missing-19

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なのはの従者として過ごしていた私の所に、ある日アリサがやって来た。アリサが私の部屋にやってくるのはとても珍しい事で。だけどその日私の部屋に来たアリサの面持ちは何処か暗かったのを覚えている。









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「フェイト、聞いた?」
「もうとっくに知ってるよ…。先になのはに聞いたから。」
「……そうなの。じゃあ、話は…早いわね。」
「なんでアリサが泣きそうな顔してるの?」
「別に。」


最初にその話を教えてくれたのはなのはで。なのはは恐らく私に一番最初に教えてくれたんだろうけど、次いで私にその事実を教えてくれようとしたのは近衛騎士の隊長であるアリサだった。


「もしかして、なのはの婚儀が決まったから心配してくれたの?」


くすっと笑ってそう言うと、アリサはちょっとだけ眉を寄せた。


「あんた、何も思わないの?」


なのはの婚儀が決まったのは、私が17になった年だった。

なのはの持つ特別な力故に、様々な考慮を重ねて先延ばしにされていた事。それが、決まったらしい。相手はなのはの倍くらい年上の何処かの国の王だと聞いた。

何も思わないかと言われたら決してそんなことはない。ただ、それを言葉にしようとは思わない。それがなのはの望むことだから。


「何とも思わないわけないじゃない。」


自室の窓辺にもたれて窓の外へと目を向ける。外には綺麗な白い雪が舞っていた。


「……なのはが望むなら、私は何かしようと思うし、なのはが望まないなら私は何もしない。このままなのはが婚儀挙げて他所の国に嫁ぐなら一緒についていくだけ。」
「なんでそんなに落ち着いてられんのよ。」
「なのはがとても落ち着いてたから。」
「……。」


私に、自分の婚儀とその相手が決まったと教えてくれた時のなのはは泣きそうな顔をするでもなく、嫌そうな顔をするでもなくただ落ち着いて真っ直ぐな瞳をしていた。これがなのはの意に染まぬ婚儀だという事を分かれぬほど、私だってばかじゃない。けれど。


「これはなのはが決めた事だよ。アリサ。」


勝手に大臣とかに決められたものではない。親王に決められたことでもない。なのはの持つ強大な魔力と力を隠せる場所を選んだだけだ。なのはが、国の為に決めた事。


「それだったら、私は何も言えないじゃない?」


なのはが望むことが私の望むことだからと笑うとアリサは何とも言えないような顔をして、小さく舌を打つ。近日中にこの国を訪れると言うなのはの婚約者と、近々顔を合わせる事になるだろう事を告げると、アリサは何か言いかけて、だけど小さく溜息を吐いて「分かった」とだけ告げた。


「心配してくれてありがとう。アリサ。」
「……なのはの気持ちも、あんたの気持ちも。」
「うん?」
「距離が近い私達には手に取れて分かるから、時々それがちょっと嫌になるわ。」


そう文句を零したアリサに苦笑。


「そんなに分かりやすいつもり、ないんだけどな。」
「何年一緒に居る所を見て来たと思ってるのよ。…ったく。」
「最初は私の事ボロ雑巾みたいに言ってたくせに。」
「うるさい。」


小さく笑うとそこに、話合いを終えたなのはがはやてとすずかを引き連れて私の部屋へやって来た。なのははちょっとだけ疲れた顔をしているような気がして、何となくそれに気が付かないふりをした。気付いて欲しくないのだろうと踏んで。


「お、アリサちゃんここにおったんやね。じゃあ、私ら今後の検討してくるわ。」


なのはちゃんはフェイトちゃんとゆっくりしてて。なんて、私とアリサの姿を見たあと、なのはにそう言ったのははやてだった。


「今後?」


はやての言葉に首を捻ると、答えをくれたのは後ろに立っているアリサ。


「そうよ。婚儀の護衛から嫁いだ後の護衛まで近衛の役割。」
「…なら私も一緒に──…」
「いいからあんたはなのはの面倒みときなさい。」


来ても話し合いには役に立たないから、なんて言い捨ててアリサとはやてとすずかが部屋を出る。単に気を使って2人にしてくれたのだと思うけど。なのははそんな3人の気遣いを知ってか知らずか。気付かないなんて事はないと思うけど。


「あーあ。」


なんて一国の姫らしくない大きな伸びをした。


「紅茶でも飲む?」
「うん。貰おうかな。」
「じゃあ茶葉を……」


取ってこなきゃね、と部屋を出ようとして阻止された。服を掴まれて。


「いいよ、別に。」
「でも私の部屋のやつだと安い葉しかないよ?」
「いいよ、それで。」


ベッドに腰かけて、なのはは行儀悪く体を横にもたれ掛けてそう言った。ので、私も「それなら」なんて黙って紅茶を淹れる。安いから普段なのはが飲んでるようなものとは比べ物にならないほど香りも味も劣るだろうけれど、なのははそんなのお構いなしに「美味しい」と言ってくれた。

