doubt 08

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祝賀会から数日。ホテルで捕えた重要参考人は中々口を割らなくて捜査は思ったようには進まず難航していた。その参考人の事はアリサちゃんに任せたまま、私と協力者である彼女は捜査室で資料を読み耽っていた。まぁ、彼女に関して言うなら相変わらず何を考えているか分からなかったけど。


「───ねぇ。」
「なに?」
「ジェイル・スカリエッティについて、何処まで知ってるの?」


そう言えば詳しく聞いていなかったなと、思い出して。

あの日監獄で何にも反応しなかった彼女が一瞬だけ見せた「ジェイル・スカリエッティ」という言葉への反応を思い出して、だから聞いてみたのだけど。少しだけ微笑を浮かべた彼女はふざけたように肩を竦ませて答えた。


「何処までって、スリーサイズとか?」
「……真面目に答えて。」


ふざけた回答に聞いて損した、と文句を言って、もう一度資料に目を向けた私に、仕方ないなと息を吐いてから静かに口を開く。


「彼は頭が良くて潔癖だ。何でも計画通りが好き。」


ジェイル・スカリエッティについての事。どうやら面識があるようだった。


「会ったことがあるの?」
「…………昔ね。」


そう言うと黙り込んで資料を眺め始める。祝賀会から数日が立つけれど、あれ以来特にセクハラとかはしてこなくて、少しだけ真面目になったようなそんな気がしていた。


「私の顔に何かついてる?」
「ふぇ?」
「……さっきからずっと私の事見てる気がするんだけど。」
「んなっ、違……っ、ただ、ジェイル・スカリエッティと、何処で会ったのかなって…。」


どうやら私の視線に気づいていたらしく憎たらしい笑みを浮かべる彼女にそう返すと、彼女は何かを思い出すような少しだけ憂うような表情を浮かべた後。


「…忘れちゃった。」


そう静かに微笑した。結局その後は何も聞かず、私は資料に視線を向けたのだった。ほんの少し感じた違和感。「忘れた」と言う言葉が嘘にしか思えなかったのに、それ以上問い詰めることが出来なかった。


「ねぇ。」
「ふぇ?………なに?」


そうこうして、再び書類に視線を向けた私に。今度呼びかけたのは彼女で。ちなみに彼女は視線を書類に向けたまま話しかけてきた。私の事なんて特に気にも留めないような感じで。


「どうして捜査官なんかになったの?」


それから聞かれたのは予想外の質問。そう言えばここ数日一緒に過ごしてはいるけど、事件の話か「報酬」の話意外に何か聞かれるのって初めてかもしれない。ましてやこんな風に個人的な事は。


「………親が、捜査官だったから…かな。」


私の親は優秀な捜査官だった。今は引退して喫茶店なんて営んでるけど。その影響が一番大きいかな、なんて少し苦笑を浮かべて話した私に。


「親の跡を継ごうと?」
「え?いや、そう言うわけじゃないけど。憧れたっていうか。」
「ふぅん。」


真っ直ぐ投げかけられる質問に少しだけ口ごもりながら返すと、彼女は興味のなさそうな返事をして椅子を立った。聞いてくる割にどうでも良さそうな返事を返されると応えている身としては少しどうかと思いながら資料にそのまま視線を戻す。彼女の事だからどうせ暇つぶしに私にあれこれ質問をしているのだろうと、小さく息を吐きながら。


「もういっこ聞いても良い?」
「なに?」
「   」


手元の資料を見ながら。彼女が口を開きかけた時、部屋の扉が開いた。


「……なのは居るかな?」
「ユーノ君…!」


やって来たのはユーノ君で、小脇にいくつかのファイルをもっていた。それからユーノ君は私に目配せして「少し良い?」と小さく紡いで、私は「行きなよ」と言う彼女を部屋に待たせたまま部屋の外へと赴いたのだった。


「どうしたの?ユーノ君。」
「この間調べてって頼まれた事、調べてみたんだけど──…」


彼女の素性と、過去に起こした事件の詳細。頼んだのはつい先日のことで、思ったより早く調べてくれた事に驚きながら手元のファイルを受け取る。


「なのは、ごめんよ。」
「え?」
「その、調べてはみたんだけど………」


手元の資料を見る。───と、彼女の素性、主に血縁者などの情報は皆無だったらしかった。


「彼女に関する情報は本当に全然なくて。過去の事件の事も調べては見たんだけど……」


大よそ数十件の詐欺容疑。それも相手はほとんど政治家や、そういった類の人。それも叩けば埃が出てきそうな黒に近い色の政治家だ。ちらほらと彼女は義賊のような詐欺師だと言われていた件を改めて認識した。

ともあれ彼女と関わった感じの印象だととてもそんなの想像できないけれど。


「これ、事件の資料?」
「うん。でも…期待するような内容は何一つ記載されてなかったよ。」


最もなのはが何を知りたいのか分からないけど、と肩を竦めるユーノ君。


「ありがとう。忙しいのにごめんね。」
「いいよ。今はそれしかないけれどまた何か見つかったら連絡するから。」
「うん、お願い。」


そう言ってユーノ君は別件の用事があるからとその場を後にして。私は少しだけその通路に立ったまま資料に目を通した。特に人を殺すわけでも傷付けるわけでもない。

彼女が一番最後に起こした事件は市の議員が横流ししていたドラッグの窃盗。最もこの窃盗は失敗に終わったみたいだけど。でもそのせいで議員はドラッグの横流しが露見して逮捕された。裏を返せば失敗の所為で、議員が失脚したって事にもなる。それと同時に議員の口座から高額のお金が消えた。

