doubt 21

間を開けすぎたかな…。
なんかわけ分からなくなってきた(*'ω'*)

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『さて、少し話をしようじゃないか。』


古びた廃墟の中、私たちの目の前。画面の向こうで、ジェイル・スカリエッティはどこか楽しそうにそう言って笑った。


「生憎、私達もそんなに暇じゃ無いの。」
『おやそれは残念。』


ククク、と笑う彼の後ろに立つ彼女と目が合うことはなく、ならばいつまでも画面越しの無駄話をしているつもりもない私は、画面から視線を逸らし出入り口のへと顔を向けた。どれだけ懇願しても、切望しても、彼女は彼女で、犯罪者で、私とは相容れない。分かりきったことだけど。この後に及んでまだ彼女にそんな期待を抱く自分が悔しくて、馬鹿らしかった。でももう、そんな期待をするのはこれで最後。もう、しない。

そんなことを思った刹那、だと思う。


「……ッ」


───眩暈がした。それは私だけじゃないみたいで、隣のアリサちゃんも、頭を押さえる仕草。次いで、はやてちゃんとすずかちゃんが膝をつく。そこで画面の向こう側のジェイル・スカリエッティと目が合って、考えを把握して、状況を理解して、後悔した。同時にその可能性を考えていなかった自分を、叱咤する。


「な、…に…?」
『一種の神経ガスだよ。……さて、改めて話をしようじゃないか。あぁ、ガスを調合したのはフェイトだから、命に害をなすようなことはないだろう。』


フェイトは優しい子だからね、と笑うジェイル・スカリエッティの声に、視線を彼女へと移す。けど、視線の先の彼女はそれでも何も言葉を発さず、静かに目を閉じていた。どうやら私たちに選択肢は与えられていないみたいで、彼の気が済むまで話を聞かなければいけないようだった。


「…貴方は、一体何をしたいの…?」


それから、最初に口を開いたのはすずかちゃんだった。その質問に、待ってましたとばかりに画面の向こう側の彼が口を開く。


『そうだなぁ。』


どう説明すれば良いかな、と続けて。薄く笑みを浮かべて。それから言葉にする。おおよそ私には、私たちには理解し得ない事を。


『僕は常日頃、自分がもう1人居たら良いなと思っていてね。…あぁ、唐突だったかな?……君達はクローン体というものを知っているだろうか。』


ほんの少し自分に酔ったような話し方。彼は陶酔したように続ける。


『僕は、それが欲しい。不死なんて事を追求するつもりはないがどうせなら何世代にも渡り、僕という思念が続いていけば良いなと思う。』


何の冗談で、どんな映画の話かと思った。クローンなんてものは、例えば動物とかでなら聞いたことがある。実験段階だとも思うし、それより何より。人間でそんな事が本当に可能なのかと眉根を寄せた。


「はぁ、それは凄い大志やな。……貴方みたいなのが2人も居たらもう世間は大変や。それだけは阻止させてもらう。」
「大体にして人間のクローンなんて成功例もなければリスクが高すぎるわよ。…そもそも世界でも禁じられてるわ。おおよそ常人の考える事ではないわね。」
『禁じられている…ねぇ。ククク…そうだ、フェイト。君はどう思うかな──?』


そこで、彼は突然彼女に話題を振った。今まで沈黙を守り、ずっと無表情で視線すらこちらに向けなかった彼女に。どうしてか、彼女が何を言うかが酷く気になって、画面に釘付けになる。


『私は───…』


話しかけられた事を予測していたのか、少しだけ苦笑して、一瞬こちらに目を向けてすぐに逸らす。それからその質問の答えを言う前にコートのポケットから手を出す素振りをして。

パン、と一発の発砲音が響いた。

その瞬間に、その場に居た誰もが驚きに声を失った。撃ったのは彼女で、撃たれたのはジェイル・スカリエッティの傍に立っていた女の人。確かクアットロ…だったかな。打たれた瞬間にその女の人が崩れ落ちる。それから、ゆっくりとその銃をジェイル・スカリエッティの後頭部に向けた。静かに、何も言わず。


「な…、」


一体何が起きたのか理解できなくて、ただ画面を食い入るように見つめていた。その先で。


『おやおや、どうしたんだい、フェイト。』


銃を向けられた当の本人は平然と薄笑いを浮かべていた。気持ちが悪いくらいに平然と。そんな彼に、やっぱり彼女は驚く様子もなく無表情で口を開く。


『こうなったこと、悪いとは思ってないよ。ジェイル。…いや、…お父さん。』
『やれやれ、少し急いたね。フェイト。』


いけないなぁ、なんて言って薄笑いを浮かべたまま、ジェイル・スカリエッティは顎に手を当てた。銃口を突きつけられている割に、随分と余裕が伺えて、かえってそれが怖いような。それともこれが2人の演出なのか。


「…親子、だったの……?」


潜めた声でアリサちゃんが言う。画面の向こう側の彼女は、まだ引き金を引くつもりはないようだった。


『どうしたんだい、フェイト。君はもっと慎重派だと思っていたよ。』
『別にどうもこうもないよ。』


少しだけ微笑して、彼女は言葉を続ける。こちら側を意識する事もなく、真っ直ぐにジェイル・スカリエッティだけを見て。


『初めからこうするつもりだった。…この時をずっと待ってたんだ。…貴方を討つ事だけを考えてきた。』


それから言ったのは、想像もつかない言葉。私たちは蚊帳の外で、画面の向こう側でだけ話が進んでいる。このガスがいつまで効力を持つのか、身体がまだ痺れて動かないのがもどかしかった。


『それはまた…どうしてかな。』


僕は君には優しくしてきたつもりだったけど、なんて笑うジェイル・スカリエッティに、彼女は無表情のまま口を開いた。


『それが母さんの願いだから。』


彼女の母の願いが、ジェイル・スカリエッティの死。一体どういう事なのか全くわからなくて、だけど真相を知りたくて、不安に心が急く。何となく不安になった。彼女が、実に彼女らしくない妙な錯覚。私が知っている彼女は完璧で、危うさなんて微塵も感じさせなかった。

なのに、今の彼女は……とても不安に思える。どうしてかなんてわからないんだけど。危うさを感じる。彼女らしくない。そんな、口を挟む事もできず画面の向こう側の事の顛末を見守る事しかできない私たちの背後で。








「らしくないんじゃないかな、フェイト。」






声がした。

聞き覚えのある、知っている声が。その声は、ここにいるはずのない人物の声だった。












テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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なのフェイ信者ですw
初心者ですが宜しくお願いしますorz
あと、一応リンクフリーです(^^);

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