doubt 23

追記から(∩ ´ ∀ ` )∩お久しぶりです…
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「教えてくれないか、フェイト。コピーの意思や性格はオリジナルと同じなのか。コピーは…君は、オリジナルと同じ意思を持つのか。」


扉を開けた瞬間、耳に届いた声はジェイルのそんな言葉だった。こちらを見る5人の視線に少しだけ眉を寄せて、そのくだらない質問の内容に小さく舌打ちをした。


「──ジェイル。もう何度もその質問には答えたし、そんなオカルト染みたことがあるはずない。私は"私"だ…。他の誰でもない、私で、残念ながらアリシアではない。……アリシアには、なれなかった事を貴方は知っているはずだけど?」


私はアリシアじゃない。アリシアだったらどんなに良かったか。その質問に首を横に振る私に、そう言った言葉に、僅かに疑問と不安を綯い交ぜにした視線を感じた。──けど、かまっていられなかった。彼女らの体が麻痺している時間はさほど長くない。あと十数分で少しずつ身体が動かせるようになるはず。邪魔される前に、私は私の目的を果たす。絶対に。


「ククク、すまないフェイト。少し意地悪をしただけだ。」
「……?」
「君のお友達の捜査官の皆さんは君の出生について何一つ知らないようだったのでね。」


ジェイルの言葉に小さく息を吐く。彼はただ私を煽って楽しんでいるだけだ。分かっている。私が冷静さを欠くのを楽しんでいる。感情を揺さぶって私の様子を見ている。サンプルを眺めるように。


「何を勘違いしているのかわからないけどその手の感情なら、私はとうの昔に捨てたよ。私はもう──…」



そこまで言って言葉をやめた。何を言っても無駄な気がして。


「まぁいい。私は君とこんな口喧嘩をしたいわけではないのでね。」
「私も同意見だよ。こんな回り道しないでさっさと動けばよかった。」


終わりにしよう。そう言った瞬間に、ジェイルが口を開く。


「残念だ。……折角の頭脳がありながら。」


実に残念だよ、と小さく笑ったジェイル。戯言と聞き捨てて、静かに銃を握る。今度はクアットロやジェイルのまがいものに使った銃とは違う殺傷性のある銃。彼を討った後、この廃墟を破壊して、私は───…


「……待って。」


ほんの数秒考えに耽った思考を呼び戻したのは彼女の声だった。いつも私が聞いているより低い、小さな声。なんとなく、彼女の静止を聞きたくなかった。ジェイルは私同様、生には執着がないだろう。だからこんなにも余裕で、こんなにも隙だらけで。期間的にも、費用とかを考えても彼のクローンが他にいる可能性はほとんど無い。今なら彼を殺せると、そう思ったのに。


「………。」


彼女の呼びかけに、反応してしまった。ほとんど無意識に一瞬、体が反応した。


「駄目。殺さないで。」


そこでようやく、視線を彼女に向ける。驚いたことに、彼女は壁を支えに、立っていた。おおよそ強靭な精神力の持ち主なのだろう。それは前から分かっていたけど、それでもとても驚いた。だって、きっと。大の大人の男でも立ち上がれるほどに回復するのはまだ先だ。それなのに、華奢なその体で。大したものだと素直に感服した。


「……言ったでしょ?ジェイルはあげられない。」


ごめんね、と笑う。そんなやりとりを、ジェイルはただ見ていた。


「ジェイル・スカリエッティは、……私が、逮捕する…の。」
「残念だけど、君の頼みでもそれは出来ないよ。君との約束は、守れない。」


だってこれは母さんの願いだから。ジェイルを討つ事で、私はようやく解放される。


「フェイト。ここではやりにくかろう?」
「そんなことはないけど。」
「……場所を変えようじゃないか。地下に研究所がある。」


そんな誘い文句にのる馬鹿じゃない。


「プレシアの日記があるんだ。」
「………。」


けど、彼の言葉に揺らいだ。プレシアは私の母だ。最も、実際に産んでもらったわけではない。私を造った母。私の細胞元であるアリシアの母。──優秀な研究者で、娘を失って狂った女性。私は彼女に母親らしいことをしてもらった記憶などない。むしろ虐げられて恨まれて憎まれて疎まれていた。なのに、私から彼女を切り離すことはいつもできない。それが自分でもいつも理解できなくて苦悩した。


「なんなら私の研究所の破壊方法も教えよう。」
「……何故?…一体何がしたいの?」


私はいつもこの男の思考が読めない。この男は紛れもない天才だと思う。常軌を逸した天才科学者。ゆえに、私の母の研究を手伝い、私を生み、知識を与えた。だから「父」と呼んだこともある。その呼び方に感情はなくて、それはただの呼称に過ぎないけれど。


「さぁ。……ただ、君の感情の揺れを観察したかっただけかもしれないな。人間という種族で唯一成功した、人型クローンの君の成長が楽しみだった、とでも言っておこうか。」
「いや。…貴方は、人々を殺戮することを楽しんでいた。」
「間引いていただけだよ。……人間が増えすぎて生態系がおかしくなることは好ましくないのでね。…ただそれだけだ。」


そんなことはない。ジェイルは確かに楽しんでいた。無関係な人々の殺戮を。そう口にしようとして。私よりも先に、彼女が口を開いた。ほんの少し震えた低い声で。震えているのは恐らく、怒りからだろう。


