doubt 03

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「へぇ、思ったより広いね。」


捜査局にやって来て。彼女用のゲストパスを発行して捜査局へと入所した。広い通路を歩いてさまざまな局員にすれ違う度に、好機の視線が彼女に向けられる中、特に気にした様子もなく局内を観察するように見る彼女。


「貴女の居た監獄よりは広いと思うけど?」
「………ふぅん、つれないね。」


まるで観察するように局内を隅々まで見るように見上げる彼女に対して言った言葉。その言葉に反応するように紅い瞳をこちらに向けて微笑を浮かべてそんな風に言うその彼女。そんな彼女に、どうしてか苛立ちが募った。


「勘違いしないで。貴女は単に事件解決への協力者なだけ。」
「そうだよ。私は重要な協力者だ。貴重な情報源。……だから。」


そう言って、数歩距離を縮めて。頬に触れた手。思いのほか冷たくてピクリと体が跳ねた。


「だから、もうちょっと大切に扱ってくれても良いんじゃない?私は自分の利用価値をよく理解しているよ。」


そう言って真っ直ぐ私を見るその紅い瞳に、思わず体が反応して。通路に乾いた音が響いた。びりびりと痺れるように痛む右手のひら。次いで、目の前でぶたれた方向に顔を向けて動かない彼女。白い頬にほんの少し赤く浮かび上がった痕。


「………痛い。」
「言ったでしょ。気安く…触らないで。」


内心とは裏腹に落ち着いた声でそう小さく言葉を投げて。そのまま私の後ろをついてくるように促して歩き出す。叩いた衝撃でびりびり痺れる右手を握って、大きく息を吐いて。

本当は少しだけ怖かった。

迫られたことがじゃなく、触れられたことがでもなく。見つめられたことが。あの紅い瞳が、怖かった。惹き込まれそうな燃えるような紅色の瞳が。

だけど、その後は特に何をするでもなく言うでもなく私の後を黙ってついてくる彼女を、知能犯専門チームの捜査室へと招待した。ジェイル・スカリエッティを追うための捜査室であり私の仕事場へと。


「知能犯専門チーム、ねぇ。」


捜査室の部屋に掛けられた看板をやや嘲笑気味に読み上げる彼女。そんな彼女を無視して扉を開ける。今朝出たばかりの状態のそこは、事件に関する情報の類で溢れかえっていた。捜査チームの仲間の飲みかけのコーヒーだとか、ホワイトボードに書き殴られた文字だとか。


「ここが捜査室。主にジェイル・スカリエッティの捜査のための部屋で、私たちは彼を追う専門チーム。」
「……誰も居ないけど君1人で?」
「生憎、今は皆出払ってるだけ。」
「ふぅん。」


辺りに散らかる書物を拾い上げて勝手に椅子に腰かけると重役宜しく偉そうに足を組む。監獄を出る際に用意したパンツスーツがピシッと皺もなく伸ばされ、誰もきっとこの人が犯罪者だなんて思わないだろうそんな姿で。


「それで?具体的に私に何をして欲しいの?」
「え?」


おおよそ偉そうな態度で、堂々とした物言い。まるで「願いを叶えてあげよう」という王様のように足を組み、椅子の肘掛に肘を置き、両手の指を絡める。監獄に居たときのあの虚ろな瞳ではなく、かというと私をからかう時のようなふざけた瞳ではなく。燃えるような沸々とした瞳だった。まるでこれから始まるゲームを楽しもうとしているような、そんな。



