doubt 02

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腕の時計に記された時間に、私はほんの少し苛立った溜息を吐いた。私が今立っている場所はとある隔離施設。数多くの犯罪者を収容する監獄だった。

捜査官である私は、とある犯罪者逮捕への望みを賭けて収容中の犯罪者の1人に仮の釈放措置を取った。一筋縄ではいかない知能犯罪者。フェイト・T・H相手に、ある取引を条件に。そうして、その釈放準備中のその人を待っている私をどこか気遣わしげに見る同僚のはやてちゃんにちょっとだけ苦笑して。


「はやてちゃん、呼び出し…大丈夫なの?」


呼ばれてたでしょう?と腕の時計を見ながら問いかける。もともと彼女は私の事を心配して自分の空き時間内に私に付き添ってくれた。確かこの後は自分の仕事があるはずだよね?と首を傾げるとちょっとだけ溜息を吐いて口を開く。


「本当に1人で大丈夫なん?」
「平気だってば。見た感じ根暗そうな人だったし、武道とかそういった事をやってる情報もないし。私だってそんなには弱くないもん。」
「せやけど…。」
「はやてちゃんが今のとりかかってるそっちの仕事…終わって手伝ってくれたら助かるよ。」


ちょっとだけ微笑してそう言うと「しゃーないな」と一言。


「まー、なのはちゃんなら大丈夫やろうけど、皆心配してるし程々にな?」
「はーい。」
「いざとなったら親友の私にも頼るんよ?」
「はいはい。行ってらっしゃい。」


苦笑してそう追い出すように手を振るとちょっとだけ仏頂面をしたはやてちゃん。そんな背中を見送って、私はもう一度時計を見る。先ほどの面会から既に1時間は経過している。監視機器をつけるにしたって時間が掛かりすぎている。油断した看守を伸して逃げたんだろうか、とも一瞬考えたけど一度見た感じだとそんな手荒な真似はしなそうに思えて首を振る。あの手の人間の武力っていうのは最終手段な気がする。彼女はそれをするならもっと簡単に知恵を働かせて脱出するだろう。


「一応、見に行った方が良いかな…」


万一に備えて腰元のホルダーに手を添えていつでも抜銃出来るような体勢を維持しながら施設の外に立っていた私は入り口に一歩足を踏み入れた。


「あっと……」
「きゃっ」


と同時に、誰かにぶつかった。思ったほどの衝撃はないけれど構えていた分心拍への影響が少し大きくて、軽く悲鳴じみた声を上げてしまって。ちらりと視線を向けるとぶつかった相手は女性だったと分かった。長い金髪。


「お待たせ。」


ぶつかったその人物は、ぶつかった相手が私だと気付くととたんに不敵な笑みを浮かべて口の端を上げる。聞き覚えのある声。それから瞳。数瞬遅れて、私はようやくその人物がフェイト・T・Hだと気が付いた。そんな私の反応にまたしても笑みを浮かべて。


「もしかして気付かなかったの?」


その後クスクスと笑みを零す。一瞬では分からなかった。だって、監獄の中で見たときは。


「…あの中だと、私の容姿は目立つからね。」


思わず歩を引いた私を追いつめるような動きで、私が考えていたことを察したように微笑む。入り口の境に立っていたはずなのにいつの間にかほんの少しだけ歩を引いたせいで壁に背を当てる状態になっていて。私より高い身長の所為もあるけれど、何よりもフェイト・T・Hは圧巻の存在感だった。

くしゃくしゃの不衛生な髪は嘘のように太陽の光に反射して眩しいほどに輝いていて。無愛想に床を見つめて精神に異常を想像するような彼女はそこには居なかった。ただ眉目秀麗という言葉が似合うそんな人物。なるほど、と納得した。普段の生活からが偽りで、確かに目立つその容姿を自然に隠していた事を理解して。


「………さすが詐欺師だね。」
「お褒め頂き光栄ですよ。高町なのは捜査官?」


壁に背を付けたまま。臆したら負けだと判断した追いつめるように立つ私は両腕を組んで睨みあげる。立ち位置の所為で逆行を浴びる彼女は何処か楽しそうに私を見つめていてゆっくり伸ばした手の人差し指でつい、と顎を掬うように触れる。


