つづきです

これの続き。

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“皆、ええか?”



遡る事数日前。なのはを助けに行くための作戦をはやてが告げた。何度も何度も脳内で反芻するフェイトは、もう何度目かの確認を終えて、湖の湖畔で静かに瞳を閉じ、それから息を吐いた。


もうすぐ日が沈む。…夕暮れ時期。決行は今夜。
逸る心を抑えて、フェイトはぐっと静かに手を握る。


今夜は星がよく見えそうな気がした。


















「フェイトちゃん、何度も言うけどくれぐれも無茶せんでね?」
「分かってるよ。」


すっかり日が暮れて、最後の打ち合わせを終えて。フェイトの昂った神経をなだめるように、はやてが声を掛ける。

はやてが思ったほどの興奮はフェイトには見られず、むしろいつもよりも穏やかに見えるフェイトの顔色に少しだけほっとして、最後にもう一度口を開いた。


「……私は一緒には行けないけど、ここで待ってるからな?」


なのはちゃんも一緒にちゃんと帰ってくるんやよ、と続けて。それを聞いたフェイトは一瞬の瞬きのうちに少しだけ微笑を浮かべて、一度の頷きで返事を返す。空には幾つもの星が瞬いていて、昔見たウミナリの星空を思い出した。


「よし。行こう…。」


城に侵入するのはごく少数。あまり大人数で行くと目立つ。

如何に最小限の動きで終わらせられるか。それが大切だと先日の作戦を説明したときにはやてが言っていたことを、フェイトは思い出していた。所謂、隠密行動。城の中に仲間が居るせいか、存外簡単に作戦は進みそうだった。

門番に気取られぬよう背後に近づいて声も出せぬ間に仕留める。もう何度かやって来たその暗殺行為。手慣れてしまった自分に少し嫌気がさしたがフェイトにそんな事を厭っている暇や余裕はなかった。

何をするにも優先するのはなのはの無事で、今も昔もそれは変わらない。なのはを助けられるのならば自分はどうなっても良かった。

肉を断つ感触を覚えたその手で、己の大切な人に触れられるのか。幾日も考えてきたその疑問に、ついに今日まで答えが出なかったけれどそれでも良いとフェイトは思う。今の自分をどう思われようが、彼女をウミナリまで無事に帰す。それさえ叶えばあとはどうでも良かった。


容易く侵入を許された城の中は思いのほか人の気配がない。それは別棟で催されている晩餐の方に人手を取られているからかどうなのか分からないがフェイト等にとってはまたとない好機だった。



「急げテスタロッサ。あまり時間がないぞ。」
「……分かってる。」


同じような造りの場内を足音一つ立てずに進む。途中で何人かの兵の命を奪ったが、そんなことは今更なので気にすることもない。壁伝いに進んで身を隠し、見回りの兵が自分たちが潜む場を過ぎ去っていくのを待った。


「……ッ、」


自分に背後を見せた拍子に口を覆い、小刀で一気に急所を貫けば、瞬間、びくりと兵士の体が跳ねて事切れる。ここへ来て何度も繰り返している一連の動作だった。


「見事だ。」
「……急ごう。」


シグナムの純粋な賞賛を無視して。兵士の死体を引きずって奥に放り投げて、フェイトは小さく息を吐く。なのはが居ると聞いている部屋はもうすぐだった。退路の確保を怠らぬよう細心の注意を払いながら、歩を進める。ウミナリのとは全然違う陰気に満ちた城内。こんなところになのはがずっと居たのかと思うと、フェイトはやるせない気持ちになる。

どれほど悔いても仕方のない事。幼いあの日、自分にもっと力があったなら。なのはと自分は今頃どうしていただろうかと。何度も見る夢。ここに来るまでに何人の命を奪ったか分からないし、知りたくもない。フェイトはつまらない事を考えていることに気が付いて頭を振る。──と同時に気が付く。


「……なのは。」


その部屋は彼女の部屋だと聞いた。地図にもそう記されている。

その部屋の扉の前に複数の兵士が立っていて、どうやら何かもめているようで。恐らく催されている晩餐に強引に連れていかれるかそんなところと予想されるのだが、それよりも先に体が動いていた。後ろのシグナムの静止も聞かず、何より先に。


いつかなのはが連れて行かれた、その日の屈辱を払拭するように。


兵が動くよりも先に距離を詰め、その剣を振った。
























「──だから、なのはは行かないって言ってるでしょう!!」
「い、いいよ…アリサちゃん。私…行くよ。」
「ダメだよなのはちゃん。今日は──…」


もうすぐ助けが来るとそう凍えて言ったすずかちゃんに、少しだけ眉を寄せる。時刻は夜。今宵は城でまたしても晩餐会が催されていて、今はその場への参加を命じられている所だった。

一度参加したその晩餐で見世物にされて好奇の視線を寄せられて、屈辱にも耐えた。「彼女」の事を教えてもらえると騙されて。

なのにまた、参加を強制させられて、私は首を横に振ったのだけどどういうわけか今夜に至ってはそれが許されないようで、王に命じられた兵たちが私を連れ出しに来る始末。聞けば私を気に入った大臣が居たという話だった。

それを面白がった王の悪趣味な遊び。


私が晩餐に赴かず、この場に居ることでアリサちゃんやすずかちゃんにどんな危害が及ぶのか。それが一番怖かった。私の所為でもう誰にも傷ついて欲しくない。「彼女」みたいに。二人の反対を押し切って、部屋を出る決心をする。

