doubt 04

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「ねぇ。」
「なに?」
「局の中、少し見学してきても?」
「………だめ。」


自分で淹れたインスタントコーヒーを飲みながら。まるで自分の家のように図々しくくつろいでいるその詐欺師は、満面の笑みを浮かべて私にそう問いかけた。


「逃げないよ?」
「もちろん逃がさないし、もちろん逃げられないけど駄目。」
「………良いね、その「逃がさない」って。そそられる。」


飄々とした物言いの彼女はクスッと笑みを浮かべて深々と座っていた椅子から立ち上がる。どうせ逃げられはしないのだけど、彼女はどこか「不可能」を「可能」に変換してしまう気がしてほんの少し不安が沸いた。冗談を言うように笑みを浮かべて。それから「どうせ私の場所は分かるんでしょう?」と指摘した後、暇つぶしとでも言うように捜査室を出ていってしまった。


かくいう私も特に追うつもりなんてなくて。信じているとかそう言うわけではないけれど、逃げられるはずなんてないと、椅子に腰を下ろしたまま深く息を吐いた。


「………はぁ。」


重い溜息を吐いて制服の上着のポケットに入れた機器を取り出して、それから小さなモニターを覗く。規則正しく動く線の波。それから、ここの敷地内を示す地図に示された印。

彼女の位置と心音を表すその機械に、なんというか感慨深いような、それからほんの少しの後ろめたさを感じて、ぼんやりとその画面を見つめていると。


「───…ったく、盲点だったわ。」


そんな言葉と共に今度は同僚のチームであるアリサちゃんとすずかちゃんが部屋へと戻って来た。


「あ、おかえり……2人とも。」
「ん?あいつは?」
「フェイトちゃんなら、さっき通路で女の人と話してたけど。」


部屋の中をひと通り見渡してから、ほんの少し眉間にしわを寄せてそんな風に言うアリサちゃんの後ろでしれっと「通りがかりに見たじゃない」と微笑むすずかちゃん。

まぁ、何となく予想していたことではあるけれど。


「ったく……呑気ね。っつかあいつに自由はないって教えてあげる必要があるんじゃないかしら。」


憤慨したアリサちゃんは腕を組んで、それから椅子に腰かけると机に置きっぱなしのコーヒーマグに口を付けた。ちょっとした苛立ちを抑えるみたいに。だけど。


「……アリサちゃん。」
「何よ?何か新しい情報あった?」
「そうじゃないけど……。」


言いよどむ私に不思議そうに首を捻る2人。ほんの少し言いにくい言葉を、私はちょっとだけ申し訳なく思いながら口にしたのだった。


「それアリサちゃんのじゃなくて、彼女の飲み残し……。」
「…………そう。教えてくれてありがと。」


それから小さく静かに言った言葉に、アリサちゃんは静かにマグカップを机に戻して。


「それで、はやてに確認してきたんだけど。」


何事もなかったかのように、腕を組んだままチラリと視線ですずかちゃんに促して。アリサちゃんはそのまますずかちゃんが出した資料を指差した。


「さっきも言ったけど、盲点だった。」
「……というと?」


悔しそうに眉間を指で抑えるアリサちゃんに首を捻る。資料はどれもはやてちゃんが追っている爆弾魔のもので、被害場所や、犯人に関する情報ばかり。


「あいつの言う通りね。」
「……あのね、なのはちゃん。この爆弾魔の犯行なんだけど。」


と指差した資料は被害場所のリスト。写真つきや、そうでない物も多数。廃工場や、廃ビル、それから一変してバスの停留所など。一見、一定のルールの場所を爆破しているようでそうでもない。ただ人気のあまりない目立たない場所を目的としているような気もしなくはない。

だけど何か違和感があるような。


「多分、この犯人はスカリエッティとグルね。」


それからそんな言葉を零したのはアリサちゃんで。視線だけ向けると少しだけ悔しそうに眉間にしわを寄せていた。それからもう一度資料に視線を向ける。一定の期間を置いての爆破。


