お焚き上げてみる

お焚き上げ

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カチリ、と重たい引き金を引くと耳に響くようなビリビリとした音を立てて。数メートル先の人型の的に、穴が開いた。丁度心臓部分。生きている人間ならば即死であろうその場所。的に当たったというのに全く喜ぶ気にもなれず、憂鬱な気持ちで私は小さく溜息を吐いた。


「なんや、元気ないなぁ?」
「───…はやて、ちゃん。」


カチャリと銃を置いて、訓練用のゴーグルと耳あてを外した。耳あての所為で聞こえなかったけれどどうやら両手で拍手をしていてくれたみたい。


「そんなに嫌やったら受けんでもいいんよ?」


任務、と付け足して少しだけ苦笑したはやてちゃんは私の親友で、現在の仕事の上司。私の名前は高町なのは。とある組織に属していて、主に特殊な任務に就いている。それは通常の仕事なんかじゃなくて、もっと別。所謂黒い仕事。暗殺だとか、そういった仕事なの。それはずっと前からこなしてきた仕事で、今さら嫌悪感もなにもないけれど、憂鬱の原因は他にもあった。





『───なのはっ、見て!見て!』





不意に思い出して、頭から追い出すように首を振る。


「嫌なわけじゃないよ。──…ただ、あの場所は……」


そう言って、はやてちゃんに少しだけ苦笑を漏らした。今回の任務が嫌なわけじゃない。ただ、今回の任務の場所が、とある事を思い出させるから少しだけ憂鬱だった。


「あの子の事、思い出す?」
「────…ん、 悪い事しちゃったなって。何度も思うんだけど。」
「仕方ないやろ。私らと居たらあの子が危険に晒されるし。」
「うん。もう大きくなってるかな──…」


遡って数えてみたら、あれから8年も経っている事に気が付いた。私よりも7歳年下だったから、今では17歳か。元気にしてると良いけど…なんて今さら勝手な想像をして、少しだけ苦笑したのだった。








今回の任務先である海鳴市。最後に行ったのは8年前の任務。丁度私が18歳の頃だった。そこで事件に巻き込まれた一家の子供を助けた。偶然の成り行きで。普段だったら目撃されないように心がけるのに。その少女の家族はその事件に巻き込まれた所為でみんな死んでしまって。少しだけ自分の無力さを悔やんだっけ。


「フェイトちゃんやったらきっと元気やろ。──…あの子は頭のええ子やから。」
「……うん。」


私の暗い表情に気が付いたはやてちゃんが、少しだけ困ったような顔で微笑んでそう言った。フェイトちゃん。その少女の名前はフェイトと言うらしかった。家族を殺されてしまったショックで最初はなかなか懐いてくれなかったけれど、半年も一緒に居た事でだんだん心を開いてくれて。綺麗な金髪に、深くて澄んだ紅い瞳。真っ直ぐに私に微笑んでくれる彼女が眩しくて、短い時間しか過ごしていないのにとても大切な存在になっていて。

だけど、私は自由の身ではなくて。組織からの勧告を受けて、彼女の前から黙って姿を消した。もちろん彼女が生活していける分のお金等々を置いて。


「あの町に行って、会っちゃったら嫌だなって…思って。」


きっとどんな顔をして良いか分からなくなる。きっと彼女は私の事を恨んでいるだろう。真っ直ぐに私に向けられた笑顔を思い出して、そんな彼女はどんな顔で私を見るだろうって考えただけで怖くなった。命がけの任務へ出る時よりもこっちの方が遥かに怖いと思う事が笑えるけれど。


「まぁ、そうそう会う事もないやろ。あの子だってなのはちゃんのこと忘れてるかもしれんし。私なんて1回しか会ったことないし、しかも嫌われてたから完全に忘れとるやろなぁ。」
「え?嫌われてたの?」
「せや。なのはちゃんと仲良うしてたからやきもち妬かれてたんよ。」
「ふふふ。まだ子供だったし。」


暗い思い出を少しだけ明るく変えてくれたはやてちゃんに感謝しながら、組織内の訓練所を出て通路を歩く。


「そういえば私今回の任務、新人の子と組まされるらしいんだけど、はやてちゃん何か聞いてる?」
「ん?あぁ、新人の子が入ったっていうのは聞いとるよ。何でも凄腕らしいなぁ。」
「じゃないとこの組織には来れないしね…一体いくつくらいの子なんだろうね。」


