doubt 06

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「それで?何か良い案でもあるわけ?」


彼女からの新しい情報を得て翌日、私たちは情報のあった祝賀会に来ると予想される爆弾魔の仲間か、或いはその情報を持つ人物を捕らえる為の作戦を立てていた。捕らえられなくとも、せめて情報を入手するために。

なぜか少しだけ怒り気味にトン、と机の書類を指で叩いたアリサちゃんはほんの少し眉を寄せて問いかける。問いかけた相手は私たちの協力者でもある元第一級犯罪者フェイト・T・H。


「祝賀会は今夜よ。つーか知ってたならもっと早く言いなさいよ!そもそも協力する気あるわけ!?」
「まぁまぁ、アリサちゃん。」


宥めるように隣で苦笑を浮かべるすずかちゃんを無視してまだ言葉を続けようとするアリサちゃんに、相変わらず微笑を浮かべたままの彼女はまるでそう言われることを分かっていたかのように小さく息を吐いてから。


「ごめんね。」


と微笑む。少しだけ人を小馬鹿にするような態度で飄々と謝罪の言葉を呟いてから、アリサちゃんが問うた「良い案」に対して何か考えがあるのか緩慢な動きで椅子の背もたれに身を預けてそれから足を組むと、胸の前で指を組んだ。


「良い案と言うか、方法は一つしかないんじゃないかな?」


偉そうな口ぶりと微笑みで、彼女は「潜り込むしかないでしょ」と言う。何処か胡散臭い笑顔を浮かべたまま「それ以外にある?」と私に視線を向ける彼女。確かに彼女の言う通り、それが一番手っ取り早いとも思う。けど。


「それ、ちょっと危険なんじゃないかな…?」
「捜査官が危険を怖がってどうするの?」


ちょっと不安げな顔でそう言うすずかちゃんに嘲りの笑みを向けた彼女は相変わらず喧嘩を売るような態度。すずかちゃんにそんな態度をとったことが勘に障ったのか、当然そこで怒り出すのはアリサちゃんで。アリサちゃんが立ち上がって何か言う前に、私が椅子から立ち上がる。


「………なによ、なのは。」
「中に侵入する役は私がやる。」


危険なら尚の事。他の皆にやらせるなんて出来ない。


「なのは!あんたはそうやっていっつも自分から危険な事買って出て……大体、その情報が確かかも分からないのよ?」
「それでも確かめる価値はあるでしょう?それに、こんなチャンス、二度はないもん。───祝賀会にもぐりこんでその人を確保するか何かしらの情報を得る。」


祝賀会は今夜。会場は広いホテル。事を大きくするわけにはいかないから、ほぼ隠密行動にも近い。相手がどんな人物かも分からない上に失敗した時のリスクも大きい。だけどこの機会を逃したらどうなるか分からない。


「相手の顔とか、分かる?」


それから情報源であり唯一情報を持っているであろう彼女に顔を向ける。どことなくいつもと同じような微笑を浮かべる彼女は人差し指を真っ直ぐ伸ばして右目の下に小さく線を引いた。


「こんな傷がある若い男だよ。」
「そう。」
「本気で潜入する気?」
「貴女が言ったんでしょ。それに、こういう仕事には慣れてるから大丈夫。」
「へぇ。じゃあ聞くけど、男が一番情報を漏らしやすい状況って何だか知ってる?」
「え?」
「…女もまた然り。」


椅子からゆっくり身を起こして少しだけ瞳の色を深くして、息を吐いた。


「情報を吐かせるのに手っ取り早いのは色仕掛けだ。分かる?ベッドに誘い込むって事。」


彼女はそう言って、クスッと笑う。祝賀会と言うパーティー会場で気が緩んだ相手を誘いかけてホテルの個室に連れ込む。それが確かに一番手っ取り早い。でもリスクがかなり高い。


