doubt 01

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「なのはちゃん、本気なん…?」


コツコツと、暗い廊下を歩きながら。
私はその言葉に一度だけ頷いた。


「だって、もうこんな方法しかないもん。」
「だけど…相手は犯罪者やよ?」


同僚のはやてちゃんが心配そうに言うその言葉にも小さく頷きながら、それでも方法がないと決意を新たに前を向く。

私の名前は高町なのは。知能犯罪に携わる知能犯専門チームについている捜査官。今追っている犯罪者を追いつめることに苦戦していて、その犯人を追いつめるために、私は一つの望みに賭けていた。小脇に抱えた書類データをもう一度確認するように見る。


───フェイト・T・H。


その書類に記載されていたのはそんな名前だった。顔写真だけは無いけれど。その書類は、犯罪者の名を連ねる名簿。そこに記された、第一級の指名手配犯であるフェイト・T・Hと言う人物に、私は最後の望みを賭けていた。
この名簿にあるこの人物こそ、私の追っている犯罪者、ジェイル・スカリエッティの情報を持っている人物だったから。あわよくば、情報の提示を求めようと思って。


「犯罪者でも、悪魔でも、私はどうしてもスカリエッティを捕まえたいの。」


どんな手を使ってでも。何者の手を借りてでも。薄暗い監獄の通路を歩きながら、幾つものロックを解除しながら進み、私は番号のついている監獄の通路を進んで歩く。隣にははやてちゃんや看守も居るし、私はそれなりに武術も習っているから怖いものなしに進んでいた。奥の扉を入ったところでさらに奥の「面会室」という扉を目にして、フェイト・T・Hと顔を合わせるべく、私は深く息を吸って、制服の襟元を直しながらその扉を開く。


「……貴女が、フェイト・T・Hさん?」


そこに居たのは、目の前の檻の中、用意された椅子に座っていたのは1人の女性。囚人服に身を包んで、くしゃくしゃの不衛生な金髪の奥、長い前髪の隙間から覗く紅い瞳が見えた。不愛想にただじっとこちらを見つめるその人物は、しばらく私を見つめた後で、まるで興味を失ったように視線を下へと戻す。問いかけた私の言葉に返事はしなかった。


「…初めまして。私の名前は高町なのは。捜査官です。今日は貴女に聞きたい事があって来たの。」


そこまで言っても目の前の人物はまるで興味なんてないようにぼんやりと私の足元を見ていて。私は構わず話を進めた。相手は第一級指名手配犯罪者。犯した罪の数は数えきれないほどで、犯罪履歴を追うだけで、その人物がどれだけ切れ者なのか良く分かった。天才詐欺師。それも、芸術的な手際で。犯罪に素晴らしいなんて賛辞必要ないけれど、でもどの手際も素晴らしかった。悔しいくらいに。

彼女が出頭という形をとらなければ、きっと今も彼女を捕まえる事なんて出来なかっただろう。

だから、目を付けた。


檻の向こうでじっと一点を見つめているそんな彼女に、出来るだけ興味を引くような言葉を投げかける。


「外へ、出たくない?」


けれど、そんな私の言葉に。その人物は一瞬だけ瞳を向けて、また興味が無くなったように下を向く。その瞳は、何の感情も抱いていないような色だった。


「じゃあ質問を変えるけど。ジェイル・スカリエッティって名前に心当たりは?」


質問を変えて、単刀直入にその名を出すと一瞬だけピクリと肩が反応した。けど、やっぱり興味がないように直ぐに下を向いてしまった。この人は少し精神に異常があるんじゃないかと疑うくらいぼんやり虚ろに下を向いている。とてもデータにあるような人物とは思えなかった。


「貴女にこんなことを頼むのはどうかと思うんだけど、…捜査に協力してほしいの。」


少しだけ苛立って、ぶっきらぼうな声で言うけれどやっぱり彼女は興味なんてないようで、視線すらこちらに向ける気もないみたいだった。


「褒賞として、貴女には自由を。」


もちろんその自由は制限つきではあるけれど。彼女の犯罪歴を追う限り、彼女の起こす事件に悪意は感じない。悪意のない犯罪なんてそうは無いけれど、彼女の事をいうなら、犯罪者と言うよりは「義賊」と言う方が近かったから。その点、ジェイル・スカリエッティは、最も凶悪で、人の尊厳も何もない、命を奪う化学兵器さえ用いるような犯罪者。彼を捕まえる為の犠牲と思えば、彼女の釈放だって上は納得するほど、彼は悪質だった。