ちなみにそのお金はまだ見つかっていないと、そこには記載してあった。


「………考えすぎ、かな。」


過去の事件の経歴を追ってのただの推理。ほぼ妄想に近い考え。もしかすると彼女はその事件、わざと失敗したんじゃないだろうか?なんて、そんな考えがよぎる。議員の失脚の為に。

それからすぐ後に、彼女は出頭することになったのだけど。まさかと苦笑して、私はそのファイルを閉じる。それから、彼女を待たせたままの部屋へと戻ったのだった。


部屋に戻ると、彼女は窓際に立って窓の外を見ていた。


「お、お待たせ……」


呼びかけに対してもピクリとも反応をせずただじっと外を見ていて。それこそ何を考えているのか分からないくらい、瞬きもせずぼんやりと外を見ていた。


「えと…そういえば、さっきの質問って?」


それから彼女の質問を疎かにしたままだったことを思い出してほんの少し申し訳なく思いながらその事について伺う。彼女は相変わらず私の言葉には返事をせずずっと外を見ていた。


「外が、どうかしたの?」


何とも居心地が悪くなった私は、ユーノ君に預かった資料を机の上に置いてコーヒーに口を付けながらもう一度話しかけて、小さく息を吐く。と、ようやく外を見ている姿勢から、少しだけ体を動かして。


「いや。べつに?」


と、いつも通りの微笑を浮かべて、それから私の方へと歩み寄って来た。どこか恐怖を感じるような冷たい笑みで、彼女にしてはそれは少しだけ下手くそな作り笑い。何故かわからないけれど不機嫌が滲み出ている。窓を背にして、逆行を受けている所為で余計にそう感じた。


「な、……どうして不機嫌なの?」


もしかしたらさっき彼女がしようとして質問は重要な話だったのだろうかと、そう思いながら近づいてくる彼女を見るけれど。彼女は「不機嫌」と言われたことが心底意外だったのか、紅い瞳を瞬いてほんの一瞬だけ歩を止めた。


「そりゃあ、待たされたからね。」


そんな反応は一瞬だけで、相変わらず飄々とした物言いでそう呟いた彼女はゆっくりと私の目の前に差し迫って来て、私の目の前の机に手をつく。


「良い子で待ってた私にご褒美はないのかな?」


それからクスクスと笑みを零しながらゆっくりと伸ばした手で、私の髪に触れた。触れて、少しだけ強く引っ張る。チクリとした痛みを感じたけれど、顔を歪めたりしたら彼女の思うつぼのようなそんな気がして、私は無反応を貫く。どうしてか分からないけど、彼女の思う通りにはなりたくないという気持ちが強くて抵抗をする。

少しでも彼女の思う通りの行動をしてしまったら彼女に支配されてしまいそうなそんな恐怖があって。


「………つまらないなぁ。」
「なっ…」


そんな私に、小さく息を吐いた彼女は少しだけ身を下げてわざとらしく肩を竦めた。それから少しだけ楽しそうに口角を上げて。


「でも。」


どこか優雅な素振りで腕を組んで、微笑を浮かべたまま口を開いた。


「だから報酬が楽しみなんだけどね?どんな顔して私に抱かれるのか、ちょっとだけ楽しみだよ。」


優しげな笑みを浮かべたまま少しだけ刺々しい物言い。笑っているのにその瞳は笑っていなくてどこか冷たく感じられて、私は何も言い返せなくて少しだけ視線を逸らす。そんな私の反応はどうやら彼女の思い通りだったらしく少しだけ満足そうだった。


それからそのすぐ後にアリサちゃんとすずかちゃんがやって来て、取り調べしていた重要参考人が吐いた情報を教えてくれた。その情報は次に爆弾魔が爆破を予定している犯行場所のヒントだった。











































面白くない。こんなに不快な気持ちを抱いたのはいつ以来だろうか。私は一人部屋に残されたその身で、ゆっくりと窓の外を眺めていた。

思い通りに行かない事なんて面白くないはずがない。私にとってはそれをひっくり返すことこそが愉悦なはずなのに。彼女があの青年に呼ばれて行った事が不思議と面白くなかった。

妙な感じだ。翻弄されかかっている気がした。他でもない彼女に。……いや、そんなはずは無いか。

ゆっくりと目を閉じる。




「お、お待たせ……」



程なくして部屋に戻って来たなのはの少しだけおどおどしたような声。その声に少しだけ口角を上げる。


私はいつだって翻弄する側で、支配する側で、騙す側だった。


そう言い聞かせるように、静かに心中で呟いて目を開く。開いた折、窓の外の階下に見知った女性局員の姿を見つけて私は目を細めた。



“ドクターの指示通りに。”そう言われた気がして。


「外が、どうかしたの?」
「いや。べつに?」


彼女に向かっていつも通りの笑みを浮かべる。ジェイルの計画通り。私の計画通り。


計画の分岐点はもう少しだけ、先だった。












テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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