「色仕掛け……。」
「なのはちゃん、別の方法もあると思うから無理は…」
「そうよ、何もこんな奴の提案聞く事ないわ。」
「うぅん、大丈夫。チャンスを無駄にしたくないし。」


心配しながら声を掛けてくれる2人に微笑を浮かべてそうやんわりと言うと、私は今夜の祝賀会へ潜入する手配を整えるために2人に指示をして、祝賀会場であるホテルの見取り図を睨みこんだのだった。
































「……厳重な警備ね。」


それから、夜になって私達は会場であるホテルの裏に捜査用の小型のトラックを停めて、周囲を伺う。入り口には警備の人間が数人。私の手には偽造された招待状。これは言わずとも彼女が作成したもの。短時間であっという間に作ったものだから正直不安だけど。


「手筈は良い?なのは。」
「うん……私がターゲットを見つけたらどうにかして個室に連れ込む。それまでに皆が裏口からの通路を確保して、……来てくれるんだよね…?」
「やばくなったら逃げなさいよ。あんたの体の方が大事なんだから。」
「う、うん……。」


着なれないパーティードレスを着ている所為か少し息苦しくて重い息を吐く私。小型のマイクとイヤホンを仕込んで緊張に手元の招待状をぎゅ、と掴む。


「それじゃあ、行ってくる……。」


そうして深呼吸をした後、不安げな瞳で見守る面々にちょっとだけ苦笑を浮かべて、私は車を降りると頭の中で計画を何度も反芻しながらホテルのゲートまで進んだ。偽造の招待状は容易く警備の目を欺き、私は何の苦も無くスムーズにホテルのロビーへと入り込めてしまった。

こうして考えると彼女は本物なのだと、改めて思った。限られた時間であっという間に人を騙す。天才さながらあの堂々とした風格であらゆる人を騙してきたのだと容易に想像できた。

会場には見知った著名人が何人か紛れていて、人の数が多い。私はボーイからグラスを貰ってなるべく入り口が良く見える場所の壁際に立つ。数人の知らない人に話しかけられたけどどれも無視をした。


『なのは、無事に入り込めた?』
「うん。今のところ問題なしだよ。そっちは?」
『あー…』


それから耳に付けた小型のイヤホンとマイクでアリサちゃん達と連絡を取る。私の問いに何処か歯切れの悪い返事をしたアリサちゃんに首を捻りつつ、そのアリサちゃんの返事の原因を直ぐに見つけた。


『もう一匹そっちに紛れ込んだわ。』
「………うん。今来たみたい。」


入口に視線を向けたまま、ひとまず通信を切る。ホテルの入り口からやって来たのは、黒いパーティードレスに身を包んだ彼女、フェイト・T・Hだった。背中と胸元が開いていて太腿に大胆なスリットが入ったドレス。近くを通る人が振り向く容貌。一体いつの間に用意していたのか。


「…何で此処に居るの?」
「君に色仕掛けなんて無理でしょ。さっき車の中で震えてたし。」
「震えてなんか……!」


ボーイからグラスを貰ってのこのこと歩いてきた彼女は相変わらず人を馬鹿にするような笑みを浮かべて「震えてたでしょ」と言う。それから彼女は会場のホテル内を視線で一回り見渡して、それから何か考えているような仕草をで少しだけ顎に手を添えて、視線をとある場所で止めた。


「………見つけた。」


その視線の先に私も目を向けると、スーツに身を包んだ1人の男性が入口付近に立っていて。目印である傷が、右目の下にあった。年齢はまだ若そうな、そんな相手。


「じゃ、君は此処で入り口を張ってて。」
「へ?」
「どうせ色仕掛けなんて出来ないんでしょう?」


それから開いたグラスを私に持たせながらクスッと笑う。それは何処か不敵で、人々を魅了するには十分な笑み。自分もその中の1人になりそうになって慌てて首を振った。


「でも危険だって──…」
「私は元、詐欺師だ。人を騙しこむなんて簡単だよ。誰が相手でも。」
「でも協力者である貴女にそんな事……」
「それに、君が言ったら私の報酬が遠退きそうだ。芝居が猛烈に下手そうだし。」