「ふざけないで。」


静かな怒りだった。そんな彼女の姿を、美しいと思ってしまった。どうしてか、ずっと彼女は他人の為により感情を揺るがす。それがなんとも不安定で、だけど力強くも美しく気高い。不覚にもそう思ってしまう。だからこそ、なんとなく。


「ジェイル。…地下の研究所は何処?」


彼女に背を向けた。彼女の近くにいると長年決めてきたものが揺らぎそうになったから。天才詐欺師と呼称された私が、ただのちっぽけな人間に思えてしまうから。……この歯痒さを、自分の胸の中にある不可解な感情を理解できなくて戸惑う。


「来たまえ。……そこで終わりにしようじゃないか。」


ジェイルがどういうつもりなのかは分からないし、どうせ罠かもしれない。けど、彼女の前に立っていることが、何よりも辛かった。彼女の前に立つとこんな自分が恥ずかしいようなそんな錯覚でさえ起こして。

だから。


「もうすぐ動けるようになる。……悪かったね。」


そうとだけ言い残して、私はその部屋を後にした。

















「悪かったね」


そう言い残した彼女はいつも通り不敵な笑みを浮かべて部屋を出た。痺れる体を引きずるようにして、壁を支えに追う。


「なのは、あんた──…」


辛うじて、体を動かせるのは私だけみたい。だったらなおさら、力がこもる。


「私が、止めてくる─…」


私が、彼女を止める。あの日彼女を叩いてしまったことを謝りたい。詐欺師の皮を被った彼女の素顔をほんの少しだけ見れた気がした。寂しそうな瞳をしていたような気がした。助けを求めてるような気がした。言いたいことが山ほどある。

怒りより先に、悲しさが沸いた。


「なのはちゃん、私らもすぐ行くから。…無茶だけはあかんよ?」
「うん。」
「気を付けてね…!」
「…うん。」


みんなの声を背に受けて、私は部屋を出た。どうしても、彼女が彼を討つ前に止めたい。何が何でも。部屋を出ると、薄暗い通路が続く。痺れる体を引きずるように進むと、すぐに気配がした。薄暗い通路で、待ち伏せするように立つ彼女の。


「……やっぱり、来ちゃうんだね。」


君は。そう言って苦笑い。姿勢よく立って、腕を組んで壁に寄り添って。なんとなく、彼女が居たことに安堵した。


「もうそんなに動けるんだ。…正直驚いたよ。」
「な…」
「どうしてそんなに動けるのか、精神力なんだろうか。──大したものだよ。」


くすくす笑って、さらりと私の髪を梳く。なんとなく、彼女に触れられるのはもう不快じゃなかった。


「あ、謝ろうと──…思っ、て。」


なんとなく変に震えた声が出た。そんな声に、彼女はちょっとだけ驚いた顔。あぁ、もしかしたら単純に、私の言葉に驚いたのかもしれない。


「謝るって、何を?」


案の定、彼女は私の言葉に驚いたようだった。「謝る」ということに。


「何って……、この間、叩いたことを…」


だって彼女は、そうじゃなかった。何もしなかったわけじゃない。犠牲になった子供たちをちゃんと助けようとしていた。それが、純粋に嬉しかった。そう言うと、彼女は少しだけ意外そうな顔をして、それから小さく笑う。


「律儀だね。…でも、あまり気にしてないよ。」


だから君も気にしなくていい、と続けて。


「ジェイルの事は、悪いけど諦めて。……責任もって私が片を付けるから。」
「そんなの…」
「その為に生きてきたんだ。その為に詐欺師として、ずっとやって来た。」


彼女が詐欺師になったきっかけも、どうして詐欺師として過ごしてきたのかも、ちゃんと話を聞いていないから分からない。それほど大きな決心があったということは理解してる。それでも。


「それでも、私は貴女を殺人者になんてしたくない。」


ジェイル・スカリエッティを殺させたくないわけじゃない。ただ、彼女の手を、染めたくない。ただの自分の我儘な理由。純粋な願い。今頃ジェイル・スカリエッティは地下とやらの部屋できっと彼女のことを待っているんだろう。でも、させたくない。ジェイル・スカリエッティを殺めてしまったら、きっと彼女はもう戻れない。何となく、それこそジェイル・スカリエッティの思うつぼのような気もしたし、実際のところはよくわからないけれど、とにかく止めなければと痺れの残る体で目の前に立つ。


「それは、なぜ…?」


捜査官として?と問われて私は言葉に詰まる。何て言えばいいのか分からなくて。どうしていいのか分からなくて。


「それは…貴女の事が──…」


多分好きだから、なんだと思う。こんな状況でこんなことを言っている自分が信じられないけど、こんな状況だからこそ、心の内を言葉にしようとして。目の前の彼女が少しだけ笑った事に気付いた。困ったような苦笑した顔。


だけど、どうしてか、それはとても泣きそうな顔に見えた。










次回はフェイトさんの過去の話かなーとか思ったり思わなかったり。少し間を空け過ぎてしまいましたすいません(´;ω;`)

テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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なのフェイ信者ですw
初心者ですが宜しくお願いしますorz
あと、一応リンクフリーです(^^);

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