doubt 18

久々の…なので、なんか話がずれてたらすんませ(´;ω;`)。

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「随分と思い切った事をするね。」
「……何が?」


受話器から聞こえる温度の計れない声に問う。


「いやいや。こちらの話だ。」


普段あまり使わない公衆電話の受話器を肩に挟み耳に当てたまま、視線を外へ向けた。相変わらずこのボックスの外はあまりにも普通な日常の風景で、なんとなく目を閉じる。

捜査局を抜け出してから数日。その後、私は捕らえられていた仲間の脱出に手を貸し、そのまま外の生活を満喫していた所だった。そうして、彼と連絡を取った。

──電話の相手はジェイル・スカリエッティ。


「……彼はどうするの?」
「あぁ、そのうち処理するさ。」


処理、という言葉に少しだけ、眉根に力が入る。少し前、私が捜査官たちと一緒にホテルで確保した爆弾魔の1人。ジェイルの計画通り、彼を捕まえたように見せかけて捜査官等を泳がせる情報を少しずつ出させて、その後どうするつもりだったのかも聞いていない、利用価値のわからないその男を連れ出すように指示されて、私は捜査局を去る前に彼を連れ出した。「処理」という事は恐らく、いずれかの方法で抹殺されるということだと悟る。

何のために私に、捜査官に彼を確保させたのか狙いは全く見えず、恐らくは意味のないことなのだろうと理解して息を吐いた。ただ、確保した事によって一喜一憂する捜査官等を嘲っていたのだと、大凡大した意味もなくそんな考えなのだろうとなんとなく理解して。


「それよりもフェイト。」
「はい?」


そろそろこっちに合流してくれたまえ、と薄く笑う声。これも計画通りなのか何なのか。彼の思考は読むに難しかった。いずれにせよ、私の計画もここまではぴったり一緒。予想外なことはあれど、至極順調だった。……と思っていた。


「…じゃあ、近々。」


そう言って、電話の受話器を置く。彼の居場所を知っているわけではないけれど、概ね把握はしている。考えなら分かる。ボックスから出た外は、とても天気が良くて。空を見て、なんとなく彼女に悪い事をしたと改めて思った。後悔はしていないけれど、彼女らはどうしているだろうかと。少しだけ思い出して、笑みが漏れた事に気が付いた。




















「……ごめんね、皆。」
「なんでなのはが謝るのよ!」


私のせいだ。と声を絞り出した私に、アリサちゃんがデスクを叩く。

数日前、彼女に薬か何かを打たれて。気が付いたら私は医務室に居て、それから彼女は居なかった。目が覚めて何かの悪い冗談かと思ったんだけど、そんなはずは無くて。みんなに会わせる顔が無くて、俯いた。第1級犯罪者である彼女を逃した咎めも今の所何故か無くて、かえってそれが心地悪い。

挙句彼女は爆弾魔の1人の脱走を企てて、その人さえ連れて逃げた。だから、2人も犯罪者を取り逃がした事になるのだけど…。


「フェイトちゃん、協力的やと思ったんやけどなぁ。」
「うん…。全然、逃げようとか考えてる素振りも無かったね。」


はやてちゃんとすずかちゃんの言葉に、視線だけ向ける。と、その後からアリサちゃんが舌打ちをした。


「気が変わったんじゃないの?」
「そんなタイプにも思えんけど…」


そうやろか、なんて眉を寄せたままのはやてちゃんと目が合って。どうしてか、泣きそうになった。彼女が居なくなって数日、その後あまり進展はない。と言うよりも、彼女が居なくなってしまった事でほんの少し絶望的な気持ちになった。でも、いつまでもくよくよしてるわけにもいかない。しっかりしなくちゃと、色んな感情を押し殺して息を吐く。


