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non title. Last

ここまでありがとうございました。
最終話は凄く長くなりまして1万字超えてます(ノ∀`)w

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「アルカス・クルタス・エイギアス─────…」


知らないはずの魔法を、どうしてかこの時は詠唱できた。ずっとずっと昔から知っていたことのように。














『non title.34』












「ッ!フェイト?!何するつもりなのあんた!」


大量の魔力の放出に後ずさりながら大声を張り上げるアリサ。私はバチバチと魔力が弾けるような感覚の中、静かに詠唱を唱え続けていた。私となのはを囲うように魔方陣を展開した。不思議と心は穏やかで、私はこれから自分が何をするつもりなのかを客観視するような気持ちで見据えていた。


「なのはを、取り返す…。」


それから3人に向かって微笑すると、いの一番にアリサが叫ぶ。


「そんなの無理に決まってるでしょう!バカじゃないの!───…ま、さか」


そんなアリサにさらに微笑すると、皆が表情を戦慄させた。


「思い出したとか、忘れてたとかそういうのじゃないんだけど。」


ゆっくりとなのはの前髪を撫でる。私が今からやろうとしていることは、間違いなく違法魔法にあたる。言わずと知れた禁術。アルハザードの王が使ったとされる、死者蘇生の術。


「どうしてか分かるんだ。」
「無茶よ!だって、それは……その魔法は…」


この魔法を使ったかつての王は、その代償に命を落とした。バチバチと魔法が展開されて、発動が近づいていた。だけど私の決心は揺るがなくて。なによりも、もう二度となのはと離れるつもりは無かったから。


「私は、絶対に帰ってくる。」


真っ直ぐに自分に言い聞かせるように力強く叫んだ。この魔法の先に何があろうと私は絶対にあきらめたりなんてしない。なのはを連れて、今度こそ一緒に。


禁術と呼ばれたその魔法が発動すると同時に、アリサが「帰ってきたら殴る」と言っていた。その言葉を聞くと同時に、私の意識は切断されたかのようにブラックアウトした。




























「…………ッ……」





天国と言う場所が存在するとして。もしそんな場所があるならそれはこういう光景なんだろうかと、ゆっくりと周囲を見渡す。そこは靄がかかったような真っ白な場所だった。何もなく、だけど何も感じないわけではない。



「ずっと見てたよ。フェイト。」


その声に、ビクリと肩を震わせて構えようと身に着けているバルディッシュを探して、無い事に気が付いた。


「バルディッシュは此処には存在しないよ。」
「────誰!?」


声はすれども姿はない。その声は、私と同じ声だった。幻想の世界ならばあり得るのだろうかと、構えながら「誰」と問いかけて。靄がかった前方から女の子が1人、ひょこりと姿を現す。見たところ10歳も年を重ねていないような少女だった。そして、その子の姿は紛れもなく、過去の私。つまり幼少期の私の姿で。


「君は、幻……?」


身構えながら聞くとその子は少しだけ微笑む。


「幻と言えば幻。だけど、少し違うかな。」
「じゃあ、天使?」
「ふ、あははっ可笑しなこと言うね、フェイトは。」
「どうして名前を知っている……?」


訝しくそう聞くと、その少女はちょっとだけ拗ねたような表情をしてから「言ったでしょ」と、いつの間に現れたのか先ほどまでなかったはずの椅子に腰かけた。


「ずっと見てたって、言ったでしょう?フェイト。」
「君は誰なの?」


容姿は明らかに私の幼少期そのものだ。だけど風貌とかそう言ったものが少しだけ違う。子供っぽく見せてはいるけれど、どこか大人びた風貌。怪しさ爆発だ。


「分からないかな…。」


そう言って、その少女は一瞬で姿を変えた。今までの姿は変身後の姿だったようで、靄がかったその場所から出てきたのは、甲冑に身を包んだ私だった。風貌そのものが、さらに大人びて、威厳に満ちたような姿。


「私の名前はアリシア・テスタロッサ。」
「えっ…」
「フェイトのクローン元だよ。」


そう言って、今度は姿とは対照的に子供っぽく微笑む。私のクローンの素体。それは古の王都アルハザードの王だというのか。おとぎ話にも存在する私の素体。クローンとあれば、それは容姿だって一緒のはずだ。


