つづき

この間のつづき。

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「ただいま。」


かちゃり、と戸を閉めて誰も居ないはずの部屋から「おかえり」なんて、少し心地よい声。なんとなく、出迎えてくれる誰かが居るのは嬉しくて、ちょっとだけ頬が緩んだ。………ただし彼女は幽霊なんだけど。


「フェイトちゃん、今日は何してたの?」
「うん。今日は少しだけ外に出ようと頑張ってみたよ。…やっぱりだめだったけど。」


参っちゃうね、なんて笑う彼女フェイトちゃんは何を隠そう幽霊(?)だ。異例な金髪に整った容姿、吸い込まれそうな紅い瞳。それから透き通った身体。数日前から私の部屋に突然現れたフェイトちゃんは、どうして自分がここに居るのかも分からず、しかもこの部屋から出られないらしい。ちょっと不憫。なによりまだ私と同い年くらいなのに、死んじゃったなんて可哀想。


「幽霊の姿だったら映画でも何でも見放題なのにね…」


なんだけど、当の本人はこの通り、楽観的というのかなんというのか。特に嘆いてる様子はないみたいだった。


「なのはは大学生だよね?」
「うん。そうだよ。」
「帰ってくるの、随分早いけど、別に寄り道とかしてきて良いんだよ?」
「え?……うーん…」


相も変わらず大学内では合コンみたいな集まりに誘われるけど、私は本当にそう言うのが好きじゃない。それよりも部屋に一人でいるフェイトちゃんの事がどうしても気掛かりになって、できるだけ早く帰ってきてあげたいなって思うわけで。どうしてか、自然とそう思うわけで。この気持ちって、なんなんだろ。


「フェイトちゃんも一緒に外に出られたら良いんだけどね。」
「ごめん。もしかして私に気を使って早く帰って来てるのかな…?」
「ふぇ?あ、違うよ、そういう意味じゃないの!」


両手をぶんぶんと振って、首を横に振る。


「その、一緒にいろんなところ行けたら楽しいだろうなって。」


そう思っただけ。とか言いかけて、なんだか恥ずかしくなった。これじゃ、なんだか一緒にお出かけしたいって言ってるようなものだ。…そう言ってるんだけど。


「そうだね…。私もなのはと一緒に出掛けられたら楽しいだろうなって思うよ。」


フェイトちゃんはくすっと笑って「でも」なんて可笑しそうな言い方。


「なぁに?」
「他の人にはきっと私の事見えないだろうから、なのはは一人で話してる人みたくなっちゃうよ?」


気を付けないとね、なんて可笑しそうに笑ってそう言うフェイトちゃんはとても楽しそうで、そんな彼女を見て、私も楽しくなる。とても綺麗な容姿で、大人っぽい風貌で、なのに子供っぽく笑う。そんな彼女がとても───…


「…………。」
「なのは?」
「な、なんでもない。…私、お風呂入ってくる!」
「え?うん。あ、お湯沸かしてないんじゃない?」
「シャワーで良い!」
「あ、そう。」


どうしたの?急に。なんて言うフェイトちゃんを無視して、私は浴室へと駆け込んだ。とんでもない事態に気が付いてしまった。


「うわ…。」


そんな彼女がとても。その先に続く言葉に、自分に恥ずかしくなった。こともあろうに、彼女に少なくとも好意を抱いてしまった。つまり、恋をしたということになる。彼女──…幽霊に。恋…なのかどうか分からないけど、そう意識しだしたら、止まらなくて。そんな熱を冷まそうとして、冷たいシャワーを浴びた。





………そうしたら、風邪をひいたりなんてしちゃったんだけど。









「なのは、熱は?」
「ん…。8度ちょっと…。」


翌日、熱っぽさに予感はしたんだけど、案の定風邪をひいちゃったみたいで。


「はぁ。……なんで冷たいシャワーなんて浴びたのさ。」


こめかみに指を当てて、眉間にしわを寄せてフェイトちゃんが言う。フェイトちゃんが怒るとこんな風なんだ、なんて熱っぽい頭で感想を抱く。なんで冷たいシャワーを浴びたかなんて、そんなの言えるはずない。


