続き

またしても続き。

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さらさらと、ほんの少し春っぽい風。

とても心地よくて、風の匂いが気持ちよくて、私は深く息を吸った。この学園に来てから結構な日にちが経って、けれど私は相変わらずな日々を送っている。


吸血鬼と生活を共にするこの学園で、相変わらず守護者を見つけられていない私に、この学園の理事長であるはやては少しだけ事を急く、というか。心配してくれているのは嬉しいのだけど、私はどうしても吸血鬼と契約する気になれなくて。なんとなく、それがちょっとだけ申し訳ない気になるわけで。


「……心配、してくれるのは嬉しいんだけどね。」


それでも私はやっぱり、どうしても。


「はぁ。」


吸血鬼が、少しだけ苦手だ。

なんて、いつもの木陰で小さく息を吐いて、木の幹に身を寄せて目を閉じる。ほんの少し、淡い桃色の花のつぼみを付けたこの木の下はとても心地が良い。前に、純血の吸血鬼であるなのはが「お気に入りの場所」と言っていたことを思い出して、今更ながらにその理由に納得した。

とても落ち着く場所だと思う。誰も来ないって言うのももちろんそうだ。この学園に来てから、やっぱりはやてが少し特別扱いするからか(もっとも本人はそんなつもりないんだろうけど)吸血鬼の黒服の子たちから少しだけ興味を寄せられている、気がする。アリサとかすずかは「他にも理由があると思う」とか言ってたけど。

何人かに契約の話をほのめかされたこともある。……そんなに露骨に声を掛けられたわけじゃなくて、遠回しな言いぶりだったけど。でも、私は首を縦にも横にも振らずに、適当にやり過ごすだけ。


フェイト・T・ハラオウン。それが私の名前で、「T」の部分に当たるテスタロッサの姓はずっと誰にも教えたくはない。それは安易に、身の危険があるからっていうのが大きいのだけど、なんとなく。もう誰にもこの名前を教えたくないと思った。大切な家族との思い出のような、そんな一部のようなものを吸血鬼に教えたりしたくなかった。


「フェーイトちゃんっ」
「……なのは。」


呼ばれた先に、漆黒の綺麗な制服。黒い制服に袖を通したなのはは少しだけ襟元を緩めて「隣良い?」なんて言いながら返事も待たずに隣に腰かけた。彼女もまた、吸血鬼なわけなのだけど。


「最近フェイトちゃん、ここにいること多いよね?」
「ん?…そうかな?」
「割とよく居る気がするなぁ。」
「あー…ここは、なんていうかほら。誰も来ないから。」


だから落ち着くんだよね、なんて笑う私に、なのははちょっとだけ頬をひと?きした。なんだかちょっともじもじと。


「それって私のせいかも。」
「え?」


なのははちょっと言いにくそうに笑う。どうやらなのはもまた一人になりたい場所で。だから他の吸血鬼は不用意に近づかないらしい。


「……そうなんだ。」
「吸血鬼ってそういうの結構重んじるから。」
「私はありがたいけどね。誰も来ない方が。」
「フェイトちゃんモテるからなぁー。」
「はやてが何度も私の事呼びつけるから目立つのかな。」
「…それだけじゃないと思うけど。」


絶対違うと思う、なんて言うなのははちょっと苦笑交じり。


「フェイトちゃんは気になる子とか、居ないの?」
「え?なに、突然。」
「契約するためにこの学園に来たんでしょう?」
「あー…。うーん。」


そうと言えばそうなんだけど。


「母さんとか、はやてがちょっと強引にこの学園進めてきたんだよね。」
「ふぅん。」
「クロノとかは…あ、兄なんだけど。兄はあんまり賛成はしてなかったかな。」
「クロノ君、頭固いもんね。」