「まさか、アルハザードの………」
「そ。フェイトは案外鈍いんだね。」
「夢では、ないの?」


そんな私の言葉に、アリシアと名乗った王は少しだけ悲しそうに微笑んで。


「夢と言えばそうなってしまう存在だ。君は、私と同じ末路を辿ろうとしてる。」
「…………それは…」
「君も、もとはと言えば私の所為で…私が不甲斐無いばかりに生まれてしまったいわば被害者だ。」


ごめんね、と俯いたアリシアは椅子からゆっくり立ち上がるとゆっくりと歩き始めた。私は、正直なのはの事を探したかったけれどこの場所では何もできない事に気づいてアリシアと一緒に歩き始める。


「君は……」
「アリシア、で良いよ。フェイトと私は姉妹も同然なのだから。」


そう微笑んだアリシアに少し照れくさくなりながら、言葉を続ける。


「……アリシアは、どうしてここに居るの?」


単刀直入に真っ直ぐ視線を向けると、アリシアは少し悲しげに俯いて話を始めた。


「これは、罰だよ。」
「罰……。」
「私がこの禁術を使ったばかりに、沢山の悲しみの連鎖が生まれた。」
「それは………生き返らせたっていう、奥さんの事?」


そう恐る恐る問うと、アリシアが目を見開いてこっちを見ていた。聞くには不躾だったかと、小さく謝罪するが、アリシアはというとどうしてか突然笑い出す。


「あはっ!あはは、違う違う、言い伝えっていうのは凄く適当に伝わるものだね。」
「ぇ?」
「私結婚はしてなかったよ。私が禁術を使ったのは、……母さんだ。」


一通り笑ってから、やはり悲しげな、辛辣な表情で自分の母だと言うアリシアは、遠い昔を思い出すように懐かしそうに話を続けた。


「私が即位したのは今よりもっと若い頃だった。……皆に認めてもらえるように、何より母さんに認めて欲しくて懸命に励んだよ。」


昔話を聞かせるように、或いは自分が懐かしんでいるかのように紡ぐアリシアは何処か楽しげで、そして少しだけ切なげで。


「────そして、私は禁術を使った。その代償に自分選んで。」


やがて事の真相を語るアリシアの瞳は真っ直ぐに私を見据えていて、私と同じ紅い色の瞳は燃えているようだった。そこまで言い切って、アリシアは私に向き直る。


「だから」


ゆっくりと緩慢な動きで、脇差の鞘から艶やかな剣を抜き取る。美しい抜き身。見惚れるような動きで、私へと剣を向けて、アリシアは辛辣な顔で「だから」と眉を寄せる。


「だからね、フェイト。………君に禁術は使わせない。」
「ぇ?」
「もう二度と、誰にもこんな結末は辿らせない。ずっと見てたんだ。母さんが私のクローンを作ろうとしてたのも見守ってた。」


泣きそうな顔で。


「母さんが病んでいくのを、ただ見ているしか出来なかった。」


苦しそうな声で。


「私は、こんなつもりじゃなかった!こんなのを望んだわけじゃない…ただ、母さんに生きていて欲しかったんだ……。」


最後は掠れたように、苦しそうに叫ぶ。悲痛そうなその表情で。


「それから母さんが死んだ後も、ずっと見てきた。………君が生まれて、いつか私と同じように禁術を使うんじゃないかと。」
「ずっと一人で、見ていたの?」
「そうだよ。それが王であり、最初にこんなモノを生んでしまった私の責任だから。」


悲しげに笑ったアリシアは、真っ直ぐと剣を伸ばす。切っ先が私の喉元に付くくらいに。


「だからフェイト。君を阻止する。」


真っ直ぐに私に向き合うアリシアは、とても凛々しく立っていた。揺るがない意志と共に、誰よりも悲しい思いと寂しさを背負って私の前に立っていた。


だけど。


私は、ゆっくりと腕を上げてその剣を握り締める。切っ先を強く握れば握るほど、現実の世界ではないのに、手のひらからは血が滴って、激痛が襲う。


「ごめんね、アリシア………。」


それでも、私の望みがアリシアが背負ったものより大切かなんてそんな事は分からないし分かりたくもない。アリシアが責任感とか後悔の念から孤独にここに存在したことを全部否定するつもりなんてない。だけど。


