doubt 11

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「私の顔に、何かついてる?」
「えっ?…別に。」


ぼんやりと彼女の事を見ていたら、急に顔を近づけられて。私は彼女から逃れるように、思わず仰け反った。どうやら私をからかったらしい、満足のいく反応だったみたいで彼女はくすくすと可笑しそうに笑う。それが癪に障った。「別に」と一蹴してそれから何となくユーノ君から聞いた推測話の事を考えてみた。

ユーノ君が言っていた例の施設。その施設と彼女が一体どういう関係を持っているのか。それが分かれば彼女の真理に一歩近づく。そのはず。それにアリシアという人物。架空の人物、もしくはすでに故人である人物がそんな施設を購入する事なんて不可能なはず。普通に考えるなら偽名とかその辺だろう。

考えれば考えるほど謎は深まるばかりで。その施設に実際行ってみるまで何も分かりそうにはなかった。あとはユーノ君が彼女の情報で何か得られるのを待つしかない。

なので一旦その施設の話を頭の隅に追いやって。今のこの現状に目を向けた。


「ねぇ、この病院の何処にあると思うの?」
「────…何が?」


話しかけると、私たちの緊張感も露知らず、彼女はのうのうと自販機で買ったストロー付きのコーヒーを啜っていた。いつの間に買ったんだろう。緊張感に欠ける彼女にほんの少しだけまた苛立って。


「……だから。」
「大体そう言うのって人がたくさん集まるところに置くものだと思うんだよね。例えばそれが愉快犯の場合なら。」


だから、爆弾が。と言いかけた私に被せるように。すらすらと言い放った彼女にさらに苛立ちが沸いた。私をからかって楽しんでいる彼女に、敢えて反応はしなかったけれど。


「じゃあ、人気が多い所にある可能性が高いって、こと?」
「…………。」


ちなみに、他の小さい病院では怪しい物は見つからなかったという報告を数件受けていた。そう聞いても返事をしない彼女に視線を向けて顔を盗み見る。彼女は顎に手を当てて、初めて見るような少し真剣な顔をしてから。


「まぁ。」


勿体ぶるように、緩慢な動き。


「大方予想はついてるけどね。」
「ふぇ?」


そう言って私の声も無視してスタスタと歩く。私の事も他の事も全く無関係だとでもいうようなワンマンプレイ。自由気ままな彼女の後ろを黙ってついていく私、といった感じだ。ちなみにアリサちゃん達はこっそり聞き込みを開始した。


「ちょっ、ちょっと…何処行くの?」


話しかけても無視して歩を進める彼女が向かった場所は、病院内にある食堂。食堂って言っても、少し小さめのその場所は食事時を過ぎた所為かあまり人気がない。


「そう言えば食事とってないなって。」
「は?」


思ってね、と言いながらスタスタ歩く彼女は院内のその食堂の窓際の席に腰かけると、私に「キミもどう?」とにこやかに誘いかけた。


「………真面目にやってよ。」


ほんの少し奥歯を食いしばって。そう呟いた私に、彼女は「心外だな」と小さく囁くように微笑した。


「じゃあ早く見当のついてる場所っていうのを教えて。あなたがここでくつろいでる間に私が何とかするから。」


バン、と机を叩くと相変わらず何を考えてるのか分からない笑みのまま、彼女 フェイト・T・Hは「やれやれ」と息を吐いた。


「じゃあ良く聞きなよ、なのは。」


急に打って変わって威圧的な気配をまとって机に頬杖をつく。先ほどまでのふざけた空気は消えて、少しだけ空気が重苦しかった。


「私の後ろの方向に手洗い場があるでしょう?」


そう言われて視線を向けた先、小さな水道があった。食堂についている簡易の手洗い場。少しだけ汚れた鏡が置いてあって、その隣には可愛らしい小さい花が鉢植えで拵えてあった。


「ある……けど。」
「そう。」
「ちょっと」


そう、とだけ返して席を立つ彼女に、慌てて「何処に行くの」と問うた。相変わらず話に脈絡がなくて掴みどころがなくて、イライラが募る。私も彼女の後を追うように席を立つと、彼女はその手洗い場の方へと歩いて行った。


