doubt 22

ついにネタバレ的な。
追記から22話。なんかあれな感じ。

コメントお返事後日致します!読んでます!ありがとうございます(^ω^≡^ω^)!!!
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「らしくないんじゃないかな?」


いるはずの無いその人間は、薄く笑みを浮かべてそこに立っていた。画面の中、間違いなく向こうにいるはずのジェイル・スカリエッティ本人にそっくりのその人物。声も、容姿も何もかもが似ている。…同じ。全く同じだった。その姿に声を失って、確認するように今一度、画面へと顔を向ける。──と、画面の中のジェイル・スカリエッティより先に、彼女の表情に目がいった。


『……どういう事?』
「何がかね。」
『これは…何?』


彼女が「これ」といって指さしたのは画面の中にいる、ジェイル・スカリエッティ。そう言った彼女の顔は、苦悶の表情を浮かべているように思えた。その感情は、怒りのようにも思えた。そして悲しそうに見えた。初めて見るかもしれない彼女の激情。何故ジェイル・スカリエッティが2人もいるのかと言う事よりも、彼女の事が気がかりで、目が離せなくて。けれど、口を開いたのは、こちら側にいるジェイル・スカリエッティだった。


「……教えただろう?フェイト。事を急いたと。君はもう少し慎重だと思っていたし、本来の君ならこんなにも愚かしい行動には出なかったはずだ。」


そう言って、こちらを見たジェイル・スカリエッティ本人と目が合った。視線を交わすのは初めてかも知れない。間近で見る彼は、どこか不気味だった。


「それはスペアだ。私のコピー。クローンだよ。…最も、まだ成功の域には達していないがね。」
『やっぱり貴方を、もっと早く殺しておくべきだった。』


ぼそりと低く、呟いたのは彼女で。今までの堂々たる天才詐欺師の姿はそこにはなく、今の彼女はとても危うく儚い存在に思えた。


「プレシアの願いか。…ククク、相変わらずだ。君は変わらないな、フェイト。」


口元に手を当てて笑うジェイル・スカリエッティ。何がおかしいのか、一体何がどうなってるのか状況についていけなくて、痺れが残る身体で様子をうかがっているしか出来なくて、それがもどかしい。


「…だが、プレシアの願い通り私を殺したところで君は殺人者だ。たかが母親の願いのためにこの先の人生を棒に振るのかね。」


父としてそれは感心しないな、などと冗談交じりに高らかに笑ったジェイル・スカリエッティに、彼女は少しだけ表情を落として、感情無く笑う。そして、ゆったりとした動きで、カメラに向かって立ったまま、画面の向こうでじっと座ったままのもう一人のスカリエッティに銃を向けて、発砲した。


『これもジェイルのシナリオ通り?』
「あぁ。大方その銃も殺傷性は低いものなんだろう?」


どうやらここまでの一幕が、ジェイル・スカリエッティの思惑通りのようだった。彼女が画面の向こうの2人に銃を向けて発砲するまでが。殺傷性がない銃。つまり、敵を無効化するもの。麻酔銃とか、そんなものを彼女がどこで入手したかは分からない。けど、現に、撃たれたもう一人のジェイル・スカリエッティと、クアットロという女性は、抵抗もなく静かに無効化された。大人しく。それも彼の命令だったのかもしれないとも思えた。


『…さっきの質問。』


それから握っていた銃を手放して。こちらに冷ややかな瞳を向ける彼女が続ける。さっきの、とは殺人者云々の話のようだった。


『構わないよ。殺人者だろうがなんだろうが、構わない。貴方を討った後の事に興味はない。』


──外の世界に興味がない。いつか彼女が言った言葉を思い出した。


『母さんの願いは…。その願いにはまだ続きがある。』
「ほう?」


果たしてそれは一体何かな?と、高らかに問うジェイル・スカリエッティは、それが何か分かっているような顔をして、続きを待った。私はどうしてか、画面の向こう側の彼女の言葉を、続きを聞きたくなくて、胸が詰まるような気持ちになる。この場にいるのに、私たちはまるで部外者で。画面の向こう側で、表情なく言葉を続ける彼女の事がとても気掛かりだった。


『母さんの願いは。』


いつも通り笑ったその顔が、どうしても寂しそうで悲しそうに見えて、見ているだけで胸が苦しかった。


『母さんが私に願った事は、言った言葉は「ジェイルを殺して、貴女も死んで」だった。』


それから、感情の読み取れない声音でそう告げる。母親に「死んで」と言われた彼女の気持ち。母親の願いを全うしようとする彼女。無意識に、小さく唇を噛んだ。


「ククク…」


少しの沈黙の後、堪えきれないとばかりに声をあげて笑ったのはジェイル・スカリエッティだった。彼は「やっぱり」と言いながら、お腹を抑えて笑う。何が「やっぱり」で何が可笑しいのか全然分からなくて、だけど私達が口を挟む余地はなくて、ただ黙るしか無くて。


「成る程ねぇ、じゃあまぁ、君もここに来たまえよ。ここに居るお友達が大切ならね。」
『……。』


そう言ったすぐあとに、彼女は目の前の画面から姿を消した。それを確認して、そうしてようやく、ジェイル・スカリエッティが初めてこの場で、私たちに向かって口を開く。






「さて、じゃあフェイトが来るまで話でもしようじゃないか。暇だし、なんなら質疑応答でもするかね?フェイトがここに来るまで十数分程度だろう。」


ジェイル・スカリエッティはそこまで言うと、どうする?なんて薄ら笑いを浮かべた。どうするもこうするも、まだ身体は動かせない。こんなにも目の前にいるのに、彼を捕まえることが出来ない。歯痒くて不甲斐なくて、なす術もなく、ただ好機を待つことにした。彼らの話の真理に触れながら。


