missing-18

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「ごめん…なさい……」


どうしてこんな事に。なんで。どうして。言葉にならない悲鳴が、痛みとなって体中を走る。まるで容器が割れて溢れだしたような記憶。どうしてもっと早く思い出さなかったんだろう。彼女はどんな気持ちで居たんだろう?

どうして。


「…………ッ」


どうして “約束” を守ってくれなかったの?フェイトちゃん──…















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彼女を初めて見かけたのは、雪の降る寒い日だった。路地に倒れた女の子。寒さに震えながら顔を真っ青にして、潜めるように息をしていた。綺麗な金髪のその奥、苦しそうに喘いでいたその子の瞳は綺麗な紅。一目見て、城に連れて帰ろうと決めた。今考えるととんでもなく勝手な事をしたと思う。

お城の皆にも、そしてこの女の子自身にも。




ようやく2人きりでゆっくりお話出来たのはそれから数日後の事。いつもフェイトちゃんとお話をしようとすると必ず誰か大人がついてくるし、その大人たちが決まって言う事はこうだった。


「得体の知れない子供と2人きりになどさせられません」


城の外から私が勝手に連れて来た子だ。私が勝手に従者にすると言って決めた子。予想はしていたけど、城の人たちが彼女を見る目はとても冷たかった。それがとても嫌で。フェイトちゃんが私の事をどう思っているかが気になった。もしかしたら恨まれてなんて居ないだろうか、なんて。だけどようやく2人で話してみたら、フェイトちゃんは無関心そうにしながらもちゃんとお話してくれて心底嬉しかった。


それはまだ私が13歳の頃のこと。



それからすぐ後、城に対してやっぱり嫌悪感を抱いて居るようなフェイトちゃんの態度が少し変わった。というか良く笑うようになってくれた。生活に慣れてくれたっていうことなら良いんだけど。


「フェイトのやつ、数値が高いのね。道理で動きも学習も早い。」


近衛であるアリサちゃんがそんな話をしたのは、さらにその数か月。


「……ふぇ?」
「知ってて連れてきたわけじゃないの?」
「…何の数値?」
「魔力。あの様子だったらすぐにうちの隊で引き取れるわ。」
「そ、そうなんだ。」
「挙句に学習態度も随分良くなったし、こういうのもなんだけど周りの態度もちょっと変わったわね。良いのか悪いのか、分からないけど。」


アリサちゃん曰く、話はこうだった。フェイトちゃんの学習能力の高さ、魔力値の高さ、それらに周りの態度が少し変わったってこと。つまり中傷的な態度が一変、城の中には彼女が成長するにあたって手のひらを返すような大人たちが多かった。情けないことに。とはいえ、当の本人は全く気にしてはいないみたいだけど。


「あとどうでも良いかも知れないけど」
「ふぇ?」
「あんたの侍女達が、夜な夜なフェイトを部屋に誘ってる。」
「………ぇ?」
「見た目もあんなだし、フェイトも断らない性格だから。」
「そ…そうなんだ。」


それから「どうでも良いだろうけど」なんてそんな付加情報。侍女って言えば私と同い年の子も居ればもっと年上の人も居る。彼女を部屋に誘ってどうするのかなんて私のあずかり知るところではないし、私は彼女に何かを思う立場ではない。もともと私が勝手に彼女をここに住まわせたのだから、あとはフェイトちゃんの自由。…のはずなのだけど。

だけど、ちょっとだけ。ほんのちょっとだけ面白くないなんて。こんな気持ち、良くないと思い消し去るように首を振る。アリサちゃんはそんな私を怪訝そうな顔で見ていた。初めて抱いたもやもやする気持ちがこの時はまだ何なのか分からなくて、ちょっとだけ憂鬱な時期を過ごしたのでした。




















フェイトちゃんへの気持ちを自覚したのはそれから3年くらい過ぎた後のことだった。元々薄々感づいては居た自分の気持ち。それを認めたくなかっただけなんだけどね。


「なのは、よく眠れた?」


おはよう、なんて上機嫌に部屋へやって来たのはフェイトちゃん。このころになるともう城の中で彼女に物を言えるのは私か、或いは近衛の皆くらいなもので。とはいえそれって単にフェイトちゃんが近衛の隊に入隊したから階級が一気に上がったって事もあるんだけど。もちろん実力が物を言う方が強いけど。それから少し前、彼女は私の側近になって私の身の回りの事は彼女がやってくれることになった。だから、城の中で一番私に近い、ともいえる。


「おはようフェイトちゃん。」


部屋へとやって来たフェイトちゃんはさらりと今日の予定を告げると、私の着替えを手伝ってくれる。毎回毎回「一人で出来る」って言うんだけど彼女は手伝う事をやめたりはしなかった。


「……怪我、したの?」
「ん?えっと、大したことないよ。」


不意に見つけた腕の包帯。時たま彼女は怪我をすることがあった。痛みに鈍感なのか、あまり気にしないのか。防げる怪我も絶対あると思うんだけど。

彼女は近衛であると同時に、時たま外の戦いに駆り出される。無理強いされて行くわけではなくて、フェイトちゃんが進んで手伝いに行くらしいのだけど、私は正直言うと私はあまりそれをして欲しくはない。けど、やめてとは言えない。