「どういう……事…?」
「だから、そう言う事だよ。」


そう、小さく声にした私に。求めた方向とは違う場所から答えが返ってきた。振り向いた先にはほんの少しだけ嬉しそうに微笑を浮かべた彼女、フェイト・T・Hが居て。

つかつかと足を進めて私たちの目の前に立つ。口には何故か棒が付いたキャンディーを加えていて、満足そうに資料を指差す。


「こいつはね、ジェイルの痕跡とかを消す役目。」


ちゅ、と音を立てて口からキャンディーを取り出してそう偉そうに微笑んで。それから「あぁ、これ?」と自らの手にある棒付きキャンディーを顎で指す。


「可愛い子に貰ったんだよ。」


からかうように微笑して机の上に行儀悪く腰かける。挑発するような笑みで、だけど悠然と。


「なにか情報、知ってるんでしょ?」


それから。その挑発的な微笑を睨みつけるように見据えてそう問う。その微笑からは相変わらず思考が読めなくて、ほんの少し悔しく思って見えないように手を強く握った。


「ふぅん……。まぁ、何でも知ってるわけじゃないけど。」
「勿体ぶらないで言いなさいよ。」


苛立ち気味に机を叩くアリサちゃんに相変わらず笑みを浮かべたまま、彼女は「そうだなー」なんて軽く空を仰ぐ。

そんな2人を横目に見つつ、目の前に広がった資料を見る私はほんの少し奥歯を強く噛みしめた。どうしてもっと早く気付かなかったのか。もっと早く気付いていたら、犠牲者を減らせたかもしれない。泣いてる子を助けてあげられたかもしれない。

キリのない後悔の念と言いようのない悔しさが沸々と沸いた。

自分の持てる力で救える人が沢山いるのにどうして助けようとしないのかという疑問。結局は彼女も犯罪者なのだという、改まった認識が脳裏を反響して息を吐く。彼女は第一級犯罪者だ。彼女の生い立ちやそう言った情報は皆無だったけれどこれだけは確定している事実。


「………どうして貴女達は……。」
「なに?」


どうしてこんなことをして心が痛まないのか。説いたところで何も始まらない。道徳という概念が通じるなら、この人は犯罪者になんてなってない。ほんの少しでも「義賊」の様なものと思った自分が悔しく思って「何でもない」と小さく漏らす。


「ジェイルに近づくにはこの人を先に捕えた方が良いって言うのは間違いないの?」
「間違いないよ。……まぁ、こいつを捕まえた所で次の手下が出てくるんだろうけど。」


それから「だけど」と零す。


「だけど最近こいつはジェイルのやり方に少し反してる。」
「それってどういう事?」


次いで質問を越えにしたアリサちゃんに。


「ジェイルのやり方と少し反した自分のやり方を折り入れて来てるって、言うのかな?ジェイルの美学に反する感じだからね。早く捕えないと情報を吐かせる前に死んじゃうかもよ?」


あっさりとそう言いのけて、微笑を浮かべたまま棒付きキャンディーをガリッと噛み砕いた。何を考えているのか読めない深い紅。その紅い瞳は何の感情も無いようなそんな色で、顔は笑っているのに目だけは監獄で見たままだった。


「まぁ、ひとまず私も外のツテを当たって調べてあげるよ。」
「はぁ?」
「私は交友関係が広いからね。裏も表も。」


そんな彼女に「やけに協力的ね」と訝しむアリサちゃんにまた微笑を浮かべて。


「折角外に出られたんだから、この位するさ。」


そう言ったその言葉は演技だと直ぐに分かった。あの時監獄で「興味ない。」と言った彼女の言葉はどうしてか真実だと思えたから。

────強いて言うなら。外の世界には私の欲しいものはないから、かな?


不敵に微笑した彼女は、ただ楽しんでるだけだ。


「ところでもう結構な時間になるけどまだここに居るの?……私そろそろ休みたいんだけど?」


それからそう言ってまたしても微笑を浮かべる彼女。そんな彼女はキャンディーのついていないただの棒をゴミ箱に放ると、立ち上がる。


「そうだね…。今日はとりあえず帰ろうか。あ、この資料借りて行っても良い?」
「あんたは帰ってまで仕事する気満々じゃない。」
「なのはちゃん、無理はしちゃダメだよ?」


自分に掛けられる心配の声に苦笑して「詳しく読んでないから持って帰って読むだけだよ」と言い訳じみた返事をして。


「じゃあ、とりあえずまた明日。」


私はその天才詐欺師を連れたまま、捜査室を出る。「何かあったらすぐに連絡しなさいよ」という同僚のメールに苦笑を浮かべて「心配しないで」と返して。


「犯罪者を自分の部屋に連れて行くなんて本気?」


嘲笑するような彼女に苛立ちを募らせると同時に深く息を吐く。


「妙な事したら撃つから。」


と一言だけ返す。その後に、「約束は守るよ」と小馬鹿にしたような、私を試すように投げかけられた言葉だけが木霊した。











テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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なのフェイ信者ですw
初心者ですが宜しくお願いしますorz
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