フェイトちゃんに恋心を抱いた、なんて。


「んん…今日は学校休むしかないかな…」
「当たり前でしょ。あぁ、私が物に触れればいいんだけど…」


お粥も作れないな…なんて困った顔で言うフェイトちゃんが何だかかわいかった。


「何笑ってるの。なのは。」
「だって、良かったなって。」
「何が?」
「ん。いつもは一人で寝てるしかないけど、フェイトちゃんが居るから。」


一人暮らしの風邪とか体調不良ほど辛いものはないと思う。だって、寂しいし、しんどい。身体のしんどさは一緒だけど、気持ちの話で。


「そこに居てくれるだけで嬉しいっていうか…。だから、それだけで良いよ。」


こんなに素直に言葉が出てくるのは熱の所為なのかもしれない、なんてぼんやり思いながらそう言うと、ほんの少しフェイトちゃんの頬が染まったような気がした。


「えと…そっか。」


じゃあここに居るから安心して眠っていいよ、なんて。そう言って額のあたりに手をかざす。触れる振り。なのに、どこかひんやりと感じた。


「冷たくて気持ちいい。……気がする。」
「幽霊って冷気感じるっていうから、もしかしたらと思って。」
「ありがと。フェイトちゃん。」
「何もできないけど、ここに居るから。もう眠って?」
「ん──…」


熱の所為で重い瞼は、もう少し起きていたいという私の意思に反してすぐに閉じて。私はそのまま眠りについたのでした。



















「………。」


ふ、と静かに息を吐く。熱の所為か少しだけ息が荒いなのはの寝息を聞きながらちょっとだけ眉を寄せた。額に触れても触れた感覚も感じなくて温度も感じなくて、それが少し悲しくて。目の前に居るのに何もできないことが歯痒かった。


「ごめんね、なのは。」


生前の自分の事は全く覚えていない。名前だけは覚えているけど。身体に触れる感覚はないけれど、心には感覚があって、自分の無力さだけを感じて目を閉じる。

なのはは居てくれるだけで良いと言ったけれど、私はもっと彼女のために何かしたかった。体調が悪い辛さを、変われるなら変わってあげたい。苦しそうななのはの姿をただ見ているだけなんて。


「早く良くなって。……なのは。」


彼女に向けるこの感情は。もちろん心配。だけど、それ以上に。根本的な感情だと思う。死後も、こんな感情を誰かに抱くようなことがあるなんて。とても頭が痛い。どうしてこうなったのか。なるべくして、だったのか。


「………困ったなぁ。」


もう私、死んでるのにな。まさか、「恋」をするなんて。死んだ後でも恋なんてするものなんだろうか。なにより、どうして私はここに居るんだろう。もしかしたらなのはに引き寄せられたとか、そんなのだろうか?とか、考えて自分で可笑しくなった。運命の人だとか、そういうのだとしても自分はもう死人で、彼女は生きていて。


「ま、いいか。」


秘めておけばいい。然るべき時が来るまで。いつか彼女は誰か恋人が出来て結婚をして子供を産んで。幸せになってもらわねば。それまで見守っておこうと小さく自分自身に約束をした。ちょっぴり悲しいけれど。彼女の重荷だとか、枷にはなってはいけない。それだけは絶対に嫌だった。


──…その気になれば成仏できるものなんだろうか?


少しだけ、そんな疑問がわいて。


「成仏するなら、なのはが幸せになったのを見守ってから、かな。」


眠っているなのはの額に口付ける。触れられない口付けなら、許されるだろう。少しだけ悲しいけど、小さく笑みが漏れた。



その翌日にはなのはの熱も下がり、なのははすっかりいつも通りで。「一日で治るなんて」と思ったものの、「昔からこんな感じだよ」なんて笑うなのはの笑顔に心底安心したのだった。










続くかなぁw

テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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なのフェイ信者ですw
初心者ですが宜しくお願いしますorz
あと、一応リンクフリーです(^^);

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