかった。心臓の音がなのはにバレないかと内心ヒヤヒヤしているけれと、何だかとても心地よくてこのまま時間が止まっちゃえばいいのに、なんてガラにもなく乙女チックなことを考える。


「どうしたの?なのはってば。」
「んー…ちょっと。」
「無理してない?」
「フェイトちゃんこそ。」


なのはに聞いたのに、今度は逆にそう返ってきた。私の事より今はなのはの事なのに。


「私は平気だよ。それよりなのはが………」
「フェイトちゃん明日の任務少し大変なんでしょう?」
「ぇ?」
「無茶して怪我なんてしないでよね?」


私に預けていた頭を起してビシッと指差すなのはに苦笑して「もちろん」と頷いた。自分に預けられていた重みと温もりがなくなってしまったことにほっとして、ちょっと残念に思いながら。


「ね、フェイトちゃん。」
「なに?」
「明日任務から帰ってきたらちょっとお話しない?」
「…………ぇ。」
「ふぇ?」
「私何か怒られる様な事したっけ?」


ほんの少しビクビクしながらそうなのはの様子を伺うと、なのははちょっとだけ唇を尖らせて「もー」とだけ呟いた。


「私そんなにお説教ばっかりしてないのに。」
「そ、そうかな……?」
「フェイトちゃん、それどういう意味?」
「だってなのは、私がほんの少しでも怪我するとすぐ怒るじゃない。」
「それはフェイトちゃんが無茶するからでしょ?」


あーだこーだと言い合って、それから笑い出す。こういうところを見られるとアリサ達にはイチャつき呼ばわりされるのだけど。


「とにかく、明日帰ってきたらちょっと聞いて欲しい事があるの。」
「うん、…………今はダメなの?」


私が首を捻るとなのはがちょっとだけ赤くなった。なんだか可愛い。


「今はダメなの。」
「うーん、分かった。………多分夜になっちゃうけど大丈夫?」
「うん。」


なのははそう手短に返すと小さく息を吐く。話って何だろう?好きな人の相談か何かだろうか?さっき覚悟したのに、ほんの少し決心が鈍ってきた。私って本当に弱いな……


「今日はありがとね、フェイトちゃん。」


そう言って立ち上がるなのははさっきまでの悩んでいるような表情はしていなくて、何処かすっきりした顔だった。いつも通りの笑顔。


「じゃあ、帰ろうか。本当に風邪引いちゃうよ?」
「うん。」


結局なのはの好きな人の事とか、なのはが言おうとした言葉は分からなかったけれど。なのはがいつも通りの笑顔に戻ってくれたので良しとして、私達は帰路へついたのだった。



明日は任務だ。いくら危険度が高くないからと言って、決して低いわけではない。怪我でもしようものならきっとなのはに怒られちゃうだろうから気を引き締めなければ…。








【続き】










テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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なのフェイ信者ですw
初心者ですが宜しくお願いしますorz
あと、一応リンクフリーです(^^);

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