missing-23

さらに続き。


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「───…」



ふと目が覚めた時、私は一瞬夢の中に居るのかと思った。けど、次の瞬間にはそんなはずがないと、気が付いた。目の前に広がる光景。血だらけの自分の衣服と、目の前に転がった血に濡れた剣。


「なん、で」


倒れているなのはは、そのままで。アリサもすずかもはやても。だけど私だけが生きていた。確かに私は、あの時間違いなく自分に剣を突き立てたはずなのに、どうしてか。どうしてか私は生きている。怪我をしているわけでもなく、確かに刺したはずの腹部には傷ない。否、消えかけていた。じわじわと再生するその箇所。自分の中に感じる彼女の魔力。


「………なんで。」


その箇所を見て、静かに笑った。涙交じりに、くしゃりと前髪を掴む。昔聞いたことがある、とある話。思い出して、なのはの側に寄った。死のうと思ったのに死ねなかった。理由があるとしたら、私は一つしか知らない。昔聞いた話。


不死の力。


想像すらした事がなかった。欲しいとも思わなかった力。彼女だけが誰かに与えられると言う力。ただの噂で、半分は疑っていたようなそんな力。


「どうして」


問いかけても返事はない。それでも問いかけずにはいられなかった。何故、と。なのはが居ない世界に、私が生きる意味はないのに。どうして、そんな力を私に与えたのか。もしかしたら偶然、たまたま生きているだけかもしれない。先程剣を突き立てた箇所が急所じゃなかったのかもしれない。だけど。そうは思えなかった。


「酷いよ、なのは。」


なのはが私にそんな力を与えたとしか思えない。私に生きろというのか。それも永遠に。それは、私にはあまりにも酷だった。なのはも、皆も居ない世界で一人永遠に生きろと言うのはただの拷問に近い苦しみ。


「嫌だよ。私──…」


生きていたくない。彼女の居ない世界で、存在しなくてはいけない意味を見いだせない。どうすればいいのかすら分からないというのに。どこまでも一緒に連れて行ってくれないなのはの頬に触れた。ほんの少し冷たい頬。こんな事なら攫って逃げてしまえば良かった。嫌がられても、どうしても。そうできなかった私が悪い。最後まで守ってあげられなかった私が悪い。


もう二度と、なのはには会えない。


ジリジリと胸が焦げる。どうにも取り返しのつかない事態に、頭の理解が追いつかなくて息が詰まりそうだった。誰も居ないこの世界でどうしていいのか分からなくて、気が付くと頬が濡れていた。視界は滲んでなのはの顔さえよく見えなくて。いつも叱ってくれるアリサも、笑ってどうにかなるって言ってくれるはやても、優しく安心させてくれるすずかも、誰も。仇さえとれていない。


そんな中。不意に、思い出したのはあの男の言葉。



───僕はその時にまた会いに行くとするよ。



その時に?あの男は、その前になんて言っただろうか。



───その子は数百年、或いは数千年後にきっと転生するだろう。



転生する。なのはが。長い時の末に。その時にもう一度あの男が、来ると。そう言った気がする。ジリジリと焦げる。焦燥感にも似た、憎悪と怒り。もう一度あの男はなのはをこんな目に合わせると言うのか。


「……そんな事…。」


させない。絶対に。今度こそなのはを、皆を守ると、血が出るほどに強く唇を噛んだ。二度と彼女に触れさせるものかと。次の瞬間には自分が何をするべきか、すぐに理解した。ゆっくり立ち上がって、魔力を展開する。


なのはが転生すると言うのならその時期に合わせて皆を転生に導かなくてはならない。自分一人でそんな事をしていいのかどうかなんてわからないけど、自分の中に感じる魔力があれば容易く出来ると思えた。自分の中に感じるなのはの強大な魔力。愛おしい力。


「勝手に、ごめんね。皆。」


返事がないと分かっていながら小さく謝罪した。そのまま皆を転生に導くよう術を掛けて、ほんの少しだけ記憶を弄った。思い出さないように。今日の日の事を。忘れるように。辛い記憶を。それはなのはには特に強く、記憶封印の術を掛ける。出来るならなのはには普通の女の子として過ごしてほしい。出来るならすべて忘れて欲しい。この国の事も、私の事も。


「………ちゃんと今度は見守ってるから。」


だからまた数百年、あるいは数千年後にもう一度。


「ずっと、君が好きだよ。」


永遠に。


巨大な魔方陣を展開しながら、そう静かに独り言のように囁いて。私はその日、皆の記憶を奪った。そうしてなのはが転生する時代に合わせて皆の魂を転生させるように仕組んで。ほぼ禁忌にも思えるような術を使って。


その後の事は正直よく覚えていない。私もそのすぐ後に時間跳躍の魔法を使ったから。何年、何十年、何百年という時を越えて、彼女の生まれる時代を探した。それしか頭になかった。狂ったように時を越えて。