そんな彼女を目の前にして。丁度その瞬間に部屋の扉がガチャ、と音を立てて開いた。丁度帰って来たチームメンバーに少しだけほっとして。


「ただいま。」
「ただいまー…全く、目撃情報も何もあったもんじゃ……誰よ、あんた。」


捜査室へやって来た、私の捜査チームメンバーの2人。本当は同僚のはやてちゃんもこのチームに所属するはずだったけど今は別の事件解決に追われている。


「あ、アリサちゃんにすずかちゃんお帰り。」
「ただいま、なのはちゃん。もしかしてこの人が……?」


コートを脱ぎながら視線を向けるアリサちゃんと、愛想良く微笑むすずかちゃんに。


「うん。今回のジェイル・スカリエッティ逮捕に協力してもらう、フェイト・T・Hさん。」


紹介しながら視線を向けると相変わらず偉そうに座ったまま「どうも」と微笑む彼女。そんな彼女に、私は小さく溜息を吐く。まるでこれじゃあ喧嘩を売ってるとしか───…


「犯罪者の協力なんていらないんじゃないの?」
「ぁ、アリサちゃん……!」


案の定。アリサちゃんの憎々しげな視線が彼女に向けられた。慌てて抑えるように促すすずかちゃんの様子を見て、小さく息を吐く彼女は相変わらず両手の指を組んだまま。


「なら早くジェイルを捕まえなよ。」
「貴女も煽らないで!」


そんな風に言葉を漏らす。一発触発とでもいうような空気。もともと犯罪者が大嫌いな、正義感が強いアリサちゃんとまさに人を小馬鹿にする態度の犯罪者である彼女。どう考えても馬が合うはずなんてないのは分かってたんだけど……


「アリサちゃんも少しだけ抑えて…捜査の為だと思って。……ね?」
「………。」




結局私とすずかちゃんが2人を宥めるようにして捜査の話を進めることになったのだった。


「やっぱり複数人の犯行でジェイル・スカリエッティには数人の手下が居るんだと思うのよ。」
「……そうだね。今までにジェイル・スカリエッティの姿を見た人なんていないし…」
「あんた、何か知ってるんじゃないの?」


そう言ってアリサちゃんが睨むような視線を向けた先。彼女はやる気があるのかないのか、私たちの話を聞いていないような素振りで手元にある資料をパラパラと捲っていた。


「…………そうだねぇ、ジェイルの側には常に1人クアットロって女が付いてるよ。彼女は助手であり側近。その他は捨て駒のようなものだと思うけど。」


それから。資料を捲りながら視線も向けずそんな事を言ってのけた。私たちも知り得ない情報と、その人物の名前。一瞬だけ驚いて固まる私たちに気が付いたのか。


「そんな事も知らなかったんだ?」


と嘲笑するような微笑を向ける。事もなげにまるで「教科書に載ってるような常識」とでも言うように。それから足を組みかえて。


「ジェイルは基本的には人前に出ない。薄暗くて冷たい場所が好きな陰険なやつだからね。」


そう言ってにっこりと微笑んだ。


「じゃあフェイトちゃんは何処に居るのかまで知ってるの?」
「……ちゃん?」
「こう呼ばれるのは嫌い?」


ちゃん付けで呼んだのはすずかちゃん。警戒心もさながら、だけど微笑を浮かべてそんな風に言うすずかちゃんに。


「いや、新鮮かな。嬉しいよ。」


作り笑顔とも取れるような笑顔を浮かべて改めて「よろしくね」と返した。表面化で探り合うような2人という感じの印象。


「それで?どうなの?知ってるの?」
「残念ながら居場所までは知らないね。ジェイルは居場所を転々としてるから。」


アリサちゃんの刺々しい質問に肩を竦めて見せる彼女は何処か楽しそうにそう言って。今度は組んでいた指を解いて、肘掛に頬杖をついて胡散臭く微笑む。


「あのさ。ジェイルを捕まえたいんなら、先に最近世間を賑わせてる爆弾魔とやらをを捕まえた方が良いよ。」
「へ?それってはやてちゃんが担当してる事件の事…?」


私がそう聞くと、やはり彼女はどこか胡散臭そうに微笑む。そんな言葉にアリサちゃんが立ち上がって。


「あんたの話を信じるわけじゃないけど、ちょっとはやてのところに行ってくるわ。」
「えっ、今から?ちょ…ちょっとまってアリサちゃん!なのはちゃん、1人で大丈夫?」


それから部屋を出て行ってしまったアリサちゃんに慌ててついていくように立ち上がるすずかちゃん。「大丈夫?」と問われた言葉に頷いて。


「うん、アリサちゃんの事お願い。」


ひとまずアリサちゃんの事をお願いした。アリサちゃんは多少せっかちな所があって一人で突っ走ってしまう事があるから。

そうして2人が部屋を出てしまって、部屋には少しだけ静寂が訪れた。立っている私の目線の下、資料をパラパラと捲る彼女、フェイト・T・Hは真面目に読んでいるのか適当に紙をペラペラと捲っていて。