「………興味ない。」


だけど、返って来たのは抑揚のない少しだけアルトの響きを持った声。初めて聞いた彼女の声だった。その返事に、少しの絶望を覚える。


「ど、どうして?」
「別に。……強いて言うなら。外の世界には私の欲しいものはないから、かな?」


不敵に笑う唇が見えた。初めて彼女の感情を感じて、小さく唇を噛む。どんな犯罪者も「外」に出たがるはずで。だけど彼女は言葉の通り、「自由」という言葉に、全くもって反応を示しはしなかったから。


「…もう話は終わり?」
「待って!」


そう言って、ゆっくりと立ち上がるその人物に。咄嗟に、私は立ち上がり檻に縋りつくように、彼女を制止した。これではどっちが掴まっている方か分かったものじゃない。


「────なに?」
「望みはなに?この捜査に協力してくれるなら、それなりの報酬は用意するからっ」


もちろんそんなの、上は黙認しない。だから、これは私の出来る範囲の話。犯罪者に助けを乞うなんてみっともないけれど、それでも私はどうしても彼を捕まえたかった。

そんな私に。


「どうしてジェイルを捕まえたいの?親の仇か何か?」


相変わらず抑揚のない声で。だけどどうしてか、少しだけ優しいと感じるような声で小さく言葉にした。「どうしてか?」と問われても理由なんてない。ただ私は彼が許せない。それだけ。


「理由なんて。…犯罪者を捕まえたいって、そう思う事に理由がないといけないの?」


真っ直ぐに彼女を睨みつけるように見据える私に、ほんの少し「驚き」という感情を宿した紅い瞳。相変わらずぼさぼさの金髪の奥で、そんな紅い色が見えた。


「へぇ…」


それから、面白い物を見るような、そんな声で。


「それなりの報酬って。」


その言葉に、目を見開く。彼女の関心を引けるなら、私にとってこれ以上の事はない。彼女の頭脳と情報があれば、ジェイル・スカリエッティ逮捕へのかなりの近道になる。だけど。


「たとえば、君とか?」
「────え?」


だけど、容易く答えられる言葉を投げてきたわけではなく。彼女は、わざとそんな質問をした。私を試すように。相変わらず嘲笑的な笑みで、こっちを見るその紅い瞳に、私は今度は違った感情で唇を噛む。自分の体を報酬になんて馬鹿げている。


「どうするの?」


答えを急かす、静かに笑みを含んだ声。そんな話馬鹿げてる。だけど、何の罪もない人たちがあんなくだらない科学者の為に何人も死んでしまう事の方が、もっと馬鹿げてる。

奥歯を噛みしめて息を飲むと、私は震える腕を抑えて小さく返した。


「────わかっ、た…。」


私が、そうすることで彼が掴まるなら。


「けど、それはジェイル・スカリエッティを逮捕出来たとき。貴女が捜査に協力を惜しまず、彼を逮捕できたとき。」


真っ直ぐ彼女を睨みつけると、やはり少しだけ驚いた瞳をして、それから小さく不快そうな表情を浮かべて。


「良いよ。約束しよう。ジェイルを捕まえるまで私は逃げも隠れもしない。けど奴を捕まえたとき、その報酬として。私は君を────…」


クス、と笑って。伸びきった金髪を掻き上げる。


「抱くから。」


それから、静かに。低い声を木霊させた。自分でも馬鹿な事をしたって思ってる。けど。それで彼が捕まえられるなら。


「…勝ち誇った笑みは、逮捕できた後にして。」


外に出る準備のため看守に連れて行かれて部屋を出て行った彼女に。私は小さく低く、呟いた。


第一級犯罪者、天才詐欺師と謳われたフェイト・T・H。彼女には始終監視が付いて、逃げられたとき用にGPSまでも埋め込まれることになる。本当に私の判断は間違っていなかったのか。それは分からないけれど。

私は、持っていた書類データを、手の中でくしゃりと丸め込んだ。

こうして、犯罪者である彼女を助手として迎え入れる捜査を本格的に始めることに。今後の捜査に期待と不安を抱いて。私は小さく溜息を吐いて、制服の襟元を少しだけ強く握ったのだった。


























テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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なのフェイ信者ですw
初心者ですが宜しくお願いしますorz
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