doubt 10

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「ユーノ君、話って?」
「急にごめん。でも、彼女の事を調べてて少しだけ分かったことがあるんだ。」


病院へと到着した私たちの後を追うようにやって来たユーノ君に呼び止められて、私は皆を待たせたままユーノ君の話を聞いていた。小さく折りこんだ書類を、ポケットから出したユーノ君は少しだけ走って来たのか、汗を浮かべていて。


「これ……」


折りこまれたその紙に記載されていたのは小さな施設の情報だった。小さな孤児院。


「孤児院…?」
「うん。……まだ、定かではないんだけど……この施設に、彼女が何かしらの関わりを持っている気がする。」
「それってどういう…?」


数年前に彼女が起こした、最後の事件。窃盗を失敗した事件。最初に聞いた時に妙な違和感があった話だった。天才とまで謳われる彼女が起こした事件なのに失敗と言われている市の議員が横流ししていたドラッグの窃盗事件。


「まだ推測の域なんだけど。」


ひそひそと小さな声で、ユーノ君は続きを促した。

その議員が個人で経営していたのが、ユーノ君が手にしていた小さな書面に載っている施設で。あくまでも推測の域で、そこの子供たちの臓器が売買されていたなどと黒い噂が当時囁かれていた事を教えてくれた。

そうしてその後、彼女の失敗により議員は逮捕。口座からは多額の財が消えて、その施設は当時その施設で働いていた職員が購入したという話らしい。あくまでも推測が交錯する話で信憑性は何もない。それどころか普通なら、それが何?で終わってしまう話。でも、ユーノ君は続けた。


「その施設を購入した人物の名前が、アリシア、という人物らしい。」
「アリシア…?」
「その名前は、戸籍の何処にもいない架空の人物だ。いや、正確には、数年前、亡くなった人の名前。詳細なデータはないけれどその名前に該当するのは9歳かそこらで亡くなった子供の名前だけだった。最もこの人に直接関係あるかどうかは分からないけれど。……この情報の出どころも、怪しいんだけどね。でも。」


何か引っかからないかい?と眼鏡を押し上げるユーノ君越しに彼女を見る。明確なことは、「アリシア」という人間は既にもう存在しないということ。


「もっとも、これは僕の勘で、あくまでも予感の話だけどね。もしかしたら、彼女に何か関係あるのかなって。」
「この施設は、今は………?」
「そのアリシアという人物の管理の元、通常通りに運営しているよ。」


一体どうやって、戸籍に名のない、生きていない人間がこの施設を購入して管理しているんだろうね、と意味深に微笑むユーノ君に。私は小さく息を飲んだ。


調べればきっと、一歩彼女に近づくと思えたから。


確証はないのに、予感がした。







































「……これだけ大きい病院だと大変ね。本当にここで合ってれば良いんだけど。」


棘のある言葉と眼差しで私を見やった後、捜査官であるアリサは呆れたように腕を組んだ。まだ私には何か言いたい事があるようで、私はその彼女の神経をさらに逆撫でするように微笑して見せた。こうまで敵意をむき出しにされるといっそ心地が良い。

もっとも、そんなものが心地が良いのは私だけだろうけれど。


「間違いないって言ってるじゃない。疑い深いね、アリサは。」
「何ですってぇ?」
「はいはい、2人ともそこまで。」


眉をぴくつかせながらそう言うアリサと私に向かって。ぱん、と手を叩いたのはすずか。ここ数日見ていた限りだと、どうやらアリサはすずかには逆らえないようだった。2人は特別な関係なのだろう、空気で分かる。ごくわずかな空気の違いだけど。


「それにしても大きい病院なんだね。ここ。」


やって来ているのは市内でも最も大きい「海鳴病院」。その受付窓口の付近で、私たちは見舞客を装っていた。私の視線の先にはなのはが居て、それからその隣には例のユーノと呼ばれていた青年が居た。ユーノはつい先ほど病院へとやって来て、なのはを名指しして情報か何かを伝えているようだった。どうやら彼は情報を調べたりする部門の人物らしい。

何を話しているのかは知らないが、何となく親しげだなと。そう思った。




「フェイト。」


と。不意に名前を呼ばれて視線をゆっくりと向ける。呼んだのはアリサで、私は少しだけ意表を突かれて「なに?」と答える。その表情から読めるのは怒りと、それから少しだけ不安そうな感情が読み取れる。ちなみにすずかは何処かに行ったようだった。


「あんた……本気で協力して、くれてるのよね?」
「───…それはもちろん。」


今までそうしてきたじゃないかと微笑を浮かべると、目の前のアリサは息を吐いた。


「じゃあ、信じるわ。完全に信用してるわけじゃないけど。」
「そのくらいがちょうど良いよ。」


飄々とした私の物言いが少し癇に障ったのか、眉を寄せたアリサは。


「だけど」


少しだけ、低く呟いた。


「────なのはを傷付けたりでもしたら、ただじゃ済まさないわよ。」


低く、威嚇するような声。いつももっとヒステリックなイメージを抱いていたものだから、少しだけ驚いた。こんなに静かに怒る事もあるのかと。


「君たちは、友達?」
「………幼馴染よ。」
「ふぅん。」


幼馴染。友達。なるほどと思う。


「あんた、色んな人を騙してきたんでしょ?」
「それはまぁ。」


話を聞きながら、視線を先ほどの2人に戻す。相変わらず何か話し込んでいて時折楽しそうに見えて。そういえば友人というものがどんなものなのか。そう言えば知らない事に気が付いた。


だけど別にどうでも良い。私は私の計画を無事に済ませられれば良いのだから。


「もしもなのはを騙したりしたら、傷付けたりしたら。」


絶対に許さないわ、と静かに放たれた言葉に微笑を浮かべて「はいはい」と返事を返した。そんな私の適当な返事が癇に障ったらしいアリサは「この犯罪者」と私に舌打ちをしたが、それ以上は何も言わなかった。


犯罪者。


私は私の為に、偽を吐く。誰でもない私の為に。


「─────…許してくれなくて良いよ。」


だから聞こえないくらいの小さな声で呟いた。


結果的に、私は全てを利用したことになるだろう。彼女も。皆も。騙していることになる。


許されなくても、良い。

だって。


この計画が全て上手くいったその後の事に、興味などないから。


















テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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なのフェイ信者ですw
初心者ですが宜しくお願いしますorz
あと、一応リンクフリーです(^^);

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