霊獣とかいう奴の話 前編

ひゃっほう!◝(⁰⊿⁰)◜

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遥か古代から、高名な魔導士には「霊獣」と呼ばれる遣い魔が居た。それは、魔導士が異界から呼び出す生き物で、別途の呼び方をするならば「悪魔」あるいは「魔獣」とも言う。その性質に禍々しさは無いため、今現代ではほとんどの者が彼らの存在を「霊獣」と呼んでいた。










「………はぁ。」
「そう落ち込むことないわよ、なのは。」
「だって。」


魔道書庫と呼ばれる図書館で、昨日の事を思い出して。肺の中の空気が全部出るくらいの深いため息を吐いた私に、隣に座るアリサちゃんが慰めるように「次頑張んなさいよ」と言う。ここは魔導士が通う学校で、私とアリサちゃんはそこに通う魔導士。……の、訓練生。

私もアリサちゃんも、魔導士としてはそこそこ有名な家の人間で、だから、私は昨日の夜の事を思い出してますます深く息を吐く。


「昨日こそは呼べると思ったんだけど…。」
「あんまり無理するんじゃないわよ。」
「……。」


私たち魔導士には、魔道ランクというものがあって。私もアリサちゃんも、それは同年代の子たちに比べたらずっと高いはずなのに。私は、何度挑戦しても「霊獣」を呼べたことがない。アリサちゃんはずっと前に呼んだのに。


「…すずかちゃん、元気?」
「お陰様で。」


アリサちゃんが呼んだ霊獣は人型。つまりは霊獣の最高位、みたいなんだけど。霊獣にはそれぞれランクというものがあって、呼んだ魔導士の魔力が高ければ高いほど霊獣の魔力も高くて、それから霊獣に見初められれば、より相性の良い霊獣が召喚できるって授業で習った。


「何がいけないのかなぁ…。」


対する私はどうしても、今まで何回挑戦しても霊獣を呼べたためしがない。魔力ランクだって高い方なのに、どうしても。それって霊獣の方が私を選んでくれてないってことなのかな。なんて考えては、もう一度小さく息を吐く。お父さんもお母さんも「気にすることない」っていうけど。


「霊獣が居なくたってあんたにはフェイトがいるからいいでしょ。」
「はぁ?……フェイトちゃんねぇ…。」


そう言えば何処行ったかな、と視線を巡らせた私に「フェイトならすずかと何処か行ったわよ」なんて若干不機嫌そうにアリサちゃんが言う。

フェイトちゃん、というのは私の幼馴染。まぁ、殆ど一緒に過ごしてるから幼馴染というよりは姉妹に近いかもしれない。事実、フェイトちゃんは小さいころから私の家に住んでいたし。今は寮だけど。


「フェイトちゃん、私が霊獣呼ぶの失敗するたびに笑うんだもん。」
「……意地悪いからね、あいつ。」
「優しいところもあるんだけどね。」


だから、結構人気もあるわけで。主に女の子から。


「でもあれじゃない?なのはに霊獣が来たらなのはを独占できなくなるわけだし。それで妬いてるんじゃないの?」
「な、そんなわけないでしょ!」
「まんざらでもなさそうじゃない。」
「違うってば!」


いつもの冷やかし。なのにいつも私はこんな反応ばっかりする。フェイトちゃんが私の周りをうろうろするせいで他の子からも「付き合ってるの?」とか勘違いされるし。


「フェイトちゃんは私をからかっていつも楽しんでるし、私はそれが迷惑だし。」
「へぇ。……その割にフェイトが他の子と居ると仏頂面してる事が多いんじゃない?」


どうなのよ。なんて。


「どうもないったら!ただの幼馴染!」
「はいはい。っと、噂をすれば。」


ちらりとアリサちゃんが視線を向けた先、すずかちゃんとその隣を歩くフェイトちゃん。2人は仲睦まじく楽しそうに談笑しながらこちらにやってくる。ちなみに霊獣とはいってもすずかちゃんは人間とほぼ一緒。違いがあるとすれば、それは呼ばれた霊獣である証の令呪という特殊な模様が体のどこかに浮かんでいる事くらい。そんなわけで、アリサちゃんの側を離れずここの生徒としてこの学校に通っている。

なんていうか、そういうのが良いなって思ったり。別に「霊獣を呼べることがステイタス」だなんて、そんな考えに賛同するつもりもないけれど。なんていうか、自分の為に側に居てくれる存在が、少し羨ましい。


「なに?なのは、不機嫌そうだね。」


声が聞こえるほど近くに来て、フェイトちゃんはちょっとだけ眉を寄せていた私の顔を見て笑って、手を伸ばして私の前髪をくしゃりと撫でた。


「ちょっと。」
「アリサに苛められでもしたの?」
「んなわけないでしょ。」
「ダメだよアリサちゃん。」


なんですずかまで便乗するのよ、なんて「ダメだよ」と言ったすずかちゃんにアリサちゃんが肩を落とす。


「それで?何の話してたの?」


うん?なんて目を細めて微笑むフェイトちゃんに、なんとなくムッとして。


「フェイトちゃんには関係ないでしょ。」


そう言うとフェイトちゃんはちょっとだけ紅い瞳を瞬いた。


「なのはの事で私に関係ない話なんて無いでしょう?…反抗期なのかな?」
「だから、前髪くしゃくしゃにしないで!」


とまぁ、こんな調子でいつもフェイトちゃんは私をからかってばかり。昔はもうちょっと優しかったんだけどな、なんて唇を尖らせた。…いや、今も優しいけど。前はもう少し、こう。