くすっと笑って言うなのはに、ちょっときょとんとして。


「あれ?なのは、クロノの事知ってるの?」
「ちょっとだけ会ったことあるだけ。…でもまさかフェイトちゃんがクロノ君の妹だとは……。」


似てないね、なんて言いたそうな顔をしたなのはに今度は私が苦笑して、まぁなのはならいいかな、なんて思って。


「私、養子だからね。血が繋がってないんだ。…内緒ね。」


ちょっと苦笑してそう言うとなのはは一瞬驚いた顔をして、言葉を飲み込んで「そっか」なんて続けた。それ以上の詮索はしないでくれる事を予測して話したんだけど、それでもなのはは余計な詮索をしないでくれて、少しありがたかった。


「そういえばなのはってさ。」
「なぁに?」
「アリサに聞いたんだけど、婚約者が居たんでしょう?」
「ふぇっ…!なんでアリサちゃんそんな話を!」


瞬間的になのはの顔が真っ赤になって、ちょっと面白かった。


「あとすずかに聞いたんだけど。」
「今度は何!?」
「その婚約者の人を酷くボコボコにし──」
「ちょっと!」


本当の話だったんだ、なんて笑う私に、なのはは少しだけ睨みを利かせる。婚約者がいたって聞いたときは驚いたけど。どうやら本当の話だったらしい。それは少し前に面白半分にアリサが教えてくれた事。


「あ、あのね。」
「うん?」
「……私の家は、その。お父さんもお母さんも純血でね?」
「うん。知ってるよ。」


アリサの家もそうだけど、アリサの家はすずかの家と繋がりが強くて、だからあの二人も一応許嫁のようなもの。吸血鬼と人間の。どうやらなのはの家もそれに近いらしい。相手はもちろん吸血鬼だったそうなんだけど。


「やっぱり純血って言うとそういう血筋を守るとかどうのってうるさい人が居てね?」


ため息交じりに続けるなのははほんの少しだけ唇を尖らせて続ける。


「それで半ば強引に決められちゃったわけ。家の両親とかは断って良いよって言ってくれたんだけど。」
「それでボコボコに…?」
「あー…、違…くないのかなぁ。最終的には、その。」


よほど嫌だったのか、聞いたところによると相手の男性をそれはもう見事に伸したらしい。とても可笑しそうに話して笑ったアリサの事を思い出した。それと同時に「なのはの魔力は滅茶苦茶強いから怒らせると怖いのよ。」なんてことも教えてくれたっけ。


「それでこの学園に来たの?」
「うーん、だいたいそんな感じ。はやてちゃんが勧めてくれてね?」


要するになのはも結構な家のお嬢様、という感じなのかな?物腰もそんな感じだし、女王とか言われるにはやっぱりそういうのがあるんだろうな、なんて思う。こうして話していると、やっぱり遠くから見る印象とは違うんだけど。


「なのはは契約とか、しないの?」
「えっ?私?」
「うん。すずかが言ってた。…アリサだったかな?吸血鬼にとって、そういう相手を見つけられることって幸せだって。あ、もしかしてただの惚気だったのかな?」


なのははちょっと笑って「そうかもね」なんて続けて。


「フェイトちゃんはすずかちゃんから吸血鬼の特性とかって大体聞いてるのかな?」
「んー、そうだね。あとははやてとかが勉強しろっていうから。」
「そうなんだ。じゃあ、契約ってちょっと吸血鬼に優しくないのって知ってるでしょ?」


使役者と守護者の優劣関係。この間お風呂ですずかに聞いた話を思い出していた。イーブンに思えて実はそうでもない話。でもそれを求めるのが吸血鬼だと思ってた。なのははそうじゃないのかな?


「それってどうなのって、思ってて。ずっと理解できなかったの。自分がそういう風になる想像もつかなかったし。」


それに血には困ってないだろうしなぁ、なんて思ったけどなんだか怒られそうなので黙っておいた。


「でも…まぁ、最近はそんなに嫌じゃないっていうか。分からなくもないかなって、その──…」
「え?うわっ…」


ほんの少し恥ずかしそうにしてごにょごにょ言うなのはの声が良く聞こえなくて「え?」なんて耳を寄せようとして、ここに来るときにはやてに持たされていた携帯端末が突然震えた。持ってることすら忘れてたその存在を思い出して慌ててボタンを押す。