「画面の向こうに居たもう一人の貴方は、本当に…クローンなの?」
「もちろん。…まだ不安はあるがね。概ね良好だ。彼は文字通りコピー。それよりは息子のようなものかも知れないなぁ。」


つまり、彼はそれを切り捨てた事になる。彼にとってはその程度の「息子」なのだと分かった。


「まぁ、私にとって一番可愛いのはやっぱりフェイトなんだがね。」


クククと笑って、とても可笑しそうに話す。なんとなく、彼が彼女の話をするのが面白くなかった。


「それにしてもいけないな、あの子は。なかなか母親離れ出来なくてね。子供は愛の結晶などと愚かしい事を言うつもりはないが、はてさてどうしたものか。そう言った揶揄で言うなら、フェイトは狂愛の結晶と言えるだろう。」
「……?」


彼女の生い立ちを面白おかしく口にするジェイル・スカリエッティは、近くにあった椅子に腰掛けて言葉を続ける。


「君達にはこれといって興味も無いんだけどね。…しかしフェイトが君達にこんなに入れ込むとは思わなかったよ。」


とても饒舌に、まるで講演でもするようにジェイル・スカリエッティは話を続ける。


「フェイトは昔から本当に優秀な子供だった。」


この言葉だけを聞けば、子を溺愛する親バカな発言にとれたと思う。けれど実際には違う。彼は彼女を、まるで作品か何かのように話す。それが気に食わない。


「貴方はフェイトちゃんの実の父親…?」
「そうとも言えるし、違うとも言える。…フェイトには幼い頃から色んなことを教えてきた。学校などフェイトには必要なかったからね。」
「な……」


すずかちゃんの質問に、当たり前のようにそう答えたジェイル・スカリエッティは、昔話をするように続けた。


「私の研究所にも時々来て居たよ。…その頃から私はクローン技術に興味が尽きなくてね。だから、もっぱらフェイトの遊び相手をしていた。彼女は良い子だったから僕の話は何でも聞いた。……あぁ、けれど。」


思い出しながら、クスッと笑う。


「研究所で子供達を実験の素材にしていた事がばれた時は…あの時は初めて反抗したなぁ。」


それこら思えばあれが自我の芽生えだったのかな、なんて続けて声を殺して笑った。


「勝手に研究所の子供達を逃がそうとした時には肝を冷やしたよ。子供ながらに私を出し抜くなんてね。」





“───何かすると思うの?“





不意に、あの日の彼女の言葉が過る。犠牲になった子供達のために何もしなかったのかと詰った私に、何食わぬ顔でそう答えた彼女の答え。同時に、あの時の悲しさと、悔しさを思い出した。そして、胸が軋んだ。


「それ、フェイトちゃんが研究所の子供達を逃したってこと…?」
「全く驚いたよ。……言い付け以外の行動を起こすなんてね。」
「さっきのクローン?もそうだけど、あんた一体人を何だと思ってんのよ!」


はやてちゃんと彼のやり取りの間に、ついに激昂したアリサちゃんの言葉。そんな言葉にジェイル・スカリエッティは笑う。


「さっきのクローンに関しては、あれは彼の意思だよ。私の役に立つのが、彼の意思だったのさ。」
「それは…」


クローンも、クローン元と同じ考えで動くという事か。そう問うと、やっぱりジェイル・スカリエッティはまた笑った。


「コピーはオリジナルと同じ意思を持つのかという事かい?ククク、なかなか面白い質問だ。素晴らしい。」
「さっきのクローンの彼も…貴方の気持ちに賛同して同じ考えで動いたの?クローンというものは、性格も…一緒になるようなものなの…?」
「ふむ。それは私には分からんよ。オリジナルにはコピーの気持ちは分からない。同じ性格で、同じ考えから賛同した可能性もある。或いは、私を親と敬い忠義を尽くした可能性もある。」


そう言って、ちらりとドアへ視線を向けて。


「つまるところ、コピーの考えはコピーにしか分からないのさ。…何なら聞いてみるといい。そのコピーに。君はオリジナルと同じ考えを持つのかと。……なぁフェイト。」


そう言ったと同時に、ドアがガタンと音を立てて開いた。


「……え?」


ドアの先には少しだけ肩で息をした彼女がいて、彼女は彼の言葉を最初から聞いていたのか途中から聞いていたのか、不快そうに眉を寄せる。


「教えてくれないか、フェイト。コピーの意思や性格はオリジナルと同じなのか。コピーは…君は、オリジナルと同じ意思を持つのか。」


“君と、アリシアと。“


抱く感情や意思は、同じなのかな?と。
しんとしたカビ臭い廃墟の部屋で響いたのは、堪えきれず漏れたジェイル・スカリエッティの笑い声とそんな問い。




その質問に。



視線の先で、彼女の紅い瞳が静かに揺れた気がした。









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ジャンル : アニメ・コミック

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なのフェイ信者ですw
初心者ですが宜しくお願いしますorz
あと、一応リンクフリーです(^^);

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