それから程なくして、部屋には沈黙が流れる。


「……決まっちゃった。」
「うん。」
「自分で決めたんだけどね?」
「うん。」


沈黙の後、聞いてほしいのか、或いはただの独り言なのかなのはは笑ってそう言った。私はただ「うん」とだけ返すだけで。


「フェイトちゃん、一緒について来てくれる?」
「なに、今更。」


勿論と笑うとなのははちょっとだけ困ったように笑った。


「……ごめんね。」
「うん?」


何に対してのごめんなのか、なのはは小さく謝罪を口にする。


「フェイトちゃんの人生、私が縛っちゃったね。」
「まだ言ってるの?良いのに。そんなの。」


幼い頃に私を王宮へと連れてきてしまった事をどうやら悔いているらしいなのはは私が「気にしないで」と言ってもほんの少し顔を伏せたままで、私はそんななのはに小さく息を吐く。


「なのは。」
「ん?」


顔を見ないままで声だけで返事を返すなのはに。


「私ね、なのはにここに連れて来て貰えて本当に良かったと思ってるよ。」


そうと言えばなのはは私の言葉にちょっとだけきょとんとした顔を向けた。


「あのままだったら死んでたし。それに。」
「…それに?」
「私はなのはに生きる意味を貰ったから。」
「なに、それ。」


あの日あの時、生きる意味もなくただ孤児として道端で死にかけていた私を救って、温かい手で触れてくれた。私の手は誰かを守る為にあると笑って教えてくれたなのはに、私は生きることを許されたような気さえした。


「この手は誰か大切な人を守る為に。」


そう言うと、なのはは一度だけ瞬きした。


「そう言ってくれたのはなのはだから。」


だから、なのはを守る為にこの命を使いたい。生涯なのはの側に居たい。


「後悔しない?」
「しないよ。きっと。」
「そう。」


なのははそれ以上何も言わなくて、私はほんの少しだけなのはの触れられたくない部分に踏み込んだ質問をした。こんな事を聞くのはきっと最初で最後。


「なのは。」
「なぁに?」
「なのはこそ、後悔しない?」


何に、とは言わない。言えばきっとなのはは怒ると思ったから。だけどなのはは私の言葉に一瞬動きを止めた。顔は私の方を向いていないから、いまどんな顔をしてるかは分からない。だからかな、気が逸るのは。


「もし。」


もしもなのはがこの婚儀を望まないなら。もし。なのはが私に命じてくれるなら。自分の胸の奥に沈んでいるほんの少し願望染みた考え。或はただの願望。


「もしも、なのはが──…」


私に、なのはを連れて逃げてと命じるのなら。私は何処までも逃げおおせる自信がある。なのはを連れて。けれど本当は知っていた。なのはがそんな事、望むはずがない事を。


「………。」


私の唇に添えられた白く綺麗な人差し指。その主は、とても悲しそうに困ったように微笑を浮かべて私へと顔を向けていた。


「それ以上は言っちゃダメ。」
「……。」


とても悲しそうな声。


「…うん。ごめん。」


自分が間違った事をしたと小さく謝罪する。心を決めたはずなのに、一瞬揺らいでしまった感情に静かに蓋をする。これ以上何も言わないように唇をきつく閉じた。


「フェイトちゃん、紅茶おかわり貰っても、いい?」
「……もちろん。」


なのはと私の、果ては皆の、暗黙の了解。私となのはは触れ合えない。どんなことがあっても、絶対に。なのはがそれを許さない。拒絶ににじませた悲しそうな顔。そんな顔をさせてしまった事を、とてもとても後悔した。



なのはは私に言葉をくれない。暖かい眼差しと、感じる想いをくれるけれど、決して言葉にはしない。「好き」とは言わないし、「愛してる」とも言わない。そもそもなのはが本心で私をどう思ってるかなんてわからないし、思い違いとか自意識過剰とかそう言うのもあるけれど。だけど。


傍らに立つ私にほんの少し寄り添って身を預けるなのはが、私はとても愛おしかった。言葉が欲しいわけじゃなく、想いが欲しいわけでもなく。ただ、私が彼女の側に居たかっただけ。守りたかっただけ。



だから、私は。生涯、私を許さないと思う。













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テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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なのフェイ信者ですw
初心者ですが宜しくお願いしますorz
あと、一応リンクフリーです(^^);

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