「も、もしもし?はやて?」
『あー、フェイトちゃん急にごめんな?』


ごめんな、なんて言いながら全然そう思ってなさそうなはやての声。はやてはどうやら私に用事があったわけではないらしく、「そこになのはちゃんおる?」なんて言って、なのはに理事長室に来るように、という言伝を私に預けて電話を切った。


「───…って事なんだけど…。」
「ふぇぇ…。なんだろ。」
「よくわかんないけど、錠剤がどうのこうのって言ってたよ。」
「あ。そういえば忘れてた…。」


行かなきゃいけないんだった、なんて渋々立ち上がって。なのはは「またね」なんて言って、理事長室へと足を運ぶ。なのはが居なくなったことで、なんとなく私も自室へと戻ることにしたのだった。



















「あぁ、なのはちゃん。」


早かったな、なんて言ってこの学園の理事長であり、友達であるはやてちゃんはにこりと笑った。はやてちゃんは私の眼前、机の上に小さい箱を取り出す。その箱の中には、ピルケースのような、小さい容器。


「遅くなってごめんな?」
「うぅん、大丈夫だよ。…ありがと。」
「いやまさかあのなのはちゃんから血液錠剤頼まれるなんて。」


血液錠剤。それは、守護者との契約をしていない吸血鬼の必需品、とまでは言わないけど、契約していない吸血鬼に広く利用されているもの。簡単に言えば血を吸う相手のいない吸血鬼が渇きを満たせるように作られた薬。薬というよりはサプリメント的な感覚。もちろんこれで皆が渇きを満たせるはずなんてないけど。もちろん本当の血の方が美味しいに決まってるし。必要な栄養が入ってるから飲むって感じ。


「……あんまり好きじゃないんだけどなぁ。」
「どうしたん?急に。」
「え?…別に。ただ、私も真剣に考えようかなって…。」


特に理由なんてないけど。なんとなく色んな子の血を吸ってきたけど、そういうのってアレかなって。なんて続ける私にはやてちゃんはニヤニヤした顔をする。


「フェイトちゃんか…?」
「違うってば。」
「そうなん?」
「うん。ただ気が向いただけ。……あ。そういえば。」


ちょっと気になっていたこと。


「フェイトちゃんって養子だったの?」
「………。」


話を逸らそうとしたこともあったんだけど、聞いてみた。別に詮索するわけでもなく、ちょっと気になったこと。私の家とハラオウンの家は少しだけ交流がある。だから、フェイトちゃんの存在は疑問がたくさんあった。私の質問に少しだけ間をおいて、はやてちゃんは「そうやよ」なんて頷く。


「そっか。ハラオウンっていうからあれ?って思ってたんだけど…。」
「そういえば桃子さんとリンディさんは知り合いやったな。」
「うん。」


私の母と、フェイトちゃんの義理のお母さんとは親しい仲。


「フェイトちゃんって、いつからハラオウン家の子だったの?」


ハラオウンの家には何度か行ったことがあったんだけど、フェイトちゃんには会ったことがなかった。不思議に思ってそう聞いてみたんだけど、ちょっとだけ部屋の空気が変わったことに気が付いた。張りつめたような、そんな感覚。私だから気が付いたのかも知れない。部屋に居たはやてちゃんの守護者であるヴィータちゃんも、シャマルさんも一瞬だけ神経を尖らせた。

私が部屋の空気の変化を悟ったことに気付いて、はやてちゃんが少しだけ気を緩める。


「なのはちゃんは相変わらず強いなぁ。」
「ふぇ?なんで?突然。」
「……部屋の空気に敏感やし、何せあのシグナムでさえ戦いたくない相手て言うくらいやし。」


そんな風に思われてたんだ。ちょっとショック。


「んで。さっきの質問なんやけど。…フェイトちゃんの事に関しては悪いんやけど、教えられん。」
「ふぇ?」
「なのはちゃんやから、これだけは教えるけど。」


ちょっとだけ目を伏せるはやてちゃんの様子から、それがなんとなく良い話じゃないことが分かった。


「フェイトちゃんは───…」





子供の頃に吸血鬼に家を襲撃されて家族を全員失った。

なんて、聞いたのはおおよそそんな話だった。だから、養子としてハラオウン家に連れていかれたって話。ここ数年でそんな事件が起きたことなんて聞いたことがない。秘匿とされた事件の被害者。それはすなわち、彼女は特殊な血脈の人間なのだと容易に想像がつく。だから、あんまり深くは聞かなかった。