にっこり微笑を浮かべて微笑んで私が首に巻いているドレスストールに手を掛けてそう言う彼女は私の耳元へと唇を寄せて首に触れて。


「手っ取り早く解決して、約束を果たして貰うから。」


それから耳に届くか届かないかのそんな声でそう言うと、昨日痕を付けられたその場所を指でひと撫でして微笑する。その瞬間に背中がゾクリと粟立って、私はその手を払い退けた。


約束。


『その報酬として。私は君を抱くから』


その条件に頷いたのは私だ。そんな事をしてもなお、私はジェイル・スカリエッティを捕まえたい。目の前のこの元天才詐欺師を利用してでも。


「………分かった。どうせ貴女は芸術的な手際で容易くあの人を騙すんでしょ。」


私はここでそれを待つから、と皮肉交じりに続ける言葉に何故か不快感を表したのは彼女だった。ほんの一瞬の表情。さも当たり前のように微笑を浮かべるかと思った私の予想に反する反応で、私は彼女の返事を待つ。


「人を騙すことに、芸術的も何もないよ。まぁ、私が天才である事に代わりは無いけどね。」


それからすぐにまた笑みを浮かべて、彼女は身を翻すとヒールの音を鳴らしてターゲットである男性の元へと移動する。彼女に言われた言葉はとても予想外の言葉で、何ともいえない心境で、私はそんな背中を見送った。


私は怪しまれないように視線を張り巡らせながら、アリサちゃん達が裏口からの通路を確保するのを待つ。待つ間は何処か落ち着かなくて何度も視線を彼女の元へと向けては祝賀会に赴いている面々の顔を確認する。有名な人ばかり来ているのは当たり前だけど、それにしても私がここに居ることがとても場違いに感じるのは否めない。


『なのは、そっち大丈夫?』
「うん。っていうか彼女が私の代わりに行っちゃった…。」
『はぁ?……逃げたりしないでしょうね?』
「まさか。」


マイク越しに響くアリサちゃんの言葉に慌てて首を捻って視線を向ける。視線の先にはなんというかターゲットである男性と談笑を嗜む彼女の姿。見たこと無いような笑みで談笑している彼女はそのままその男性に肩を抱かれてエレベーターへと乗り込んで行った。


「アリサちゃん…今、2人がエレベーターに……」
『作戦通り、ってわけね。一応あいつにもマイク持たせてるから大丈夫だとは思うけど……』


作戦通り。それはもちろん分かってるけれど、心配な面がある。いくら彼女が第一級犯罪者だとしても、彼女は女性。力では敵わないんじゃないかって、そんな心配。


「突入のタイミングとかは、彼女から合図くれるのかな…?」
『一応作戦内容知ってるし、そのはずだけど…』


逃げられる心配もあるけど、そっちの心配の方もある。まだ彼女がエレベーターに乗り込んでから数分しか経ってない。なのに、とても長く感じる数分。何の合図もない現状。


「────…聞こえる?」


それから十分経って、痺れを切らした私は彼女に向かってマイクで呼びかけた。

けど、全く応答なんてなくて。



『なのは!あいつ、マイク断線したわ!!!』
「えっ!?」


それから突然耳に飛び込んできたのはアリサちゃんの声。

応答がないのは断線したせいなのか、断線したのは逃げる為なのか。彼女の居場所が分かるGPSを開いて調べると彼女の居場所はまだこのホテルでだと記されていて。


「ごめん、私先に突入するね!」
『ちょっ、……なのは!!!』


マイク越しのアリサちゃんの制止を無視して、私はエレベーターに乗り込んだ。
































テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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なのフェイ信者ですw
初心者ですが宜しくお願いしますorz
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