doubt 16

あんま進まないけど…

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鏡に映る自分の顔は、正直あまり好きではなかった。──が、人に取り入る分にはこの上なく便利で、だから。まぁ、今では割と気に入っている、かな。


「そろそろ…かなぁ。」


計画の分岐点。私と彼の。予想していたよりも早く、僅かにずれた私の計画を修正する手立てを、瞳を閉じて考える。

正直侮っていた。彼を。だから、彼女が口にした「アリシア」という名前に心底驚いた。昔のあんな情報が出てくるとは思いもしなかった。いや、出てこないはずだったのに。確かに全て消し去った過去の人物。なのに。

目を開けると、鏡越しに紅い瞳と目が合って、少しだけ苦笑が漏れた。


「…侮ったよ、ジェイル。」


貴方が彼らにそんなヒントを出すなんて。一体どういうつもりなのか。それにあの日、病院で狙撃手に私を狙わせたことも。きっとジェイルの仕業だろうとなんとなく確信していた。

監獄を出る際に捜査官に付けられた首元のチョーカーに指を伸ばす。捜査官との奇妙な生活は、案外退屈ではなかった。それに不思議と名残惜しい気もした。けど、それも些細な気の揺れなんだろう。

私は、ずっと、約束を果たすためにこうして生きてきた。…この知識も何もかも、全てはこの時のために。

長かったな、と息を吐いて、洗面所を出る。出た瞬間に睨むような視線を感じて振り向けば「遅い」と、相変わらず怒った顔をした彼女が居て。可笑しいのと同時に何となく、少しだけ小さく胸が痛んだ気がした。それは恐らくもしかしたら、罪悪感なのだろう。おくびにも出さず、遅れたことに対して笑って謝罪をして、私は彼女に続いて家を出る準備をしたのだった。


















「は?」


今朝は随分と支度に時間のかかった彼女が、不意に言ったそのおねだりに、私は思わず眉を寄せた。


「だから、銃とか。…そーゆーの貰えないの?」
「冗談でしょ。」


にこりと微笑んだまま、彼女は事もあろうに武器が欲しいと言い出した。ここが車内で、私が運転中じゃなかったら頬のひとつも抓ってやりたいところだけど、生憎今は手が離せなくて、だから言葉に少しだけその意を込めて。


「だって一応命を狙われてるわけだし。」
「だからって犯罪者に銃なんて持たせるわけないでしょ。」
「…けど、私は協力者だよ。」


少しだけ笑って、彼女は偉そうな態度で足を組む。堂々とそんなことを言われても銃なんて渡せるはずがないのは彼女だって解っているはずだし、心なしかそうやってからかわれている気もしてきて。何だか真面目に相手をしたら負けな気もしてきたわけで、私は無視を決め込むことにしたのだった。

捜査局に着くと、彼女は大きく伸びをして相変わらずゲストパスをひらひらと受付に見せて慣れたように入局した。通り過ぎる際に女の子とかが振り向いて彼女に少し熱の籠った眼差しを送るような風景には何というか正直慣れたし、甘いマスク…というものの効果か(私は認めないけど)なんだかんだで彼女はすんなりここに溶け込んだとも思う。私たちの前以外では猫被ってるっていうのもあるけど。

けど、こうやって彼女の歩く姿を後ろから見ていると、彼女が詐欺師じゃなかったらという別の未来を想像してしまうのも確かで。……例えば、彼女が捜査官だったら。前にも考えた事があった。こんなに歪んだ性格じゃなくて…例えば───…と、妄想しかけた所で、視線で追っていた背中が緩やかに振り向いて、それから私を見て笑う。


「背中に随分視線を感じるんだけど?」


クスッと笑って相変わらずの挑発。彼女のそんな態度に、私は今までの妄想を綺麗さっぱり打ち消した。やっぱりあくまでも彼女は犯罪者。彼女がアリシアであったときに、どんな経緯を経て今に至るのか、そんなのは考えても仕方のないことだと小さく息を吐く。


「……何でもない。」
「何だか元気ないね。」
「別に。少し考え事…」


つい、と顎に伸ばされた手を無言で払って、私は彼女の前でもう一度ため息をついた。


「なのは。」
「なに?」
「この間のアリシアの件で何か考えているのなら」


そう言われて思わずドキッとした。考えていたことを言い当てられて。彼女はいつになく真剣な瞳。間近で目が合って、ほんの少し心拍数が上がった。以前は惹き込まれそうで怖かったその紅い瞳は、今はそれほどまでに恐怖心を感じないけど、ただ。今はその奥の感情が読み取れないことが歯痒かった。


「その事なら、何も考えなくていい。」
「え?」
「これは私の最大の親切心だよ。嘘偽りのない。もし君がアリシアの事で何か考えているのなら、それは考える必要のない事だ。」


それはどういう意味?と目で問うと彼女は少しだけ、何とも言えない微妙な顔で笑う。


「もう一度言うよ。」


だって私はアリシアではないのだから、と。私の耳元で静かにそう告げて。


「私は…生まれた時から私だよ。残念な事にね。君が想像しているような事は何もない。」


最終的に言ったのはそんな事。つまり彼女は私に、これ以上余計な詮索をするなと言いたかったのか…それとも。まさかとは思うけどその件で気に病んでるように見えて励ました…とか?…流石にそれはないか。


「そう。ならもう一旦この事は考えるのをやめる。」
「一旦…ね。」


局の中を歩きながら彼女の横を素通りして、今度は私が前を歩く。後ろについてくる気配を感じながら、歩を止めて。


「まず先に、ジェイル・スカリエッティを捕まえる。」


そう宣言するように言うと、少しだけ彼女は微笑んだように見えた。


「賢明だね。…そろそろ潮時だし私も本腰をあげようかな。」
「初めから真面目にやってよ。」
「良いけど、約束…覚えてる?」
「何度も聞かないで。」


今更決心が鈍るとかそんなわけじゃないけど、何となく。それ以上聞かないで欲しい。そう少し素っ気なく言うと、彼女は嫌みたらしく「覚えてるなら良いよ」とだけ言った。

ジェイル・スカリエッティを捕まえるためなら、犯罪者でも悪魔でも何でも良いって言ったのは私で。事実彼女は犯罪者。つけた条件は自分の身体。馬鹿だと分かっているけど、それでも我慢ならなかった。沢山の人が、何の罪もない人たちが彼のせいで苦しんでいることが。


「…君は」
「え?」
「いや、何でもない。……みんな待ってるだろうし、中で話そう。」


何か言いかけて、首を横に振って。それから、彼女は私を抜かして進んで、捜査室の扉を開けた。

中にはみんな揃っていて、何となくほっとしたようなそんな気持ちになる。そんな私を余所に、彼女はいつも座る位置の椅子に腰掛けて、それから突然、話し始めた。



ジェイル・スカリエッティに近付く大切な話を。






















あんま進まなかった…
次回で少し動くかと(ノ)°ω°(ヾ)


テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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なのフェイ信者ですw
初心者ですが宜しくお願いしますorz
あと、一応リンクフリーです(^^);

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