「一体なに───…」


何がしたいの?と言うより先に。その飾ってある花に触れた。小さくて綺麗な、紫の花。性格はこんなでも花を愛でるような気持ちはあるんだ、なんて少し間抜けな感情を抱く。


「都忘れ。」
「なに?」
「この花の名前。」
「あ、そう。」


花なんて見ている場合ではないんだけど。


「花言葉は“別れ”を意味する。」


それから真面目な顔でそうとだけ呟いた。「別れ」を意味する花。彼女に花言葉の教養があったことには驚いたけれど、そうではない。ここにそんな意味の花が飾ってあることがおかしい。だってここは───…


「……気が付いた?」


私の顔を見て、満足そうに微笑する彼女はその花の鉢を静かにどかす。それからその下に土台として置いてあった直径20センチ程の四角いケースに耳を寄せた。


「………。」


耳を寄せなくても聞こえる時計の針のような音。


「安易な置き場所だね。」


彼女はそう言って、静かにケースの蓋を開いた。デジタルの表示盤を備えて、複雑に絡まる配線の機械。捜査官の訓練生時代の頃、教科書で見たことがあるそれは間違う事ない爆弾だった。表示の時間は「00:34:52」。


「………あと…30…分…?」
「そうだね。」
「ど、何処かに──…」
「あまり動かさない方が良いね。死にたくなければ。」


少しだけ楽しそうにそんな風に言う彼女の言葉に訓練生時代の記憶を呼び起こす。動かすと爆発する仕掛けの爆弾もあると習った。水銀式の──…詳しいことは忘れたけど。


「じゃ、じゃあ……早く患者さんたちを避難させなきゃ!」


あと30分弱。一体どれだけの人を救えるんだろう。あと30分しかない。


「全員避難させるのは無理だと思うよ。……病人だし。」


そもそも人数が多すぎるしこの事を公表すればたちまちパニックになる。そう冷静に言いながら、彼女は不敵な笑みで続けた。


「そこそこお偉い方だけなら、或いは……」


間に合うかもね。なんて。


「そんなの嫌。」


命の価値に順位なんてない。誰でも平等。続けざまにそう言いながら、小さく下唇を噛む。今までたくさんの事を学んできた。こういう時の対処法だって熟知してるつもり。対策班を呼べば良い。だけど。


「……30分じゃ…」


間に合わない。どうすれば助けられるの?ここに居る弱い人たちを。


「なん、とか…出来ないの?なんで、そんなに冷静なの?」


もしかしたら貴女だって死ぬかもしれないのに。そう言う声が震えた。こんなところで彼女に助けを求めるなんて間違ってる。それでも冷静な彼女に縋るしか出来なかった。


「……言ったでしょ。私、別にこの世にそんなに未練とかないし。」


クスッと、彼女は静かに笑みを漏らす。彼女に初めて会ったあの監獄を思い出していた。


『………興味ない。』


あの監獄での冷ややかな反応と、無感情な表情を。そういえばそうだった。この人はそういう人間だった。馬鹿みたいだ、私一人でこんなに必死で。それでも救いたいのだから、仕方ないけど。彼女は一層強く唇を噛んだ私に、「仕方ないな」と言わんばかりに息を吐く。


「どうしてそこまで頑張りたいのか、私には理解できないよ。」


それから腕を組んで、壁にもたれてそう言った。


「アリサちゃん達に、連絡しなくちゃ……」


そんな彼女を無視して携帯を上着のポケットから取り出す私に。


「────まぁ、ここでそれを解体すれば済む話なんだけどね。」
「そんな事。」


処理班を呼ぶ間にアウトに決まってる。そう言いかけて彼女の顔を見る……と、彼女は相変わらず自信満々なその紅い瞳を細めて笑う。


「………出来る、の?」
「やれなくはないけど。」


じゃあやって。と言いかけて言葉を飲み込んだ。真っ直ぐ私を見る目紅い瞳は何かを含んだ色をしていて、やがて彼女はそれを言葉にする。


「君がキスの一つでもしてくれたなら。」


冗談めかして言う言葉とは裏腹に、私を試すような本気の瞳。心底嫌気がして自分の腕を強く掴む。それを見て楽しむように「どうするの?」なんて。綺麗な顔をして笑う目の前の犯罪者は、ゲームでもしてるかのように楽しそうで。


「私はどっちでも良いけどね。」


デジタル盤の時刻がは30分を切っていて。躊躇ってなんていられなかった。私は彼女の襟を掴んで自分の側へと引っ張る。本当に触れるだけのキス。唇に触れた柔らかくて温かい感触。


「これで良いでしょ。」


早くやってよ、と。目の前で心底驚いた顏をした彼女に、あてつけるように唇を手の甲で拭ったのだった。










テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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