「あんまり怪我しないでよね…?」
「うん。気を付けるよ。」
「はぁー…、どうだかなぁ。」


深く溜息を吐くとフェイトちゃんが小さく苦笑した。


「少しくらい私の力分けてあげられれば良いんだけどなぁ。」
「……冗談でも、そんな事言っちゃ駄目だよなのは。」
「…ごめん。」


諭されてもう一度息を吐く。私の力、それは治癒力を差すけれど唯の治癒力の話ではなかった。不老不死、っていうのかな?永遠の命という大きな力。らしい。私が不老不死とか、そういうわけじゃなくて。厳密にはそれを与える力。何がどうして私の中にそんな力があるのかなんておおよそ見当もつかないし信じてなくはないけれど、ちょっぴり嘘くさいとも思う。とはいえ、そんな力を持っているために、私は今までそこそこの苦労をしてきたと思う。主に大人たちの対応だとか、諸外国の事だとか。狙われることがあるって言ったら分かりやすくて簡単だけど。

フェイトちゃんが外への仕事を志願したのはそういった相手を討つため、らしい。ひいては私を守る為らしいのだけど。本音を言えばあまり遠くには行って欲しくない。


「ところでフェイトちゃん、最近侍女の子たちとは遊んでないの?」
「……何の話?急に。」


難しいことを考えるのはやめて、不意に浮かんだそんな質問。言葉にしてから失敗したと眉を寄せるけれど、フェイトちゃんは私が怒っていると少し勘違いしたのかちょっとだけ視線を泳がす。

フェイトちゃんは子供の頃から綺麗だったけど、成長するにあたって急に格好良くなった。背も急激に伸びて私をとうに追い抜いてしまったし。腰でまとめている長い金髪もとても綺麗。何より顔も整っているし、戦えば強いし仕事もできるしそりゃあ城の中でも大層な人気だと思う。


「皆が言ってたから。ごめん、変な事聞いて。」
「……遊ぶって言っても変な事してるわけじゃないよ?」


変な事ってなに?とは聞かずに適当に「そうなの」とか返す。これじゃ何だか彼女の行いを責めているみたいでちょっと嫌だ。


「なのはが嫌なら、もうしない。」
「え?」


その言葉に顔を向けると、ちょっとだけ笑うフェイトちゃん。


「なんで?」
「何でって?」
「……えと、なんでそんな事言うのかなって。」
「なのはが嫌な事はしないから。」
「…なにそれ。」
「だから、ちゃんと側に置いてよ。」


脈略のないそんな言葉。子供っぽくそう言うフェイトちゃんはなんていうかちょっと忠犬だとかそういったものを連想させる。以前アリサちゃんに「フェイトはなのはのことしか考えてない」とか言われた事を思い出した。


「そ、そりゃ勿論そうだけど。…でもフェイトちゃんには自分の人生があるでしょ?」


自分で言って、ちょっと嫌になった。


「私の人生って?」
「だから、えーっと…結婚したりとかそう言うの。そうしたら自分とか家庭のこと優先しなきゃだめだよ?」
「……私結婚とかする気ないよ?」
「そうなの?」
「うん。だってそうしたらなのはの側にいれないし。」
「………。」


真っ直ぐそんな事を言うフェイトちゃんに時たま照れる時がある。というか恥ずかしい。もちろん他意はないって分かってるけど。それでも。


「……でも。」


言いかけて、ちょっとだけ声のトーンが下がった。


「なに?」
「私は…結婚するよ…?誰かと。」


フェイトちゃんじゃない誰かと。そう言葉にした瞬間、想像した瞬間言葉が喉が詰まる。そう遠くない未来、私は意に染まぬ相手と婚儀を挙げなければならない。それが私の使命。たとえ本心に、願った相手が居たとしても。


「知ってるよ。」


けど、フェイトちゃんは優しい顔でそんな風に言った。ほんの少し大人っぽく私の前髪を撫でる。


「それでも、私はなのはの側に仕えたいと思うんだけど、良いかな?」


何の迷いもない綺麗な瞳。優しくて暖かくて、少し悲しい。


「フェイトちゃん、本当に結婚しないつもり?可愛い子いっぱいいるのに。」


そんな悲しさを紛らわす様に冗談っぽく言うけれど、フェイトちゃんは微笑を浮かべたままで私の髪を撫でる。


「なのは以上に大切に思える人って多分現れないと思うから、良いんだ。」
「………な、なに…それ。」


フェイトちゃんの言葉に小さく笑う。と、フェイトちゃんも子供っぽい笑顔を浮かべて言葉を続けた。


「一生なのはに仕えたいってこと。」


ひしひしと真っ直ぐ伝わる想い。それに応えられないのがとても辛かった。どんなに彼女が想ってくれていても、どんなに彼女を想っていても言葉に出来ない。私たちはそういう運命。






ただただ、それが悲しかった。











Continue...







テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
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なのフェイ信者ですw
初心者ですが宜しくお願いしますorz
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