doubt 09

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祝賀会で取り押さえた重要参考人を問いただして。


「………病院?」


部屋に戻ってきたアリサちゃんたちが教えてくれた情報にそんな場所が浮上した。


その情報を展開しながら、私は思わず立ち上がる。分かったのは爆弾魔の次の標的となったその場所が、「病院」というヒントだけ。


「そ。なんでもそれ以外は知らないんですって。つまりそれが唯一で最大のヒントよ。」
「びょ、病院なんて市内にいくつあると思って──…」


そこまで言いかけて、そのまま力なく椅子に腰を落とす。今までそんなに直接的な場所に爆弾を仕掛けることなんてなかったのに。よりによって病院だなんて。


「とにかくはやてが今尋問続けてるわ。」


ジェイル・スカリエッティの捜査に関わっている関係で捜査に合流したはやてちゃんの名を上げて、アリサちゃんは息を吐いた。病院で事件を起すという情報は得ていてもその病院が何処なのか。その情報は知らないの一点張り。「病院を標的としている」という事だけ。いつ、という情報も無い。


「とりあえず市内の病院全てに捜査員を派遣して!」
「それと、混乱を招かないようにしなくちゃだよ、なのはちゃん。」


病院と言う、病める人たちがたくさん居る場所。そんな場所でそんな事件を起こそうとしている犯人に唇を噛みしめながら眉を寄せた。何の理由もなくそんな事を平気でしようとする犯人が許せない。憎しみさえ抱ける。だけど、そんな感情を抱いた所で何がどうなるわけでもない。市内の地図を広げて、至急ピックアップされた市内の病院のリストに目を通した。

大きい病院から小さい病院。十数か所はあるそのリストからどれか一つを見つけ出す。そんな事はとても難しくて、それに間違えばたくさんの犠牲を生む。椅子に腰を掛けたまま指を組んで肘をついて、私は小さく息を吐いた。







「──…海鳴病院。」


そんな中だった。

隣からぽつりと零れた病院の名前。それは市内で一番大きい病院の名前だった。そう言った本人は自分に配られた、市内の病院のリストを見ながら至って平坦な声。紅い瞳を資料に向けたまま少し気だるげに肘をついてそう言ったのだった。


「今、何て?」
「だから。………標的になった病院の話をしてるんだけど。」


一拍間を置いてそう言った私のその言葉に小さく息を吐いてそう返した彼女は病院名のリストをテーブルの上にピン、と跳ねてそう言う。少しだけ眉を寄せて。


「な、なんで分かるのよ?」
「さぁ。……勘?」
「はぁ!?──ッ、あんたねぇ!」
「信じるの?信じないの?……私はどっちでも良いけど。」


「海鳴病院」を提示した理由を問うアリサちゃんに、少しだけ挑発的に微笑んだ彼女。確信めいたそんな言葉を、信じる信じないは意思一つ。その確信の理由を問うても彼女は答えてはくれず「信じないならそれで良いよ?」と相変わらずな微笑を浮かべたのだった。その情報源も分からないのに、そんな言葉にほいほいと耳を傾けるわけにもいかない。だって彼女は元犯罪者で、疑う余地はいくらでも存在してしまう。

憤慨するアリサちゃんを横目に、その紅い瞳は静かにこちらへと動かされて私を捉えた。嘲笑交じりの、だけど深い色の瞳。その奥に何を隠してるのか分からないのに、惹きこまれる。


「どのくらいの確率で、当たるの?──…その勘は。」
「ちょっと!なのは!?」


大声を出したアリサちゃんを制して。私は真っ直ぐに彼女に問う。


「100パーセントを保証するよ。」


そんな私の問いに、彼女は堂々とした微笑みを浮かべて頬杖をつくと、絶対の保証を付けた。どうしてその病院名を上げたのかは分からないし、表情からも真意は取れない。絶対の保証を付けられたからといって、完全に彼女を信用するのは少し不安もあると理解しているのに、どうしてか信用したくなる。これが詐欺師の心理戦なのかとかそんなものは分からないけれど。


