missing-24

('ω')みっしんぐ。

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全てを思い出した今。永遠に近い時を彼女に押し付けてしまったことへの罪悪感。ずっと一人で戦ってきた彼女への悲しみ。湧き上がる感情は、そんなものだった。




「なのは、大丈夫?」
「うん…ちょっと、頭が混乱してる、けど」


大丈夫、と続ける。ノックもなしに部屋の戸を開けてしまったのは少しだけ申し訳なかったかもしれない。けど今はそれどころではなくて、目の前の消えてしまいそうな儚い背に。


「どこ、行くの…?フェイトちゃん。」


咄嗟に言葉が漏れた。そんな体で何処に行くの?と。

観念したように振り向いた彼女は、ちょっとだけ困った顔。記憶の中にあった彼女より少し大人びた表情に胸がちくりと痛む。きっとこんな顔をするようになったのは私のせいだ。今までもこんな顔をしていたのに、記憶を取り戻したあとでは、とても違って見えた。彼女は長い時間の中をきっと孤独に生きてきた。皆が居なくなってしまった後の彼女のことを考えると、とても胸が痛い。


「……ごめん、なさい。」


何も言わないフェイトちゃんに言えるのはそんな言葉しかない。意図的にではないにしても、あの時、前世の私が死に瀕したときに願った「死なないで」という一言が彼女を千年も縛りつけてしまった。

彼女に「永遠の命」という呪いをかけた。死ぬことも許されず孤独に、あんなに激しい自己修復を繰り返して。


「怒ってる、よね?」


なのに出てくる言葉はこんな言葉しかなくて。あんなことをして彼女がどう思ってるのかが怖かった。それ以上に彼女が恋しいと羨望する自分も居て、急にたくさんのことを思い出したせいもあって多分混乱してるんだと思う。

恨まれても詰られても仕方がないことをした。今はもう私はお姫様ではないし、彼女は騎士でも何でもない。嫌われて愛想をつかれても当然のことだ。なのに彼女は、少しだけ困った顔で微笑したままで。


「なのは…。」


ベランダに立った彼女は風を受けて、今にも消えてしまいそうなほど儚く見えて、咄嗟に駆け出す。そんな私に驚いたフェイトちゃんは、伸ばした手から逃げることもせずただ触れて、私の伸ばした手を取って笑う。薄く、淡く。


「怒ってないよ。なのは。」


少しだけはにかんだような笑み。近くで見ると少し痩せたように感じる彼女は、私の手を取ったまま眉を少しだけ寄せた。


「思い出しちゃったんだね。全部。」
「………ふぇいと、ちゃん。」
「アリサも、すずかも、はやても。」


部屋にいる皆に言うように笑う。


「騙してごめんね、はやて。」
「……ん。」
「少しだけ記憶をいじったり、都合よく記憶を残したり。その辺は本当に。」


どうしてこの目の前にいる彼女はこんなにも儚く見えるんだろう。私の手を取る体温も低い。不死身に近い彼女がこんなにも儚く見えることがとても不安で、だけどそんな私の不安に気が付いたのか、フェイトちゃんは私と目が合うと「最近寝不足でね」なんて笑って、ゆっくりと手を離して。

離された手が、宙を彷徨った。


「なのは。あのね。」


さらりと私の前髪を撫でて、優しい顔をしたフェイトちゃんは続ける。


「こんな力を突然もらって、皆が死んじゃった時、辛くて悲しかったりどうしてって…そう思った時もあったんだけどね。」


そんな言葉に胸が痛んだ。

当然だと思う。私がしたことを考えれば、フェイトちゃんが私を恨んだり詰ったりするのは至極当然。だけど覚悟していた私に、彼女はそれをしなかった。


「でも、やっぱり。」


代わりに、優しく頬を撫でる細い指。


「もう一度君に逢えたから、良かった。ずっと待ってて良かった。今の私には、なのはにもう一度逢えたことがこの上なく幸せで、だから…なのはが謝る事なんて何もないんだ。」


どこまでも優しい声。


「むしろ謝るのはきっと私の方で、私はずっと後悔してた。」
「なに…を?」
「あの日、あの夜側に居なかったことを。今でも夢に見るくらい、後悔してたんだ。なのはを、守れなかったこと。」
「そんなの!違うよ、だってあの時──…」