「はぁ、もう帰ろっか。そろそろ遅い時間だし。」
「それもそうね。」


私たちの帰宅する寮は学校のすぐ近く。だからつい学校に長居しがちなんだけど。ちなみにアリサちゃんは霊獣であるすずかちゃんと同じ部屋。まぁ、遣い魔だし、その辺は当たり前なんだと思うけど。

ちなみに大体の子の遣い魔は獣型。狼とか、猫とか。そういうの。だから、人の姿をした遣い魔というすずかちゃんは、いろんな人に一目置かれている。もちろんそんなすずかちゃんを呼んだ、アリサちゃんも。だって高校生でそんな霊獣を呼べるなんて、正直すごいと思う。




なんて。寮に戻ってもそんな事を考えていたせいか、なんだかちょっと憂鬱で。同じ部屋のフェイトちゃんに「具合でも悪いの?」と怪訝な顔をされた。ちなみに家の事情とかそういうのを考慮して、私とフェイトちゃんは同室。


「うぅん。そうじゃないんだけど。」
「……昨日の夜、失敗したこと?」
「ん。」


ずっと考えていた。どうして私は霊獣が呼べないのか。


「魔力のランクだってそんなに低くないのに霊獣が来ないってことは、私が霊獣に嫌われてるのかなって。」


ベッドに腰かけたままそう小さく言うと、フェイトちゃんは呆れたような息を吐いて。それから私の側にやってきて、からかうようにではなく優しく前髪を撫でた。くしゃくしゃにならないような撫で方で。


「そんなことはないよ。霊獣はきっとそんな感情持ってない。」
「そうなの?」
「……霊獣はね、異界で眠りながら待つんだ。自分だけの魔導士を。だから、魔導士が自分だけの霊獣を待つのと一緒。お互い待ってるんだよ。どちらが選ぶとかじゃなくて、ただタイミングが合うのを。」
「……そ、なんだ。」


優しく聞かせるようなフェイトちゃんの声が心地良い。こういうところはやっぱり優しいから、ずるいと思う。普段は意地悪なくせに。


「どうしてそんなの知ってるの?」


すずかちゃんにでも聞いたの?と視線で問うと、少しだけ瞳を瞬かせて、それから意地悪く笑う。


「授業で習ったよ。忘れたの?」
「えっ!うそ!」
「ちゃんと授業聞いてないなら、呼べなくても仕方ないんじゃない?」
「なにそれ!」
「うわ、枕投げるのやめて、ちょっと…」


言われてみれば授業でも習ったような気はする。


「……もー。」
「霊獣が欲しいならちゃんと知識も持ってないとね。」
「………。」


ちらりと視線を向けるとフェイトちゃんは相変わらず、紅い瞳を細めて綺麗に微笑していた。小さいころから姉妹みたいに育ったフェイトちゃんは、意地悪で、でも本当はとてもとても優しくて。私が霊獣を呼んだら関係がどう変わってしまうのか、ちょっと不安な面もある。だってもし。すずかちゃんみたいな人型だったら、ずっと一緒には居られなくなっちゃうのかなって。まぁ、そんなに高ランクな霊獣を呼べるとは正直思ってないけど。


「ねぇ、フェイトちゃんは霊獣呼ぼうと思わないの?」
「……。」


フェイトちゃんだって魔力はかなり高いと思う。だから何気なく枕を抱いたままそう聞いたんだけど、聞かれたフェイトちゃんは隣で少しだけ笑った。


「なのはで手一杯だから、まだいいかな。」
「なにそれ。」
「なのはが無事に霊獣を呼べて、私離れしたらその時に呼ぶよ。」


どこか余裕なフェイトちゃんに、私はなんだか面白くなくて。


「霊獣…本当に呼べるのかな…」
「なに。急に。」
「別に…。」


何となく。魔力ランクが高いのに霊獣を持っていない私は落ちこぼれなんじゃないかと肩を落とす。自分でそんな風に思ってるわけじゃないけど。


「誰かに何か言われたの?」
「………。」


無言の肯定。からかい交じりのクラスの男子の言葉を思い出す。その子はそれなりの霊獣を最近呼べたらしい。


「好きな子ほど苛めたいっていう心理、じゃないかな。」
「え?」
「なのはに気があるんじゃない?」


ちょっとだけ苦笑してそういうフェイトちゃんは「次なにか言われたら私が潰してあげる」なんて物騒なことを言ってもう一度私の前髪を撫でた。


「さて。そろそろ眠ったら?明日起きれなくなるよ?」
「……いつも起きれないのはフェイトちゃんでしょ。」


朝が弱いフェイトちゃんに少し苦笑してそう言うと、フェイトちゃんは私の言葉を無視して電気を消した。


「おやすみ。なのは。」
「……おやすみ。」


小さいころは一緒のベッドで寝てて、最近もたまに一緒のベッドで寝たりするけど。今日は別々で。そんな私の空気に気が付いたのかどこかからかいの混じった声で「一緒に寝て欲しいの?」なんて言うフェイトちゃんにクッションを投げつけて。そのまま私は眠りについた。



まだ見ぬ私だけの霊獣に、思いを馳せて。

























続く(かもしれない)
ぜ、前編って名前だからって後編があるとは限らないんだからねっ!←





テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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