「真面目に読んでるの?」


何となくそう口にしてしまった。───けど、彼女は事もなげに「もちろん」とだけ返す。


「ページを捲ってれば内容なんて目に焼き付くよ。」


それからそんな風に答えた。冗談を言うでもなく馬鹿にするでもなく至って当たり前のように。そういえば彼女の資料に乗っていた。彼女の知能の高さ。故に天才と呼ばれた訳を。

だから、何となく。うっかり零した。


「……そんなに頭が良いのに、どうして詐欺師なんかになったの?」


ちょっとした好奇心と興味。口にするつもりなんてなかった疑問がうっかり口をついて出た。そんな私の質問に、読んでいた資料をパサリと閉じて顔をゆっくりと私の方に向ける彼女。顔を向けた際に、耳に装着されたGPS機能付きのピアスが反射してチカっと光る。


「別に、気になっただけだから答えなくても……」


良いけど、と。むしろ聞かなくて良い事だし、とまでは言えなかったけれどそう言い訳するように呟いてその視線から逃れるように慌てて窓際に逃げた。何となくこの人の瞳が怖くて背を向けて窓の外を見るように。


「ふぅん?」


だけど。彼女は相変わらず私を壁際に追いつめるのが好きらしい、窓際に立った私が悪いのか、またしても私を壁際に追い詰めるようにして微笑を浮かべた。


「退いて。」


ピシャリと言い捨てるようにしてもどかない彼女は、相変わらず冷たい手で私の髪に触れて、そのまま喉元に触れた。そのまま喉から鎖骨へ。どうしてか振り払う事が出来ずに手を握って。


「……今すぐその手を退けて。」


それからなるべく声が震えてるのがばれないように、低く呻る。その冷たい手が不思議と気持ち悪くは感じなくて、だけど何故か怖かった。何が怖いのかは分からないけれど。だけど、その手は鎖骨の少し手前で止まった。何かを見つけたように、それまでは私をからかって楽しんでいるような瞳が少しだけ止まる。


「これ、怪我?」
「…………。」


鎖骨の少し上に薄らと残る傷の痕。それの事を言ってるのかと小さく息を吐いて。ようやく金縛りが解けたかのように緊張が解けてその手を払いのけた。彼女はそうされたことに少しの驚きも表さず、だけどじっと私の傷を見ていた。


「……前の事件でちょっと。子供を助けた時に…。」


だから、何となくそうとだけ答える。このくらいの怪我で済んで良かったと少し前の事を振り返りながら。あの時は散々怒られたっけ、なんて思い出して。


「ふぅん。」


そんな私の言葉に興味なさそうに「ふぅん」と返す彼女は。窓際に私を追いつめていた体を退けて、興味が無くなったようにそのまま背を向けると、部屋に付属している給水所で勝手にインスタントコーヒーを淹れだしたのだった。


「ところで今後の私の生活の場ってどこなの?」


何処かいいホテルでも用意してくれてるの?と微笑する彼女に。私は眉間を抑えて小さく息を吐き出して、それから低く呟いた。


「私のマンションのゲストルームで我慢して。」


一切の監視役という事で私が引き受けた事。他の皆にはそれはもう大反対されたけど。もとはといえば考案したのも私なら、私には彼女を最後まで監視する義務がある。

そう言った私に。彼女はまた興味もなさそうに「ふぅん」とだけ返したのだった。































テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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なのフェイ信者ですw
初心者ですが宜しくお願いしますorz
あと、一応リンクフリーです(^^);

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