あの夜、フェイトちゃんが私の側に居なかったのは私のせいだ。そんなことをこの長い間夢に見るほど後悔していたなんて。そんなの。


「フェイトちゃんのせいじゃ、ないよ。」
「うん…。」


頬を伝う私の涙を指で拭いて、フェイトちゃんはちょっとだけ困ったように苦笑した。


「だからね。もう、嫌なんだ。誰かに、何かを奪われるのは。」


とん、と足を鳴らして辺りに展開した魔方陣。

半歩下がって私と距離を置くフェイトちゃんは「まだやり残してことがあるから」なんて笑う。相変わらず儚い笑みに見えて、咄嗟に彼女を捕まえようと手を伸ばす。


「ふぇいと、ちゃ──…」


けれど


その手は届かなくて。拒絶するような魔力光に弾かれて、私はベランダにしりもちをついた。私を見ていたフェイトちゃんが少しだけ悲しそうな顔をして「ごめん」と言って。少しだけ微笑して。


「これが全部解決したら、今度は一緒に居られるから。身分も何も関係ないこの世界で、そうしたら───…」
「フェイトちゃんっ!!!」


光に包まれる中で、手を伸ばしても届かなくて。
彼女の言葉は最後までは聞こえなかった。














「……ったく、あのバカ。」


眩しいほどの光と一緒に消えた彼女がさっきまでいた場所を向いてベランダに座り込む私に手を差し出したのはアリサちゃんで、アリサちゃんは少しだけ怒ったような顔。


「私らが動けないように拘束魔法をかけるなんていい度胸ね。」
「拘束…?」
「私たちに止められると思ったんじゃないかな?フェイトちゃん、そういうところ結構用意周到だよね。」
「少し痛い目見せんとあかんね、フェイトちゃんには。」


何食わぬ顔で皆に拘束系の魔法をかけていたなんてさすがというかなんていうか、そういえば彼女はそんな性格だったかもしれない。思い出して、少しだけ頬が緩んだ。どうしようもなく押し寄せる後悔と、行ってしまった彼女を追いたいという切望に近い気持ち。止められなかった悔しさ。


「……フェイトちゃん、絶対何処か変だと思う。」
「あいつが変なのはいつもよ。」
「そうじゃ…なくて。身体…痩せてたし、それに。」


あんなに何度も自己修復機能を使っていたら絶対何処かが悪くなる。


「永遠の命なんて本当に永遠かどうかなんてわからないもの。」


あるかどうかも良くわからなかったような力だもん、絶対何かデメリットもあるはず。何となく。嫌な予感がした。確証はないけど、だけど確信に近い予感。


「……私ね。」


懺悔してもし足りない、後悔の念。皆は黙って言葉の続きを待つ。


「フェイトちゃんにとても、とても酷いことしたの。」


誰も口にしないけど、もうとっくに気が付いていること。彼女を、不死の生き物にしてしまった。呪いに近い魔法をかけてしまった。彼女に、とんでもないものを背負わせてしまった。許されるとは思ってない。許されるようなことだなんて思ってないから。だけど。もう一度逢えて幸せだと、そう笑って言ってくれた彼女。


「なのはが悪いわけじゃない。」


声を小さく震える私に、そういったのはアリサちゃんで。


「フェイトちゃんが何を考えてるのかなんて、良くわからないけど。」
「……まぁ、何となく想像がつくなぁ。」


なんてったって私ら前世からの付き合いやし、なんて笑うすずかちゃんとはやてちゃん。


「……うん。」


彼女はきっとあの人のところに行くだろう。そして多分、決着をつけようって考えてるんだと思う。たった一人で。

そんなこと。


「そんなこと、させない。」


ずっと一人で何もかもを背負って生きてきた彼女を解放してあげたい。私が彼女に与えた呪いを解きたい。ただ彼女の側に居たい。何も言わなくても私の気持ちをすべて分かってくれる皆。


「追っても、いいかな?」


そうとだけ聞いた私に、「当たり前でしょ」なんて言って。消えた彼女の魔力の跡を辿る。多分、追い付いた先が決着をつける場所。


「……フェイトちゃん。」


静かに彼女の名前を紡ぐ。いろんな記憶が私の体を巡って、自分なのに自分じゃない感覚がしたり、とても不思議な感覚。

だけど、これだけは確かな感情。

彼女が愛おしい。


幾年前からずっと、ずっと抱えてきたこの感情はやっぱり微塵も変わっていなくて。





綺麗に儚く笑った彼女の顔を思い出して、小さく自分の腕に爪を立てた。














Continue...
























テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
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なのフェイ信者ですw
初心者ですが宜しくお願いしますorz
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