知らなかった方が良かったかもしれない…なんて、ちょっと思ってしまう。それでも教えてくれたことはありがたい。彼女が容易に吸血鬼を寄せない理由が分かってしまった。その中で自分の事を、彼女がどう思っているのかが少しだけ気になった。もやもやする。

理事長室を出て、ポケットの中で通称タブレットと呼ばれる血液錠剤を握りしめながら歩く。なんとなく、フェイトちゃんの事が気になった。今頃何してるかなとか、他愛もないそんな事。


「ってこれじゃ私が何だか犬みたいじゃんっ…」


ちょっと冷静になってハッとして、頭を振る。別にそういうのじゃなくて、純粋にちょっと心配しただけ。はやてちゃんの話を聞いたせいだと思う。


「誰が犬だって?」
「ふぇっ!…あ、アリサちゃん…!こんなところで何してるの?」
「あんたの事探してたのよ。」


部屋に帰る途中で、後ろから声を掛けられてちょっとらしくない悲鳴を上げてしまった。アリサちゃんは怪訝そうな顔をして腕組をして「どこ行ってたのよ」なんてお説教。


「ちょっとはやてちゃんのところに…。」
「血でも吸いすぎて呼び出しでもされてたの?」
「違うよ。タブレット貰いに行ってたの。」


吸血魔みたいに言わないでよ、なんて言いながらポケットに入れていたタブレットを見せると、アリサちゃんの口がこれ以上ないくらい開いた。まぬけに。


「な、なのは?どうしたのよあんたが血液錠剤なんて!どこかおかしいんじゃないの?」
「なんでみんなそういう反応するかな…。」
「あんた本当にフェイトに惚れて──…」
「違うったら!もうっ!それで用事って何なの?私の事探してたんでしょう?」


私どんな風に思われてるの?なんて少し憤慨しながら、要件を急く。アリサちゃんは思い出したように手を打って、「そうそう」なんて。


「すずかが夕飯一緒にっていうから。」
「は?」
「あんたも連れに来たのよ。」


口を開けば本当にすずかちゃんの話だな、なんて思ったのは内緒。


「えー。いいよ私。アリサちゃん1人で──…」
「駄目よ。フェイトがあんたも一緒にって言ってたし。」
「えっ…」


ぐいぐい腕をつかまれて。


「しょうがないなぁ……」


すずかちゃんの部屋に行くのって久々。フェイトちゃんが来てから行くのは初めてかも知れない。なんてちょっとそわそわした気持ちで。

私はアリサちゃんに引っ張られるままに、その場所を後にしたのだった。









FIN






一気に受け受けしくなるなのはちゃんを書ききれなかった(;´∀`)


なの→→→→フェイ   みたいな距離感。


なんだけどまだまだ自分の気持ちに気付かないし認めない、みたいな(∩´∀`)∩
フェイトちゃんはフェイトちゃんで全然何も。みたいな。まだまだ。

無防備なイケメンフェイトちゃんとかちょっといいなって。
着替え中ななのはちゃんの所にうっかり入っちゃう話も良いけど。「今まで誰が入ってきても気にも留めなかったじゃない。」みたいなアリサちゃんの談とかそういう(略)
あとやっぱ血を吸いたくて「ぐぬぬ」ってなってるなのはちゃんに使役者候補生の誘惑(吸血)があって、そわそわしてるとこにフェイトちゃんが偶然来ちゃって「吸ってないよ!」って言い訳するなのはちゃんと、特に気にしてない(この時は)フェイトちゃんとか。

続きは心のスクロールバーを下げてお読みください(^o^≡^o^)!





テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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