こうしーん

久々にPCに向かった。

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「───かはッ…」


いつから走ってるんだろう。ほんの数分か或いは十数分、私は走りっ放しだ。背後から這い寄ってくるソレを振り返る事もなく、懸命に走る。多分振り向いたら終わりだから。

助けを呼ぼうにも誰も居ない。星ひとつない夜空には不気味なくらい煌々と輝く月が浮かんでいて、普段なら美しいと思えるそれも、今では不気味にしか思えなくて。全身汗まみれになりながら、私は足を必死に前に動かして駆けた。


  一体どうしてこんな事になったんだろう。


数時間前まで、私は学校にいた。


『すいません、道を聞きたいんですけど…』


それから。大学のサークルだとかそういう勧誘にあわないように夜まで時間を潰して、そこで見知らぬ女性に話しかけられたんだっけ。大学の帰り道。もっと早く返れば良かった。今では後悔しかない。まさか思いもよらなかった。話しかけてきた彼女が吸血鬼だったなんて。

吸血鬼。最近世間を賑わせている化物。人間になりすまして生活してるだなんていうのは都市伝説だと思っていた。対策機関がこの間ニュースで「気を付けろ」って注意を促していたっけ。


「──…ッ、はぁッ…はッ 」


どのくらい走っただろう。私、フェイトは至って普通の、何処にでもいる学生だ。体力にはそれなりに自信がある。運よくこのまま逃げ切れたら、次からは夜の外出は控えようって、そう思った。

ごく普通の見た目、大人しそうな女性に話しかけられて道を教えてただけなのに、突然その女性が襲い掛かってくるだなんて一体誰が想像するだろう?肩で息をしながら、暗い路地で周囲を探る。静かなその場所で、自分の鼓動音が嫌に響いていた。

吸血鬼。それは夜闇で人を襲う化物だ。ニュースで世間を賑わす、人が死ぬような残虐な事件は大半がそいつらが原因。血を抜かれてショック死とかそういう事案はまだマシな方。




「………居なく、な……った?」


ドッドッドッド…っと激しく鼓動する心臓を抑えて、息を吐く。襲い掛かって来た吸血鬼の姿は見えない。音もない。このまま上手くいけば、何とか逃げられる もしくはもう吸血鬼は諦めて去ったのかもしれないと、絶望的な状況で少しだけ希望を抱いた時だった。



ひんやりと 触れた。 何かが。


濡れた何かが首筋に当たる気持ち悪い感覚。
耳に掛かる息遣い。

恍惚にも思えるようなそんな吐息。


「見ーつけ た」


振り向く前に。声が耳に響いて、途端に心臓がドッと跳ねた。全身から血の気の抜ける気分。どう表現すれば良いだろう?体から力が抜けて、不自然に折れ曲がる感覚がした。実際にはいつの間にか地面に膝をついていて、いつの間にか地面が赤い。


「────ッ…、が 」


声にならない声を血と一緒に吐きだして、その拍子に視界が白み始めてきた。正直何が起きたかとかそういうのがさっぱり把握出来なくて、だけどそれなのに何故か冷静に、自分が「死ぬ」と理解した。死ぬ時って、こういう物なんだろうか。


耳元で高揚した囁き。が、聞こえたけれどもはや脳まで届かなくて、私はさっきより少し多めの血を、口から吐き出した。───違うかな、口から溢れ出した、の方が正しい表現かも。


死にたくない。


けどこれはもう、助からないかな。




「 ……ぁ…」


世界が遠くなるような錯覚がして。やば、と思った拍子に宙を仰いだ視線が、何かを捉えた。遠く。建物の屋根に動く人影。霞む視界の中で遠くにあるはずのものなのに、嫌にはっきりその色だけが網膜に焼き付いた。




それは、世闇に浮かぶ サファイアのような蒼色だった。








































「────── ッ」


ビクッ、と。体が震えて目が覚めた。目が覚めた?という事は私は生きてるんだろうか?最初に浮かんだのはそんな間抜けた考え。


「………。」


白いカーテンに包まれた何もない部屋で、眠っていたみたい。体中にじっとりと汗が滲んで物凄く気持ちが悪かった。


「  気分はどう?」
「ッ!?」


急に真横から話しかけられて、思わずビクンと体が震えた。


「誰…?」
「さぁ。誰だろう?」


クスクス笑ってベッドの真横の椅子に腰かけるその女性は私より年上そうで。何処か試すような視線で私を見ていて、私は少しだけ身構えた。


「私───…」
「感謝してね?」
「は……?」


死にかけてた所を助けてあげたんだから。そう言って、微笑を浮かべるその人の瞳を見て、ハッする。あの時最後に目にしたその色と、その女性の瞳に写りこんだ 自分の首に巻かれた白い包帯に息を飲んで、思わず手を当てて確かめた。微かに感じる神経が痛むような感覚。一瞬、夢かと思ったあの夜の出来事は現実に起こったことで。どうやら私は奇跡的に一命を取り留めたみたいだった。


「助けてくれて、ありが──」
「気分は」
「へ?」
「気分は、どう?」


どうって。言われても。


「えっと……」


そんなに痛みもない。どちらかというと元気だと思ったので「だいぶ良い」と伝えた。


「そう」
「…………?」
「何か、飲む?」
「あ、はい。」


脈絡のない人だな、とか思いながら。そういえば喉が渇いた気がして頷く。というかこの人誰なんだろう?