「とりあえず、今までの情報とか少し整理しようか。」


居なくなってしまったものは仕方ない。どうしようもない。デスクに散らかしたままの書類を持ち上げて、トン、と整える。

──と、一枚だけ紙が落ちた。


「あ、」


何だろ、なんて拾い上げて見たそれにはびっしりと文字の羅列が続いていて。彼女のメモだとすぐに分かった。ジェイル・スカリエッティに関しての。もとから逃げるつもりだったらこんなことするだろうか、なんて、また変な期待が湧く。そんな自分が愚かで、小さく唇を噛んだ。悔しくて。でも本当は、悲しくて。


「……なのは。」


ほんの少し躊躇いがちに呼ばれたアリサちゃんの声に顔を上げる。アリサちゃんは少しだけ言いにくそうにして、眉間に皺を寄せたまま。


「あんたもしかして…フェイトのこと…」
「え…」


ぞわりと、そこまで言われて一瞬息が止まりそうになった。もしかしたら止まってたのかもしれない。


「なん…、何言ってるのアリサちゃん。」


そんなわけ無いじゃない、なんて少し笑うけどアリサちゃんは冗談を言ってるわけじゃなくて至って真面目な顔で小さく息を吐く。


「好きなんでしょう?フェイトちゃんのこと。」


代わりに口を開いたのはすずかちゃんだった。


「すずかちゃんまで…?」


そんな筈ない。


「彼女は犯罪者だよ?そんな筈ないじゃない。」


そう言って苦笑した。だって。そう、そんな筈がない。彼女は犯罪者だ。それに。


「私は捜査官だもの。」


これは、この感情は恋じゃない。ただ、切望しただけ。同じ捜査官だったら良かったと。それだけだと言い切って、この話はこれでおしまいにしようと手元の書類を集めた。


「……捜査官とか、犯罪者とか。そういうの関係ないんやない?」
「えっ…」
「なのはちゃん、自分で思いたくないだけなんやないかな?」
「そんなこと。」


けど、続けられたはやてちゃんの言葉に、胸の芯がじわりと疼く。認めたくなくて、違うと首を振って、なのに裏腹にどうしようもなく悲しくなった。あんな人間を、好きになんて。なりたくなかった。なのに。


「なのはちゃん…」
「馬鹿ね。泣くくらいなら、認めちゃいなさいよ。」


何も悪いことなんか無いんだから。なんて言うアリサちゃん。気がつけば一雫涙が溢れていた。思えば彼女を好きになる要素なんてどこにも無かった。彼女は犯罪者で、傲慢で、嘘つきで。なのに。時折見せる寂しそうな瞳が忘れられない。


「なんで…かな。」


情けなく小さく漏れた言葉はそんなこと。本当は、彼女の瞳に怯えていたのはきっとこうなる予感がしたからかも知れない。最初から。


「そういうのは理屈じゃあないんよ。きっと。」
「そーよ。自分の気持ち認めて、それでどうするかはあいつをしっかりとっちめてから決めなさい。」
「ふぇ…?」
「そうだよ、捕まえて牢獄に入れたら誰にも取られる心配ないし!」
「す、すずかちゃん?」


さすがにそれはどうかと思う。そもそも彼女が大人しく牢獄でじっとしてるかな。なんて、皆のおかげでちょっとだけ身体の強張りがとれた。


「ともあれ、なんやフェイトちゃんのこのメモ…振りとかそういう感じにも思えないし、なんか訳があるんやないかな。」


そう言って拾い上げた彼女のメモ。確かにこれを見たら、捕まえる振りとか嘘とかそういうのじゃない気がする。これは私の勘だけど。


「とりあえず、ジェイル・スカリエッティを追えば彼女の事もなにかわかると思うの。」
「そうね。…まずは、やっぱり…情報整理ね。」


彼女や、ジェイル・スカリエッティについて。それから、少し前に調べていた、ずっと気掛かりだったことにもう一度目を向ける。「アリシア」という人物がどうしても引っかかる。まだみんなに話していなかったこと。彼女と瓜二つの少女、アリシアが何者なのか。


これだけが、彼女に確実に近づく情報だと思えた。




それがあまりに悲しい事実だと知るのは、もう少し先のことだった。


































テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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なのフェイ信者ですw
初心者ですが宜しくお願いしますorz
あと、一応リンクフリーです(^^);

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