non title.32

お待たせしました。今日でラストです。一気に3話更新します。

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「ただいま。」


戦場の最中で少し気恥ずかしそうにつぶやいた彼女は、私に視線を向けたままでも決して隙のない風貌でそこに立っていた。……空中なので正しくは漂っていた、なのかな?













『non title.32』














「たっ、ただいまって……フェイトちゃん!どうして帰ってきちゃったの!それよりも危ないから下がって!」


そう言って背を向けてスカリエッティからフェイトちゃんを隠すように、フェイトちゃんを守るように立ちはだかる。どうしてフェイトちゃんがここに居るのか、先に問い詰めたいけれど今はそれどころじゃないから。彼女を狙っているスカリエッティの視界にフェイトちゃんが映る事さえ嫌だった。フェイトちゃんは、私が絶対に守る。──だけど、私の背後に立つフェイトちゃんが小さく微笑んだ気がした。


「…………なのは。」


それは、とても優しい声で。酷く安心できる声音。その声に振り向く前にフェイトちゃんがいつの間にか私のすぐ横に立っていた。危ないって、言ってるのに。


「フェイトちゃんは下がっててっ…!」


その後に続けて「絶対守るから」と付け足す。けどフェイトちゃんは後ろに下がる気が無いみたいでそのまま横に佇んだままで。


「フェイト!あんた危ないって言ってんのが聞こえないの?これは訓練じゃな………」


そう言いかけたアリサちゃんが「訓練じゃないのよ」と、そう言いかけて言葉を途中で止める。私も視線を向けた。その先にあるのはフェイトちゃんが手綱のように握りしめているチェーンバインドの先端で、それがつながっているのはクアットロの体だった。チェーンバインドなんて高度な魔法、いつの間に覚えたの、と言おうとしてフェイトちゃんの視線とかち合う。


優しげな紅い瞳は真っ直ぐに私を見据えていて、その瞬間に戦いの最中なのに時が止まるような錯覚を覚えた。月に反射した、金色の髪が風に靡いていてとても綺麗。


「───2人とも。もう良いんだ。今まで守っててくれて、ありがとう。」
「ふぇいとちゃ………」
「それにこれは私の決着でもある。………2人とも、強くなったんだね。」


それから、静かに。「私のいない2年の間に」と付け足して優しく微笑んだ。


「あんた記憶が……」
「うん。海鳴に居た記憶もあるけれど。………ほんの少し前に賭けに勝ったってところでね。」


そう不敵に、だけど少しだけ申し訳なさそうに笑ったフェイトちゃんは「随分待たせちゃったね」と言う。私はただ、そんなフェイトちゃんを見つめているだけで戦場の真っただ中だっていうのにスカリエッティの存在なんてほとんど忘れかけていた。


「ふぇい、と……ちゃん?」


確かめるように、そう口にした私に。


「そうだよ。───なのは。ずっと…待たせて、ごめん。……なのかな?」


困ったような表情で申し訳なさそうに微笑んだ目の前のフェイトちゃんは、間違いなく2年半前に居なくなってしまったフェイトちゃんだった。そうだと分かった拍子に沢山の想いが沸いて、さっき以上の涙が零れた。


「ッ──ふぇいと、ちゃんっ!!」


気が付いたら私はフェイトちゃんに抱きしめられていた。正確には…抱きついて、応えるようなフェイトちゃんの力強い片腕に抱きしめられていた。


「ちょっ、あんたたち気持ちは分からなくもないけど今は戦闘中だって分かってる?!」


戦闘中だって言うのにぽろぽろ涙する私に飛ぶお咎めの言葉に慌てて涙を拭おうとして、だけど私の背中に回されていたフェイトちゃんの腕がいつの間にか戻されていて、指先で私の涙を拭う。


「たくさん話はあるけれど、先に片づけよう。」


そう優しく微笑んだフェイトちゃんはどこかこの数か月間の彼女の面影を残した、だけど昔のままの不敵な笑みで。私にチェーンバインドを預けると、戦闘態勢へと入った。アリサちゃんと私に、クアットロを捕まえているように頼んで、デバイスのフォームを剣へと変えた。それは久々に見る彼女の戦闘スタイルで何度も憧れた姿。




























バタバタと風がはためく空中で、私は真っ直ぐに敵を見つめていた。諸悪の根源というべきか、私の生みの親の一人でもある彼は悠々と私の前に立ちはだかっていた。それからちらりと地上へ下り立ったなのはとアリサ、それに気絶しているクアットロの方向を見て。


「感動の再開は済んだのかい?」


そう薄っすらと微笑む。戦闘中だというのに構えすらとらない彼に油断しないように構えながらその言葉を無視すると、返事がない事も気にしないように悠々話し始めるスカリエッティ。


「私はね、あの時君が記憶を取り戻す手助けをしようと思ったのだよ。───なのにまさか自分で思い出すとは」


恐れ入ったよ、と緩慢に拍手するスカリエッティ。あの時、というのは恐らく別の記憶を埋められていた時の私が医務室に居た時の事だろう。


「何が狙いだ。」


低く小さくそう剣を向けるとスカリエッティは小さく唇を歪めて腕を組む。


「君の記憶に少し興味がある。」
「───記憶?」
「私はただ自分の知識欲を埋めたいだけなのだよ。……君が持っているはずの、古都アルハザードの王の記憶を。」


その言葉に、小さい頃の記憶が蘇ってきて私は「くだらない」と小さく笑った。


「私はそんなもの何も覚えていない。」


一喝するように吠えて、バルディッシュを振るう。鉤爪のような彼のデバイスに弾かれて、回転を駆けて二撃目と繰り出しながらも、砲撃を展開する。───が、さすがに科学者とはいえ彼も高ランク魔道士、一筋縄ではいかなかった。


「なら、大切な人を失ったなら或いは思い出すのかい?」


ニタリと笑ったスカリエッティに、頭に血が上ったように魔力が跳ね上がる。空中接線から地上戦へと持ち込んんだ。スカリエッティが鉤爪を動かす度に、地面から突き刺すように私へと向かってくる右へ左へと赤い爪を薙ぎ払いながら。


「そんな事、させやしない。」


バルディッシュの刀身を強く、その科学者の顔面へと叩きつける。



─────その刀身がふれる瞬間に。


「やるのは僕じゃない。」


私を嘲笑うかのように、スカリエッティが呟いた。聞くと同時に打ち付けられたスカリエッティが激しく吹き飛び、地面を転がるようにして地面から生える樹の根元に転がったと同時に。







後ろの方で、小さい悲鳴が聞こえた。悲鳴というよりはそれは、絶望を孕む叫び声。




「──────…ッ」





振り向く前にズクン、と胸が震えた。




叫んだ声はアリサの声。アリサが叫んだ名前はなのはの名前だったから。





































テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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なのフェイ信者ですw
初心者ですが宜しくお願いしますorz
あと、一応リンクフリーです(^^);

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