あんまり扱いにくい子じゃないと良いけどね、なんて少しだけ冗談交じりで通路を歩いている途中で、私とはやてちゃんの端末に呼び出し音。どうやら2人とも同じ要件の様で同じ場所へと呼び出されて。私はそのまま進路を変更して呼び出された場所へと向かった。



「急に呼び出してすまないな。」


それから呼び出された指令室で、待っていたのは指令であるクロノ君。呼び出したクロノ君はいつも通り、相変わらず難しそうな顔をしていた。


「えぇよ、どうせ私もなのはちゃんも暇やったし。」
「そうか。それなら良いんだが、2人には先に紹介しておこうと思ってな。」


そう言って、私達が入って来た扉とは別の扉から。


「───失礼します。」


そう静かに響いた声に、ビクリと肩が跳ねた。ほんの少しだけアルトな、とても綺麗に澄んだ声。長い金髪。





『───なのはっ、見て!見て!雪が降ってる!』





その扉からその部屋にやって来たのは、8年前に私があの町に置いてきた少女だった。あの頃となんら変わらない綺麗な紅い瞳。だけど8年の間に身長はずいぶん伸びたみたいで私の身長なんて簡単に追い越していた。


「本日付で組織入りしました。フェイト・テスタロッサです。」


それから優しげにそう微笑んで、よろしくお願いしますと口にした。その時には私は何も言い出せなくて、そんな挨拶だけで彼女はその部屋を去ってしまって。ようやく話が出来たのは、その日の夜の事。







深夜と呼べるほどの随分遅い時間。彼女を見つけたのは外だった。組織の建物の近くにある寮のすぐそばで、1人で歩いている彼女を見つけて心臓が跳ね上がった。彼女と対面してからずっともやもやしていた気持ちが急に沸騰するようなそんな錯覚を覚えて、彼女の元へと歩を進める。


「ぁ、あのっ…」


彼女も私の存在に気付いたようで、立ち止まって振り返る。ほんの少し肌寒い風が吹いて、ちらちらと雪が舞っていた。


「フェイトちゃ──」
「久しぶりだね、なのは。」
「えっ?……う、うん。そ、そうだね。」


呼びかけた声に被せるようにしてそう微笑んだフェイトちゃんに思わず拍子抜けして、漏れたのは少しだけ間抜けた声。


「げ、元気してた…?」


大きくなったね、なんて苦し紛れに言葉を乗せて。何とか話題を作ろうと口を開く。9歳だった頃とは全然違う彼女の姿に戸惑ったのももちろんそうだけど、普通に微笑んでくれることが予想外で。だって、もし会う事があったなら罵られてきっとなじられると、そう覚悟してたから。

だから笑顔を向けられたことに少しだけ油断したんだと思う。


「うん。なのはの事忘れたことなんてなかったよ。」


そう言って微笑して。だけど次の瞬間にはカチリと低く響く銃器の音。ぐ、と胸口に押し込まれた黒い拳銃。思考が処理に追い付かなくて、何の反応も出来なかった。ただ当てられる銃を見て、それから彼女の顔を見る。彼女は相変わらず静かに微笑を浮かべたまま、少しだけ悲しそうに微笑んで、小さく呟く。


「───…ずっと憎くて、仕方なかった。」
「っ、ぁ──…」


ぐい、と胸元に突き付けた銃をさらに押し込まれて肺を圧迫されて、少しだけ喘ぐ私に。


「けど正直、もうそんなのも通り越しちゃった。」


彼女は押し当てていた銃をしまう。体の力が抜けたみたいに肩を下ろして、それから首をコキコキと鳴らして。


「まさかこんな所で会うとは思わなかったけど。──…とりあえず次の任務、よろしくお願いしますね。」


それから礼儀正しくペコリと頭を下げて、私に背を向けて歩き出した。まるで本当に興味も何もないかのように。


「っ……」


ズキズキと痛む胸。銃を突き付けられた時の力は確かに本気の力で。


「ごめん……ね……」


張り付けられたような彼女の微笑を思い出して、小さくそう呟いた。無関心でいられることが一番辛いのだと、その時初めて気が付いて。

こんなことなら恨んで、罵って詰られた方がずっと良いと、小さく胸元を掴んだのだった。








↑ ここで終わってた


たぶん、愛憎なのフェイみたいなのが書きたかったのかな…?





テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

コメント

非公開コメント

続きが気になり過ぎる\(^o^)/なのはもフェイトも、公式において「優しく強い人」だけでは語れないback graundがあるので、愛憎劇も何気に合うと思ってます。
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Author:92
なのフェイ信者ですw
初心者ですが宜しくお願いしますorz
あと、一応リンクフリーです(^^);

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