「はい。どうぞ?」
「………どう、も。」


差し出されたミネラルウォーターのボトルを受け取って、未開封を確認して。やや訝しくその人を見るけどその人は素知らぬ顔で「飲まないの?」と首を捻る。よくよく見ればとても綺麗な女性だった。綺麗に整えられた亜麻色の長い髪。それから蒼い瞳。あの状態でどうやって私を助けてくれたのかとかそう言うのはあまり深く考えず。何だか無性に喉が渇いて、ボトルの水を喉に流し込んだ。


ごくごくと喉を鳴らして勢いよく水を飲む私を、じっと見つめる蒼い瞳。少しだけ怖く感じながら、水を飲む。けど、余程喉が渇いてたのか飲んでも飲んでも一向に喉は潤わなくて少しだけ違和感を感じた。


「………?」


傾けるボトルの水はいつの間にか空っぽ。なのに、喉は依然として乾いたままだ。


「あ、私の名前は高町なのは。」
「───ぁ、フェイト…です。」


空っぽのボトルに蓋をして、ペコリと頭を下げる。何だか本当に脈絡がなくて不思議な人だな、と思いながら空のボトルをベッド脇のテーブルに置いた。飲み足りないのか、まだ喉が渇く。そういえば病み上がりだからかな?麻酔とかそういうのの副作用?そう思って口を開く。


「あの」
「あのね。」
「はい?」


わざと被せるタイミングで。


「喉、まだ乾いてる?」
「えっ?」


それから「多分ねぇ」と少しだけ困ったような微笑を浮かべて、そのなのはと名乗った女の人は私のお腹の上、ベッドの布団にポンと何か投げた。


「こっちじゃないとダメだと思うよ?」


そう言われて。目の前に投げられたものを見る。


「こ…っち?」


布団に投げられたのは輸血パック。みたいな物。一瞬なんの冗談かと思って自分が貧血気味って事だろうかと首を捻った。


「吸血鬼に噛まれると、吸血鬼になるって言う話、知らない?」
「────…な 」


何を意味の分からない事を。そう言いかけて思わず首に触れた。あの夜は何がどうなっていたか良く分からなかった。首に巻かれた包帯に触れて、それから目の前のその女の人に視線を向ける。


「正式には少し違うんだけどね?」


ドクドクドク…と鼓動が響く中、遠慮なしに話を進める彼女は優しい声で、だけど何処か淡々と。


「普通は噛まれた時点で死んじゃうの。」


授業を推し進める教師のように説明を続けるのだった。私はただそれを黙って聞いているだけ。知らなかった、彼女が言う常識を 改めて認識する。


「じゃあ何で私は」


生きてるの?


「私、あの時────…」


確かに、噛まれたはず。徐々に蘇るあの夜の記憶に、恐怖から粟立った。ズルズル体液を吸われる感覚。首に突き刺さった牙の痛み。その瞬間よりも、より鮮明に思い出すそれら。


「うん。」


さらりと、私の前髪をその女の人が撫でる。優しく慈しむような憐れむようなその指に、少しだけ心拍数が下がった感じがして、視線を向けると。ゆっくりと教えてくれた。


「ごく稀にね、居るんだよ。」
「私たちに含まれる毒が適合する人が。」


毒が適合。言っている意味が良く分からなかった。


「吸収して、より強く進化するって…言うのかな。」


分かるようで分からない。いや、分かりたくない。一体何を言ってるんだろう、この人は。


「ここは、何処なの?」


自分にしては酷く抑揚のない声で紡ぐ。喉の渇きが余計に悪化した気がした。


「機動六課って、聞いた事ない?」
「吸血鬼対策の、機関でしょう?」


散々ニュースでやっている。あぁ、その機関に保護されたのか。


「ごく稀に、適合すると────」







“吸血鬼に変化する。”






その優しい声はとても残酷に耳に響いた。馬鹿馬鹿しい事を言ってくれる。正直、何を言ってるのかさっぱり分からなかった。ごくまれに人間が吸血鬼になる?たまたま私が適合してしまったとでも言うのか。




「嘘だ。」
「本当だよ。」


呆れたように、少しだけ困ったように溜息を吐いて。でも想定内の反応だったのか「言っても信じたくないと思うけど」と苦笑して。


「喉、乾いてるんでしょう?」


それが証拠。っていうなら、喉なんて乾いていない。


「飲むと楽になるよ?」
「………いらない。」


頭がぐるぐるだ。だって。何かの間違いでしょう?悪い冗談だ。


「私は普通の、ただの人間だ。」


変な冗談は止してよ。そうぼそりと呟いて、お腹の上に置かれた輸血パックをぺしっと弾いた。途端に寄せられたのはほんの少しの怒気。


「私は、あんな化物じゃない。」


飲むもんか。酷い吐き気がした。それは多分渇きの所為だと半分分かっていて、だけど分かりたくなくて。イライラが増して、そう言葉にする。


「化物って……」


ちょっとだけ苦笑したその人は。苦笑の裏に怒気を孕んで、ベッドの上の輸血パックを拾うと、ベッド脇のテーブルの上に置いた。


「本人相手にそれは失礼なんじゃないかなぁ?」
「……えっ?」
「機動六課は吸血鬼が人間を守るために設立した機関なのに。」


今、何て言っただろうか。吸血鬼が人間を守る?本人を目の前に?