二人の話だと、今夜私をこの城から助け出す算段をしているらしいのだけど、でもどの道この状態ではきっと助けに来ても争いになったりしてしまうと思う。だったら、と思っての事。


「…いま、出ます。」


部屋の入り口でアリサちゃんともめるその兵士にそう告げて。
アリサちゃんとすずかちゃんの反対を押し切って一歩部屋の外に出ようとして。


「ッ…!!」


瞬間、乱暴に兵士が私の腕を掴みあげて思わず苦悶の声が漏れる。


「ちょっと!なのはは具合が悪いって言ってるでしょ!そんなに乱暴に──…」


アリサちゃんが怒鳴るのと同時に、今度は別の方向から。




「──…なのは、伏せて。」



聞こえたのは小さな声。少しだけ低い、アリサちゃんとかすずかちゃんとは違う声。

私はこの声を知っている。ずっと昔から。ずっと、ずっと。

反射的に体を小さくして兵士から離れるように低く頭を下げて、言われた通りに伏せた。その瞬間、今度聞こえたのはくぐもった男の悲鳴だった。ズン、という鈍い音の後に、私を掴みあげていた兵士の体が崩れて、何が起きたのかわからないまま、私はひとまずアリサちゃんに引っ張られてその場から少しだけ距離を置いた。


「何者だッ!…貴様!」
「……。」


兵士に対峙するのは黒いフードの侵入者。この人がきっとアリサちゃんやすずかちゃんが言っていたミッドチルダから助けに来た人だろう。でもさっきの声は?

何故か動機が激しくて体温が上がった気がした。酷く落ち着かなくて、心が逸る。どうして声を声を聞いただけでこんなにも落ち着かないんだろう。目の前で流れるように兵士の剣を交わす、素人目にも強いと分かるその人は。一瞬のスキをついて、その屈強な兵士をあっさりと倒してしまった。


「なのはちゃん、怪我してない?」
「あ、うん…」


気遣わしげに声を掛けてくれたすずかちゃんに頷いて返事を返すけれど、次の瞬間には騒ぎを聞きつけた兵士が2人、こちらに向かって来ていて。


「おい、勝手なことをするなと──…聞いているのかテスタロッサ。」


その反対側から今度は別のローブを来た人がやって来て、やや怒り気味にそのフードの人に呼びかける。


「え?」


けど、それよりも。今しがた呼ばれたその名前に思わず声が出た。

だってその名前は私の国に代々使える神官の名前だ。


それは彼女の名前だった。


「──…シグナム。先になのはを連れて出て。」


ローブから覗いたのは金色の髪。


「貴様一人おいて行くなど主に面目が立たん。」
「私なら大丈夫だから。君たちも。ここに皆居るほうがやりにくい。シグナムだってわかってるでしょ。」


はらりと、フードを脱いで、その人はそう言った。長い金髪。白い肌。それから紅い瞳をこちらに向けてその人は少しだけ笑う。

困ったように、泣きそうな顔で。


「……ふぇ、いとちゃん…?」


それは私がずっと、ずっと想っていた人。あの怪我では生きていないとそう言われていた、彼女自身がそこに居た。

幼いころ別れたままの、何時か将来を約束しあった人。昔よりも大人びた分、とても綺麗で、だけど凛としていた。時が止まったようにも思えて、だけどそれは一瞬で、私の言葉に彼女は少しだけ苦笑して。


「そうだよ。…なのは。」


一言だけそう答えた。

何年ぶりに彼女に会えたことが嬉しくて、何よりも生きていてくれたことが嬉しくて。だけど感動の再開に浸っている時間はあまりなく、無情にもそれは無数の足音に阻まれた。


「シグナム!行って!後から合流する!」


早く、と怒鳴るように急かすフェイトちゃんのその言葉にシグナムと呼ばれたその人が無言で頷いて、アリサちゃんとすずかちゃん、それから私を連れてその場を後にする。驚きとか色んな感情で動きが鈍い私は引きずられるように。


「待って!フェイトちゃんは──…」
「テスタロッサは足止めの為に残る。…すまないが急いでくれ。」


もうあまり時間がない、と静かに言って殆ど私を抱き上げるようにして。


「やっ…離して!私も残りますっ!」


折角逢えた彼女を残して離れたくなくて、身をよじる。フェイトちゃんはもうこっちを向いてさえいなくて、走り寄ってくる兵士に身を構えて対峙していた。

振り向きもしない彼女の背中は妙に遠くて、切なくて。



「離して!」


またこのまま会えなくなったらと思うと、いっそう恐怖を感じた。兎に角怖かった。折角逢えたのに、また離れるなんて嫌と叫んでもシグナムさんと呼ばれた彼女は私を下してはくれず、すずかちゃんもアリサちゃんも首を横に振るだけで。


フェイトちゃんの姿が見えなくなって今更、一粒、涙がこぼれた。


それは多分、色んな想いが詰まった涙だったと思う。


会いたかった。誰よりも。何よりも。ずっとずっと。諦めていたから、もう諦められなくて、触れていないから現実味を帯びなくて。本当に彼女だったのか、少し時間が経っただけでこんなにも不安になる。



大人びた彼女の姿は、本当に綺麗で、凛として格好良くて。
金髪の奥、知らないピアスが揺れていた事だけが、印象に残っていた。




























続く、かなぁ
わかんないけど。



さむ……







テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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なのフェイ信者ですw
初心者ですが宜しくお願いしますorz
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