「アンタ、本当いけ好かないわ。」
「そう?私は割とアリサの事嫌いじゃないけど?」
「………ッ、アンタ、私の事おちょくってんの?」


彼女の手の内を見せない物言いに憤慨したアリサちゃんは、嫌悪の意を表して彼女にそう言うけれど、彼女は特に気にした様子もなくて。


「私を捜査に引きこんだなら、それなりの信頼はしてもらわないと困る。」


頬杖を戻して、それから深く椅子に腰かけて。まるで自分が絶対の支配者だと言いそうな格好。そんな風にしてそう言った彼女の案を飲む事に決めた私は手元の資料を机の上に投げ出した。


「───…複数名の捜査官を警戒の為に周囲の病院に派遣して、私たち主要捜査官は海鳴病院に。」


そう言った私の言葉に満足そうに微笑んだ彼女は相変わらずの微笑を浮かべながら「信じてくれてありがとう」と白々しく言った。


「なのはがそう言うなら。……私たちはそれに従うわ。」
「──…ありがとう。」
「なのはちゃんも、少し休めると良いんだけどね。」
「私は平気だよ。」


そんな言葉のやり取りを交わして部屋を出て行ったアリサちゃんとすずかちゃんに少しだけ苦笑をした。2人は恐らくはやてちゃんにその事を伝えに行ったんだろうけれど。


「………私が間違ってたりでもしたら、どうするつもり?」


2人が出て行った後、少しだけ笑ってそう言った彼女に。私は静かに息を吐く。


「さぁ…。ひとまず貴女をあの監獄に戻すことは必須でしょうね。」
「それは困るなぁ。」
「───…ねぇ。」


表情一つ崩さないポーカーフェイス。その後ろに何を思っているのか全く分からない人物だから怖い。怖いのに、だけど何を思っているのか知りたくなるそんな人物。天性の魅力っていうんだろうか?子供のころからそうだったんだろうか?


「なに?」


椅子から立ち上がって自身のカップにコーヒーを注ぎに行くその後ろ姿だけ見れば至って普通の人なのに。


「………子供の時の将来の夢って、あった?」


爆弾魔の予告の場所を彼女が絶対の保証を付けて教えてくれた所為か少しだけ気が抜けていたんだと思う。何にも考えてない質問がぽろりと零れた。自分でも予想外な質問。


「─────…は?」


だけどそれは彼女にもそうだったらしい。初めて聞いた彼女の間の抜けた声。魔の抜けた顔。それは一瞬で、彼女は自分でそんな顔をしていることに気付いたらしく直ぐに表情を変えた。微笑。いつも通りのあの微笑で。だけど少しだけ悲しそうな色を含ませて。


「さぁ。どうだったかな。……忘れちゃった。」


くすっと笑う。笑って、「君はどうだったの?」と切り返された。私の夢なんて今も昔もなにも変わってない。


「捜査官、かな。……人の為に働きたかったし。」


小さいころから親の姿を見てきた。だから憧れだった。ほんの少し前に言った話の続きみたいにそう言うと「ふぅん」と興味なさげに返事をしてゆっくりと立ち上がる。


「少し外を出歩いてきても?」


この後直ぐに海鳴病院に向かう話をすると「はいはい」と適当そうな返事を繰り広げて。彼女は上着を着ると、カップに残ったコーヒーを飲み干してドアノブに手を掛けた。一応局内ならある程度は目を離しても大丈夫だろうと踏んでの事。




「ねぇ。」
「───…今度は何?」
「人の為って書いて、何て読むか知ってる?」
「ぇ?」


部屋の外に出る直前にそう言って。「じゃあね」と手をひらつかせて、ゆっくりと扉が閉められた。






人の為と書いて。



「偽。」




彼女は一体何を言いたかったんだろう……?
考えても答えは出なかった。


















続く


テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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