「それでも私は、なのはを取り返す!」


真っ直ぐに、突き付けられた剣を押し返す。白い地面には赤い滴が滴っていた。アリシアは、驚いたように少しだけ瞳を開いて、それから少しだけ残念そうに顔を俯かせて小さく低く呟く。


「その結果が愛する人を苦しめるだけだって分からないの…?フェイトは。」


その低い声に、全身が総毛立つ。恐ろしいほどの威圧感。さっきまでのアリシアがまとう空気ではなくて、古の王そのもの。


「私には、阻止するだけの義務がある。」


真っ直ぐに剣を振り上げたアリシアの大剣を背後に飛んで避ける。大きさはバルディッシュと変わらない大きさだけど魔法がない分私には明らかに不利だった。それにアリシアの剣さばきはとても見事で、避けるだけが精いっぱい。


「フェイト。どうあっても、私はこの術を使わせるわけにはいかないの。」


右に突き上げる剣を半身を逸らして避けるけれど、微かに剣筋が肩にあたった。痛みを我慢しながらも、転がるようにして距離を取ってバランスを保つ。


「はっ……それ、でも……」


それでも私はなのはを、と。そう言い返す前に次の剣撃。


「ぐッ…ぁ!」


小さく悲鳴を上げたのは私だった。次の剣撃を避けられず、右肩に重く食い込んだ痛みに悶えながら、浅く突き刺さったままの剣を逃がすまいと、掴む。


「お願いだから、諦めなよ…。私はずっとフェイトを見てきた。本当に妹みたいに思ってるんだよ?」


本当に悲しそうにそう言うアリシアに。


「気持ちは嬉しいよ、アリシア。……だけどね…」


剣を引き抜こうとするアリシアに対抗するように、剣を握り締める。アリシアが引き抜こうとすればするほど、手のひらには激痛が走った。だけど指が千切れても良いと、強く剣を握り締める。


「だけど、私は!」


私とアリシアの距離は剣の長さの距離。決死の力を振り絞って、体を捻るようにして右肩を後ろに下げると、刺さったままの剣と共にアリシアがほんの少しバランスを崩すのを見計らって左足で、アリシアの腹に蹴りを強く繰り出した。


「なのはを連れて、私も一緒に帰る!!」


その衝撃に剣を手放して地面に転がったアリシアに、私は掴んだ剣の向きを変えて、血で滑らせながら剣の切っ先を今度はアリシアへと向ける。


「だから、お願い……アリシア。」


私は肩で息をしながら、ゆっくりと起き上がって座り込んだままの、俯いたままのアリシアに剣を突き付ける。顔を上げたアリシアは、小さく「ふふっ」と微笑んだ。それと同時に私の手から剣の感触と、剣が完璧に霧散するかのように消え失せてアリシアの腰元の鞘の中に納まっていた。


「あっ……ずるい…」


私がそう言うと同時にアリシアが笑った。心なしか、少し泣いてるようなそんな笑顔で、さっきまで私に向けられていた威圧感は消え失せていた。


「フェイトは、強いね。」


その『王』は小さく笑うと「その強さが羨ましい」と冗談めかして肩を竦めせて見せる。


「私は、強くない。」
「強さとは。………力ではないよ。」
「うん。でも…私は弱いから。だから彼女が居ないとダメなんだ。」


アリシアの隣に腰かけて、なのはの事を思い描く。


「なのはもきっと私と一緒。……それは依存というのかもしれない。強さとは程遠い、弱さだよ。だから、私の我儘を通させて欲しい。きっと2人で帰って見せるから。」
「………私のコピー、なんかじゃないよフェイトは。」
「ぇ?」
「私はね、遥か昔のあの日…そんな選択肢微塵も考えなかったんだ。母さんさえもどれれば良いと、そう思ってた。だから、結果は悲惨なものになってしまった。」