そうして──────…












静かに目を開く。

周囲に感じる魔力に、どうやら結界をはられているのだと気づく。ゆっくりと息を吸って、現在の自分のいる場所を静かに把握する。思うに、恐らく、ここはなのはの住むマンションだろう。長い夢を見て、現代に生きているなのはを見つけた時のことに思いを馳せる。


とてもとても、長く苦痛にも思えた日々は彼女を見つけた瞬間に、もうどうでもよくなった。私にこんなものを与えた彼女を恨んだと言ったらそうだし、でもそれは愛していたからの裏返し。おいて行かれたことが寂しくて後を追わせてくれなかったなのはに、何度も「どうして」と思ったけれど。


そんな思いはすぐに消えた。


もう一度なのはに、彼女に出逢えたことが最高の幸福。
きっと私は長い時の末に、狂ったのだろう。彼女に。それでも良かった。





「………目は覚めた?」


静かに。横になっている私の視界に入らない位置からの声。相手はアリサで、僅かに怒りを孕んでいるような声だった。恐らくなのはに記憶が戻ったことで、なのはの話を聞いたか、或いは自分で気づいたか、そんなところだろう。

どちらにせよ怒られる要素は沢山あるわけで。


「うん。」


少し返事を戸惑って、小さく返した。するとアリサは小さく息を吐いて「そう」とだけ呟いて。寝ている私のそばに寄る足音。見なくてもなんとなく分かる、壁に寄りかかっている姿勢から歩いてくる姿。昔から変わらない動作だと思う。


「あんた、本当馬鹿ね。」
「……うん。」


変わらない憎まれ口。とてもとても懐かしい言葉で、泣きそうになったのがばれないように少しだけ鼻で笑ってそう頷いた。最後まで誰にもバレずに綺麗に片付けたかったのになと、一人で情けなく思う。

まだやる事は残っているから、みんなに気付かれてしまったなら尚更、早く片付けなくてはとベッドから起き上がった。もう一つの秘密に気付かれる前に決着をつけなくちゃと。


「なのはは──…」


様子を伺うように視線を向ける。いつの間にか着替えがされていて、けれど気にしない素振り。


「休んでるわ。泣き疲れたみたい。」
「…そう。」


泣かせてしまったのかと、ちょっと苦笑した。きっとなのはのことだから、私のことを思って、自分を責めたりしたんだろう。彼女が気を失う前に散々「ごめんなさい」と言っていたことを思い出して胸が痛んだ。


「まだ動かないほうがいいわよ。治癒魔法なんて、いくら不死身でも体にダメージがないわけないんだから。」
「うん。」


それでも返事をしながら、ベッドから下りる。一瞬目が回ったような感覚がして、歯を食いしばって悟られないように静かに息を吐く。アリサは「分かってるならおとなしく休んでなさいよ。」なんて小さく憎まれ口を叩いた。


休んでる暇はない。


数回、数十回、或は数百回に渡る時間跳躍という膨大な魔力を使う禁忌に近い魔法をしようした私の体は、いくら永遠を命を与えられていてもいろんなものを消費して、殆ど壊れかけに近い。拍車をかける自己回復の治癒魔法を複数回に渡って使用して。アリサがさっき言った通り、体にダメージがないわけがなかった。

何度も感じている体の違和感。いくら永遠と言っても、限度がある。おとなしく過ごしていれば或いは永遠に近い年数を生きられるのかも知れないけど。だいぶ無理をした私にはそこそこ限界が見えてきていた。それもそう遠くはない限界点。


「……悪いんだけど、アリサ。」
「ん?」
「私、行かなきゃいけない所があるんだ。」


きっと私は、そう長くはもたない。


「は?そんな体で何処行くのよ!ってかまだ話は終わってないのよ!」


なのはが起きるまで大人しく待ってなさい、なんて言うアリサに背を向けたまま、無視したまま閉められていた窓を開けてベランダへと出る。言葉ではそう言うけれどアリサは強引に私を止めようとはしなかった。幸いなことに。きっと力では、今の状態では負けるから。


「悪いんだけど、もう少しだけなのはの事……お願い。」


言い残すようにして、一歩足を進めた瞬間に。背後で静かに戸が開く音がしたことに気が付いて、しまったと小さく唇を噛む。気配とか、空気とかそういうもので彼女が部屋に来たことに気付いてしまったから。


「どこ、行くの…?フェイトちゃん。」


少し儚げでいて、凛とした声。真っ直ぐ感じる視線。言い逃れを許さなそうな、少し前までと雰囲気が違う彼女の気配に観念して目を閉じる。


それから一拍置いて、ゆっくりと振り返った。



振り返った先、そこに居たなのはは泣き腫らしたような、だけど芯の強い真っ直ぐな瞳で私を見ていた。















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テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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なのフェイ信者ですw
初心者ですが宜しくお願いしますorz
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