「守って貰っておいて、それはないんじゃない?」


数刻前の言葉を思い出す。





“私たちに含まれる毒が適合する人が”


────私たち。




そういえば、彼女は確かにそう言った。


「ば、けものッ!」


咄嗟に声に出て、思わず身構える。


「あー…もう、頭にきた!」


だから人間なんて嫌いなのに。なんてさっきまでの大人っぽい話方とちょっと違った話方。多分こっちが素なんだろう。「もーっ!」と普通の女の子が起こるみたいな声を出して、少しだけ怒った顔に、ちょっとだけ体が引き攣った。


「───…ッ、ぁぐ」


前髪を掴まれて、喘ぐ。無理やり髪を引っ張られた所為で上を苦しく仰ぐと少しだけ満足そうなその人は。


「言っておくけど、私だって助けたくて助けたわけじゃないの。」


誰が人間なんて、と続けて私の上に跨って、両足で私の両腕を踏んで押さえつけた。


「ッ、何を──…」
「何って、助けてあげるんでしょ。」


はぁ、と面倒臭そうに息を吐いて。私の前髪を少しだけ乱暴に掴んだまま、自分の手首に牙を刺す。見た目は本当に普通の女の人なのに、その奥に見える牙が吸血鬼のようだった。白い手首から流れる赤い滴に、無意識に喉が鳴って、首を振る。一瞬「美味しそう」と思ってしまった事を拭うように。


「欲しいんでしょう?」


だけど、そんな私に意地悪く微笑んだ彼女は自分の手首から流れた血を口に含んで。


「───ん、ぐっ」


私の口に、押し込んだ。押し当てられた柔らかい感触と、流し込まれる鉄の味。ほんの微量のそれに満たされる抗えない感覚に総毛立った。苦しさに少しだけ涙が浮かんで、コク、と喉を鳴らすと喉いっぱいに広がった鉄の味。気持ち悪いはずのそれに渇きを満たされて、その事実に自分が本当に化物になってしまったのだと理解して、私はそのまま力が抜けるように、目を閉じたのだった。



それが「高町なのは」という吸血鬼との出逢い。




































「なのは、どんな感じ──…って、あんた何したのよ。」
「にゃ、にゃはは……」
「無理矢理飲ませたの?泣いてるじゃないこの子。」
「違──くはないけど…まさか気絶したまま泣くとは…」
「ったく…。」
「だって、私たちの事化物って言うから──…!!!」
「そりゃあ人間からしたらそうでしょうよ。」
「うー……」


部屋にやって来た幼馴染のアリサちゃんに説教されながら、私は低く唸った。


ちょっと無理矢理血を飲ませただけで気絶するなんて弱い人間の為にどうして私が説教されなくちゃいけないんだろう。ジト目で睨んでも目の前で血を飲まされたまま気絶した人間はピクリとも動かない。


「あんた口くらい拭いてやんなさいよ。」
「ふぇー!?何で私が」
「あんたがやったんでしょうがッ!」
「……はぁい。」


元人間の吸血鬼だなんて、やだやだ。適当にその辺にあったタオルで口をに拭う。寝たまま泣くなんて器用だなーと思いながらちょっと呆れた溜息を吐いて。


「何で泣くかなー…」


あのままだったら死んでたのに。助かったんだから喜んでくれても良いんじゃない?


「人間ってわかんないなぁ」
「そーねぇ。」


珍しく、ぽつりと呟いた今回の呟きにだけはアリサちゃんも賛同してくれた。



分からないから知ろうとする。そりゃあ時々人間を襲う悪い同種も居るわけで。申し訳ないと思う気持ちもある。だからそう言うのを排除するべくこんな機関が出来たのに。そもそも私たちにだって普通の人間のように感情だってある。




そういうのも、分かってくれると嬉しいんだけどなぁ。


ぼそっと呟いて、ついでだから涙も拭ってやった。


















FIN






分からないから分かりたいみたいな。

フェイトちゃんが少しずつ理解を深めていくようなそんな。ちょっと直情型でおっかないなのはちゃんと、温厚で臆病なフェイトちゃん。少しずつ歩み寄っていけたらいいね(・ヮ・)!


この後フェイトちゃんがまた襲われそうになって、襲いかかる悪い吸血鬼をいとも容易くやっちゃうなのはちゃんなのだけど、助けた当の本人のフェイトちゃんに少し怯えられてちょっと傷ついたり。そういう。

フェイトちゃんも少しずつ変わっていって、みたいな……


って!長編になるから!
そんなの全部書いてたら長編になるからやらないから!!!


(∫°ਊ°)∫







テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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初心者ですが宜しくお願いしますorz
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