それはアリシアの所為じゃない、そう言おうと口を開いて制止される。


「この魔法は、この禁術はね?フェイト。」


立ち上がったアリシアはそっと私に手を伸ばす。その手を取って立ち上がると、アリシアは私の前髪をひと撫でした。


「この魔法は死者蘇生なんかではないんだ。」
「………ぇ?」


アリシアが笑顔で教えたのは、私にとっては絶望的な事実。だってこの魔法が死者蘇生でなかったら、私には生きる意味なんてなくなってしまうから。だけど、アリシアは笑顔で私に一歩進みよると両腕を広げて私を抱擁する。お姉ちゃんが居たなら、こんな感じなんだろうか…。そして、アリシアは言葉を続けた。


「この魔法は、使用者の願いを叶える魔法。」


それから両腕を広げて私を解放する。


「願い……?」
「そう。魔法の究極系。おとぎ話でしかありえないような、そんな本当の「魔法」だ。」
「そんなの、聞いた事がない。」
「私はね、過去にこの魔法を使ったときに強く願ったの。」


そう言ってアリシアは残念そうに笑った。


「私が母さんの代わりになるから、母さんを生き返らせて、って。」


ばかだよね、と苦笑しながら。その笑顔がとても痛々しかった。


「そして、その願いは見事に叶ってしまった。」
「そんな………」
「母さんの事ずっとここから見守っていて、何度も悔やんで悔やみきれなくてずっと誰かを………フェイトを待っていたんだ。こんな真似、二度として欲しくなくて。……でも、フェイトは私よりずっとお利口さんだったね。」


ずっと年百年もここで一人で。


「そんなの、悲しすぎるよ……。」


その気持ちを考えただけで、壮絶な孤独を感じた。長い間自分の過ちを何度も何度も悔いて来た彼女に何を言えばいいのか、言葉なんて浮かばなかった。


「でもフェイトが来てくれた。」


そう言って笑うアリシアは、私の前髪をくしゃりと撫でる。


「フェイトが私とは違う結末を選んでくれたから、私は安心して眠れるの。」
「アリシア……」
「それと、この魔法に犠牲と言うものが存在するなら。」


その言葉にピクリと反応する私に、アリシアは「残念だけど」と付け足してから。


「魔力の減少。すっごく魔力使ってると思うから、多分戻ったらフェイトは弱くなってるよ。」


クスクスと笑いながら「王」の風貌もなく、悪戯っぽく笑う。


「良いんだよ、さっき言ったでしょう?強さっていうのは、そういうのじゃないって。私は、なのはが居ればそれだけで強くなれる。」
「……フェイトは良い子に育ったね。」
「そ、そうじゃなくて…。」


いまいちペースを握られっぱなしで調子が狂う。そんな私と対照的に、アリシアはとても楽しそうだった。


「妹がいたらこんな感じだったのかな。」
「アリシア……。」
「さて、フェイトはもうそろそろ帰って?きっとその子ももう目覚めてるよ。」
「ぁ、…アリシアは、どうするの?」


自分の引き裂かれるような気分になって、過ごした時間はほんの数分なのに何故かとても悲しかった。少し泣きそうな声でそう聞くとアリシアは寂しさなんて微塵も感じさせない綺麗な表情で笑う。


「私はようやく母さんのところに行ける。」


フェイトのおかげでね、とウィンクしたアリシア。


「そろそろお別れだよ。寂しいけど。」
「アリシア……言いたい事は、本当にいっぱいあるんだけど…ありがとう。」
「私の存在は、フェイトが願う前のただのブレーキ。間違った願いを叫ばないようにここに存在しただけ。フェイトはちゃんと間違えなかっただけだよ。」


ゆっくりと、体が光の粒のように消えていくアリシアはとても満足そうに言う。


「それでも、ありがとう。アリシア……。」
「それじゃあ、なのはさんによろしくね!幸せになって、フェイト。」
「───うん。」


その返事を聞き届けると共に、アリシアは完全に消えてしまった。実態はあったはずなのに幻だったのかとか、この世界に不思議を感じながらアリシアという存在を胸に刻んだ。私はきっと、アリシアと言う存在を、絶対忘れない。


そのまま、私の意識もゆっくりとホワイトアウトしていく。この魔法はもう二度と使えないし使わない。それでも、いつかなのはには話そう。アリシアと言う立派な姉の存在を。



───早く、なのはに会いたい。




そこで、私の意識は途絶えた。






















「…………ぅ、っ…」


酷い耳鳴りがするような感覚。まだ寝ていたいのに、そうも言っていられないくらい体が痛い。ゆっくり目を開けると、蒼い何かが最初に映った。ついでに頬に何か落ちた感覚。


「…………?」


一度閉じて、もう一度瞳を開く。次はもう少しはっきり映った。目の前にあったのはなのはの瞳。凄く、凄く泣いているみたいで、私の頬にあたったのはなのはの涙だったみたい。