「気安く触らないで。」
「ふふ、そんな風に睨むものじゃないよ。一応私は君の協力者なんだから。」


「触らないで」と一蹴する私に何処か嬉しそうに微笑んだその人はゆっくりと身を離して肩を竦めて見せた。それから満足したように微笑んで。


「良かった。」
「……何が?」
「私の容姿に惑わされるような人間じゃなくて安心したよ。それから一歩も引かないところも。君は少しは賢いみたいだね。」
「馬鹿にしないで。……そんな無駄話するほど暇じゃないから、とりあえず車に乗ってくれる?」


人を小馬鹿にしたような態度に苛立ちを募らせながら、私は車に向けて目線で促す。飄々とした風貌に油断ならない相手なのだと今さらながらに理解した。監獄で見た彼女とはまた少し違う。何の感情も抱いていないような振りをしながら、きっと頭の中で様々な計算を織り成していたんだとも思う。


「ところで。」


一挙一動を見落とせないような油断の出来ない人物。そんな印象を抱かせた彼女は車の助手席で偉そうに足を組んで、少しだけ不機嫌を装って口を開いた。返事をしない私を気にも留めずそのまま話を続ける。聞いていても居なくても関係ない話なのか私が返事をしなくても聞いていると分かった上で話しているのかは分からないけど。


「この首輪。何とかならないの?」


ダサいと思うんだけど。と一言付け加えて自分の首を指差した。彼女の首には首輪というには細い、黒いチョーカーが装着されている。そのほかにもピアスや腕の装飾具にも同様の仕掛け、つまりGPS等が搭載されていて。動脈の動きから脈拍も分かる仕組みになっていてこれかは外すことが出来ないようになっていて。


「お似合いだと思うけど?」


私は視線も向けずハンドルを握ったままでそう返した。脈拍が分かる仕組みは、その人物の生死が遠隔でも知れるようになっている。この場合彼女は私からほとんど離れることは出来ないけれど、他の捜査協力に当たっては重宝されていて。……主に突入とかさせる時だけれど。


「後で偉い人にセンスないですって伝えておいてくれる?」


そんなシステムについてぼんやり考えていた私に、冗談交じりに投げかけられた言葉。そんな言葉を無視して、私はアクセルを踏み込んだ。


「それにしても自分を犠牲にしても捕まえたい犯罪者が居るっていうのも、考え物だと思うけど?」
「………そう?」


暫くの時間を置いて。反応を見て楽しもうとしてるのか、不意に持ち出された話。私は小さく短く返す。


「もっと自分を大切にしたら?」
「………そうだとしても、貴女には関係ない事だと思うけど?」
「それもそうだね。」


何がしたいのか全く分からない。私の返しに満足そうに微笑して、フェイト・T・Hはそう返した。横目でそんな様子を見ながら、私はとある敷地内で車を停める。


「着いたよ。降りて。」
「はいはい、仰せの通りに。」


到着を告げると同時に緩慢な動きでシートベルトを外すフェイト・T・H。そんな彼女は、私がドアに手を掛ける瞬間を見計らって「そういえば」と何か思い出したように零す。


「なに?」
「報酬の事、ちゃんと忘れないでね。」


それから聞き返した私に整った綺麗な顔で微笑を浮かべて、私の目を真っ直ぐ見てそう言ったのだった。


『──その報酬として。私は君を抱くから。』


忘れてなんて。馬鹿げた報酬に、気付かれない程度に唇を噛んで。


「良いよ。貴女が彼を捕まえる為の協力を惜しまなかったらね。」


そう低く、宣戦布告するように返した。それで馬鹿げた犯罪者が逮捕できるなら。苦しんだり泣いたりする人が減るのなら。誰かを助ける事が出来るなら。そう唇を噛んで返したその言葉。直ぐに背中を向けてしまったから彼女の反応を見ることは出来なかったけれど。何か言われたような気がして視線を向ける。けど、彼女は既に車を降りようとしていて、背中しか見ることが出来なかった。






そうしてやって来たのは捜査局。今後の捜査についての話し合いをする為に。まずは彼女の意見等を聞く必要がある。多少性格面に目を瞑るとして、彼女の持っている知識、情報は本当に使えるのかも見極める必要がある。


「ここが捜査局。貴女も知ってるでしょ?」
「それなりにね。」
「…捜査局へようこそ。」


そう歓迎の意を表さない声音でそう告げて、私は進みだしたのだった。

































テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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なのフェイ信者ですw
初心者ですが宜しくお願いしますorz
あと、一応リンクフリーです(^^);

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