doubt 07

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アリサちゃんの止める言葉も聞かず、私はエレベーターに乗り込んでボタンを押す。彼女達が乗ったエレベーターが上がていくのを遠目に見ていたから何階に言ったのかは分かる。あの時エレベーターは4階で止まったからきっと4階にいるはず。

エレベーターが4階に到着すると同時に私は通路へと飛び出す。

別に彼女が逃げるとか、そういうのは疑ってない。だって彼女はとてもプライドが高そうだから。「仕事」という事に関して、彼女は詐欺師でありながら少なくともプライドを持っているように見えたから。そして、同時に負けず嫌いだとも。

だから、連絡が取れなくなったこと一握の不安を抱えて走る。彼女は犯罪者だけど、こんなことに巻き込んだのは私の所為。それからGPSを見ながら、部屋の位置を探る。というかほとんどが空き部屋だったから見当は直ぐについた。

見当を付けたその部屋の前。もちろん鍵はかかってるし、あまり公にも出来ないのでフロントでスペアキーを借りる事も出来なかった。間違ってたら謝れば良い。迷ってる暇なんてない。

一呼吸置いて。助走をつけて。私は全力で効き足を振り上げて、勢いよくドアを蹴破った。





「………ッ」


それから無事を確認しようと部屋の中を見渡して。声を失った。というか驚きにこっちを見る1人の視線と目が合う。その紅い瞳は、驚きにしばし呆然としてそれからいつも通りに少しだけ細められた。


「レディならノックを忘れないようにね?」
「れ、連絡がつかないから何かあったのかと思って……。」


見ると、一糸も乱れぬ姿の彼女は悠々と腕を組んで立っていて。その目の前のベッドには先ほどの男が転がっていた。そんな私の言葉にまた驚きの色を露わにして、それから。


「あぁ、マイク壊れちゃったんだった。………一応私の心配もしてくれるんだ?」


それから飄々とした物言いでそう微笑した。


「心配して損した。……アリサちゃん、聞こえる?」


私はそんな彼女に溜息交じりに悪態を吐いて。それからマイク先のアリサちゃんに向かって呼びかける。相変わらず何を考えてるか分からない彼女は微笑を浮かべたままただ私を見ていて。その視線から何となく逃げるように背を向ける。


『聞こえてるわよ!てゆーか人の制止も聞かずにあんたは……』
「あ、ぁーごめんっ…それより、一応彼女は無事でターゲットも捕えてるんだけど、そっちの準備は大丈夫?」
『あー、とりあえず運ぶのに男手が必要でしょうからパシリ呼んでおいたわ。』
「パシリ……?」
『とりあえずそのうち行くと思うから部屋で待機してなさい。』
「あ、了解。」


そんな感じで通信を切る。相変わらずずっと見てたのか、彼女はただ微笑を浮かべていてそれから窓際に腰かけて口を開いた。


「頑張った私にご褒美はないのかな?」


クスクス笑いながら。椅子に腰かけて足を組んでそんな風に言う彼女。さっきまでの心配は本当に無駄だったな、と呆れた溜息を吐いた私は「あのねぇ」と少し疲れた声で返した。


「あのねぇ、勝手に来たのは貴女でしょう? 大体、どうして急に……。」


危険を買って出たのか、なんて聞こうとして何となく口を閉じた。ありえないような事を想像したから。まさか私の事を心配して代わりに行ってくれたなんて事、ないだろうし。だけど私の言葉の続きを待つでもなく彼女は何かに気が付いたように「ねぇ」と呼びかける。


「な、なに?」
「その貴女、っていうのやめない?」
「ふぇ?」
「そういう呼び方、私好きじゃないんだよね。」


それから立ち上がって私との距離を縮める彼女に、少しだけ身構えて。それからベッドの上で転がるターゲットの様子を確認しながら、歩を一歩後ろへと下げた。


「どうせならすずかみたく呼んでよ。」
「は?」


ちゃっかりすずかちゃんを呼び捨てにしてにっこり微笑む彼女は私をからかって楽しんでいるようにしか見えない。何を考えてるのか本当に分からなくて少しだけ恐怖を感じる。それはなんていうか彼女が怖い、というわけじゃなくて。

私は彼女が何を考えてるのかさっぱり分からないのに、彼女には私の考えが見透かされてしまいそうな気がする、そんな怖さ。


「すずかちゃんみたく……って……」


ふと思い返す。すずかちゃんは彼女を何て呼んでただろう?


「フェイトちゃん、って。」


そんな私の問いに、楽しげに。相変わらず徐々に距離を詰めながら。にじり寄るような彼女と一定の距離を保ちつつ、私はもう一度溜息を吐いた。

どうしても、私はこの人が嫌い、ではないけれど怖い。気を許したら気持ちを持っていかれるようなそんな怖さがある。彼女には人を惹きつける魅力が間違いなくあるから。まだ会って2日なのにそれだけは分かる。それは既に惹かれてるって事なんだろうけど、私はそんなの認めたくはなくて、だから距離を置く。


「……気が向いたらね。」


それからぴしゃりとそう言ってのけると満足したように彼女は距離を詰めるのをやめて、ベッドに転がるその男の首元のネクタイを引っ張って奪うと男の両手をそのネクタイで結び始めた。それはもう手慣れた手つきで。