「フェイトちゃんっ!」
「ぅあっ」


状況が良く飲み込めない私は、そのまま抱きつくなのはに押しつぶされながら周囲を見渡した。そこは、どうやら病院とか、或いは局の医務室らしく、あの作戦の日からしばらく時間が経っているみたいだった。なのはの後ろにはアリサやすずか、はやてが居て。


「なのは………無事…?」


思いのほかかすれた声で、ゆっくりと記憶を反芻する。なのはは、確かにあの時命を落としていた。けど今無事でいるということは、この有り余るほどの元気さは、私の願いが叶ったという事で間違いないのか、或いは夢でも見ていたか。


「それはそっくりそのままあんたに返すわ。」


私の胸元でグスグスと泣いているなのはの代わりに、アリサが溜息交じりに言う。どうやらなのはは検査でも異常がなかったらしく、禁術を使ったとされる私の方が2日も寝ていたらしい。術の所為でもう二度と目覚めないのでは、などと憶測が飛び交っていたようだった。魔力の大量放出とかそう言う関係で眠っていただけだと思うのだけど。その後は、とりあえず先生を呼んでくる、といって3人とも出て行ってしまった。多分気を使って2人にしてくれたんだと思うけど。


「………なのは。」


私に覆いかぶさるような形で泣いているなのはの髪を撫でる。なのはは何も言わず縋りついたままだった。


「なのは、顔上げて…?」
「やだ。」
「な、なのは?」


怒っているのか、なのははずっと私の胸元に顔を押し付けたままで。


「怒ってるの?」
「……それも、あるけど。」


それも、ということはそれ以外にもあるのだろうか?とりあえず髪を撫でる。


「私は、もう大丈夫だから。」
「ん。……良かっ、た…」
「なのはに、何かあったら私きっと生きてられないよ。」
「そんなの私も一緒なのに。……あんなに危ない術使うなんて信じられない。」
「ごめん。………ねぇなのは。」
「なに?」


まだ顔を押し付けたままのなのはを少しだけ抱き寄せる。


「あの約束、まだ有効?」


そう言うと、なのはの肩が少しだけピクリと跳ねた。


「2歳も年下になっちゃったんだけど。……約束した年齢からだいぶ経っちゃったんだけど。」


そう言って布団を握り締めているなのはの左手の薬指にバインドを施す。それはあるものを模したもので。


「まだ帰ってきたばかりで、色々大変だと思うんだけどさ。……それから魔力も凄く脆弱になっちゃったんだけど。」


誤魔化すようにごにょごにょ言うと、なのはが驚いたように顔を上げた。ずっと泣いていたのか目が腫れていて、その所為で顔を上げたがらなかったのかなって苦笑して。


「結婚、しませんか?」


2年半も待たせて泣かせてばっかりの私なんだけど、と付け足す。


「そ、それって………///」
「っていっても私もう魔力ほとんど脆弱でなのはの事格好よく守ってあげられるか分からないんだけど……。」


自分の中の魔力がだいぶ減ったのが分かる。こんなものを代償に、願いを叶えたと言えば私のこの気持ちは欲張りでしかないのだけど。それでも私はなのはの前では恰好付けたかったんだ。


「フェイトちゃんって、本当バカ。」
「ぇっ……」
「ねぇ、フェイトちゃん。一つだけ約束して欲しいんだけど。」
「な、なに?」
「もう二度と、私の前からいなくならないで。」


泣き腫らした顔で、少しだけ悲しそうに微笑んだなのはに。胸が痛む。ずっとずっと泣かせていたんだろう、きっと。


「約束する。……ついでに、なのはをもう二度と泣かせない。」


そう笑うと、なのはもはにかんだように微笑む。久々の再会、という感覚はいつの間にかなくなっていて、ようやく戻ってきたとも言える自分。海鳴での記憶もあるから少し変な感じだけど、それでもなのはへの気持ちはどっちも本物だった。嬉しそうに微笑むなのはは私の横になっているベッドの端に腰かけたまま、ゆっくりと腰を折る。


「な、のは……?」


そのまま重なったなのはの唇に、ただ瞳を閉じて食むように返す。深く交わることはなく離れたなのはは、私がゆっくりと目を開けるとやっぱり少しだけ泣きそうな顔で笑った。


「おかえり。」


それから、少しだけ大人っぽく微笑む。


「………ただいま。」


あの時に口にした「ただいま」を改めて、口にするとなのはは「待ってたよ」と泣きそうな顔で笑ったのだった。





本当は、あの時禁術を使ったときに、私はアリシアと同じことをしようとしてた。私がなのはの代わりになると、そう叫ぼうとしていた。だけど「一緒に帰る」と叫んだのは。直前にアリサにそう言ったこともあるけれど。本当は、たくさん見たからだ。なのはの涙を。2年半前私がしたことでなのはがたくさん泣いた。なのはの為という大義名分を振りかざして苦しめた。その経緯があったから気付いたんだ。


誰かの為に自分を犠牲にするのは強さでも何でもなかった。ただのエゴで、或いは傲慢。なのはの弱さを知っていたから、自分の弱さを知っていたから私はこの結末を選べた。だから、私は再びなのはとこうしていられるんだ。


「ありがとう……アリシア。」


誰に言うでもなく、自分の中に存在するアリシアに、小さく呟く。
私は私らしく、だけどアリシアのように立派に生きていくよ、と胸の中で呟いた。




「……………アリシアって、誰?」
「ぇ?」


だけど小さい声でもこの部屋は静かで。しっかりなのはには聞こえていたらしくなのははやや不機嫌そうに私を見ていた。


「人が折角、心配してるのに……プロポーズしておいて…」


ブツブツ言うなのはの手には何故かレイジングハートが杖上に変化していて。というかなのはってこんなキャラだったっけ…?


「ちが……!な、なのは?」
「今まで私がどんな気持ちで………」
「まずは私の話を……聞い──…っ」
「ばかぁ!」


レイジングハートを振り下ろすなのはと、咄嗟にシールドを展開する私。


「ぅあ痛っ!!!」


だけど私の脆弱なシールドはたかが杖にあっけなく粉砕された。私よりも殴った本人のなのはが驚いてるくらい。


「ふぇぇぇ?」
「…………私、…弱……っ」


私の涙の理由は激痛と、プライドの崩壊と、あと色々だ。


「ご、ごめんね!フェイトちゃん!大丈夫??」
「…私、弱…っ…」
「わ、私が特訓してあげるから!」
「いや、遠慮する。」
「ふぇぇ?酷ーい!!」


特訓と言う言葉に、咄嗟に蘇ったのはなのはに訓練されたつい最近の方の記憶。
こうして私は、魔力大半を失ったけれどそれ以上に大切なものを取り戻した。多少の問題はまだまだあるけれど、膨大な魔力もなにもいらないから良いんだ。少し寂しいけど。


「私には、なのはが居れば良いよ。」


特訓の申し出を断られて何故か子供っぽくむくれているなのはに、私はそう微笑んだのだった。












それと、一つだけやらなくちゃいけない事が出来た気がする。


いつか。本当にいつかだけど、アリシアの事を誰かに伝えたいなと思った。伝承としてでも何でも良い。アリシアという一人の王の孤独の中でのあの強さを。



自分を弱いと笑った、本当は強い彼女の数百年に渡る、名前もない物語を。




















The end.










ここまで長いことお付き合いくださいまして、本当にありがとうございました。
今後、暫くは長編よりは中編を何本かやりつつ原稿とかやりたいと思います(^ω^≡^ω^)!
長編は最後まで書きあがっているものを毎日更新できるように書き溜めてから始めようかなw
出来ればこのくらいの更新ペースを維持していきたいですねw

nonの後書き(言い訳)とかは、明日にでもちまちまw裏設定というか色々あるのでw


皆さん、本当にありがとうございました!そして、ご苦労様でした!今後ともどうぞよろしくお願いします。






テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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なのフェイ信者ですw
初心者ですが宜しくお願いしますorz
あと、一応リンクフリーです(^^);

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