そうだ。彼女は犯罪者で、詐欺師だったんだ。今さらながらその事実をもう一度確認した。先日彼女に「どうして詐欺師に?」という質問をしたことがあったけれど、この目でその事実の片鱗を改めて認識して、もう一つ別の疑問が沸いた。

彼女はどうして出頭なんてしたのか。昨日、監獄で彼女が言った言葉を思い出す。



「─── 強いて言うなら。外の世界には私の欲しいものはないから、かな?」


そう言った彼女はどうして出頭なんてしたんだろう。私は彼女の事を何も知らない。

まだ会って2日。彼女の事を何も知らないのは当然だ。ましてやある程度の情報しか持っていない。詳しく調べようとしてもほとんどの情報がなかった。


「ねぇ」


だから。出頭の理由なんてきっと聞いても答えないのだろうけど私は口を開きかけて。そこで丁度部屋の扉がノックされた。そういえば蹴破ったまま半開きになっていたことを思い出して。恐る恐る部屋の中に静かにやって来た男性に視線を向けた。


「な、なのは? 居る?」
「ユーノ君!?」


扉を開けてやって来たのは、同僚でもあるユーノ君だった。彼は同僚ではあるけれど基本的には情報分析などの専門家なので、事件だとか捜査には来ないのに。


「なんでこんな所に!?」
「…………アリサに呼ばれてて…それで、これ。」


さっきアリサちゃんが言っていた「パシリ」と言う言葉を思い出して苦笑を漏らす。アリサちゃんが言ってたのってユーノ君の事だったんだ、と納得して、それからベッドの上で伸びているターゲットを運んでもらう事に。


「えっと、なのは……この子は?」
「ふぇっ、あ、えっと…捜査に協力して貰ってるフェイト・T・Hさん。」
「そっか、僕はユーノ。一応なのはの同僚であり友達だ。宜しくね。」


そう言って差し出されたユーノ君の手に黙って手を伸ばした彼女は。いつも通りの微笑を浮かべて「よろしく」とだけ返した。

突然のユーノ君の来訪、というには少し違うけれどもこの作戦への参加に驚いているのか急に大人しく黙り込んで私とユーノ君のやり取りを静かに見守る彼女。


「ユーノ君、忙しいんじゃないの?」
「もちろん忙しいよ……第一、男手って言ったって僕どっちかっていうと頭脳労働系だから、男1人運ぶなんて……。」
「私が右半分持つよ。」
「あ、ありがとう…えっと、フェイト。」


情けなく自分の事を「頭脳労働者」と言うユーノ君の反対側でターゲットの体を半分持つ彼女は。ユーノ君の言葉に「どういたしまして。」と微笑して、そのままターゲットである男の半身を持ち運ぶのを手伝ってくれた。


その後待機していたアリサちゃんに急に会場に入ったことを叱られて、どこか不機嫌な彼女には極力関わらないように車に乗り込んだ。


「ユーノ君、お仕事忙しい?」
「うん、まぁ…ある程度大人しくはなって来てるけど…どうして?」
「あの…個人的に調べて欲しい事があるんだけど。」


そう小声で言って、ちらりと彼女の方に視線を向ける。彼女は相変わらず、彼女にしては珍しく不機嫌そうに窓の外を眺めていた。いつも微笑んではいるけれど彼女もやっぱり人間で機嫌の良し悪しがあるのかと少しだけ安心して。


「実は────…」


それから。彼女の素性の、出来たらもう少し詳しい詳細を調べて貰えるように頼み込んだのだった。それと同時に彼女が過去に関わった事件をもう一度。


そんな私に窓を通して。鏡越しに向けられていた彼女の視線には気付かなかった。

































「じゃあそう言う事で良いかな?」


ホテルの部屋に連れてきたその男に、私は小さく問い返した。与えられたマイクを引きちぎって壊したので彼女たちが向かってくる時間を計ると時間はそんなにない。


「はい。フェイトお嬢様。ドクターの指示通りに。」
「ひとまず計画通り。凄いね。ここまで計算通りとは…。」


恐れ入るよ、と微笑する私に彼は最後の確認と言うように繰り返す。


「私は貴女方捜査官に掴まり、時間を掛けながら知りうる情報を与えます。───無論、貴女の事は漏らしません。」
「是非そうしてくれると助かるよ。折角築いた信頼関係が崩壊する。」
「では、時間がありませんのでお願いします。」
「はいはい。じゃあ、頑張ってね。」


そう言って彼の首に手刀を打ち込む。と、その男は重力の通りにベッドに倒れこんだ。そんな男を見下ろして、私は息を吐く。

思えば最初から全て彼の計算通りだった。そもそもの私が出頭するところから全てにおいて彼の計算通り。何もかもが。



『──── 望みはなに?この捜査に協力してくれるなら、それなりの報酬は用意するから』


あの監獄で。そう言って私に縋った彼女が少しだけ哀れだとも思う。踊らされているとも知らずに。


「ジェイルの計画通り………ね。」


転がるその男に視線を向けたまま。それから私は微笑を浮かべて。


「今のところ “私の” 計画通りでも、あるんだよね。」


誰に言うでもなく、私はその転がっている男に聞かせるように囁いた。それから部屋の扉を蹴破って、高町なのはが突入してくるのは直ぐ後の事。




























テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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まとめ【doubht 07】

奈々さん紅白出場おめでとう+。:.゚ヽ(*´ω`)ノ゚.:。+゚ひとまずおくばせながら長編行かせて頂きます☆一応明

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初心者ですが宜しくお願いしますorz
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