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騎士つづき

神官のやつの続きありましたので。
今年もよろしくお願いします(*´ ∀ `*)

そろそろ素敵な恋更新しないとですかねぇ〜

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「……っ」


雨の後にしては、夜空の空気はとても澄み切っていて、月さえも綺麗に見えた。

冷え切った湖の水が傷口に沁みて、ほんの少しフェイトは眉間に眉を寄せた。怪我にも痛みにも慣れ切っているはずなのに、今日は少しだけ違った気がして、そんな自分を少しだけ嘲笑する。

目を閉じると思い出す。自分に向けられた非難交じりの蒼い瞳を。「どうして」といった唇が少しだけ震えていた。見られたくない相手に、人を斬るところを見られた挙句、追手を逃がした。いずれにせよその追手は様子見に向かってきた隊で、必ずその後に本隊がやってくるだろう。なんにせよ、はやての見解からするとそれはまだ先の事で、今はフェイトに水浴びをさせるくらいの時間の猶予があるようだった。


──はやての読みは、外れた事がない。


だから、その事には安堵できて。それよりも強く、フェイトは追手を逃した自分に小さく舌打ちをした。

以前シグナムに「後悔しているか」と問われた言葉に対して、答えた言葉に嘘偽りはない。初めこそ戸惑いはあれど、人を殺める強さや技術を手に入れた事に関して、フェイトは絶対に後悔などしていなかった。大切なものを守り取り戻す力を、幼い頃持ち合わせなかったその力を今はこうして行使できる。だからなのはを助けられた。

だから──



「フェイトさん。」


ぐるぐると無意味に同じことを考えていた背後から。


「……ギンガ。」


突如名前を呼ばれてほんの一瞬肩が跳ねた。思考にのめり込みすぎて周囲の気配に気を配れなかった自分を、フェイトは少しだけ恥じる。
背後から歩み寄るギンガに些か申し訳なく謝罪して、生傷のある腕を差し出した。ギンガは普段は別の隊の方を歩いていて、戦闘などが多いフェイトと共に歩む事はない。ギンガは怪我などの手当ての要員。だから、こういう時だけ一緒になることが多い。


「謝るくらいなら、もう少し怪我を減らしてもらわないと…。」
「うん、気をつけるよ。」


そう言ったところで、本当に気をつけているならきっとフェイトの怪我はもう少し少ない筈。結局のところ、幾ら注意してもフェイトは自分の怪我を厭わない。言う事を聞くとするなら、それは恐らく1人の言葉だけだとギンガは分かっていた。差し出された腕に薬を塗って、包帯を巻く。水浴び途中のフェイトは殆ど裸に近い格好にも関わらず特に恥じらう様子もなく、ギンガもあまり気にしなかった、というよりは慣れたという方が近いのか。いずれにせよ、手慣れた仕草で包帯を巻き終わった。と、同時に、今度は別の誰かの足音がした。


「あの、フェイト…ちゃん?」


遠慮がちな声と同時に、恐る恐る忍び寄る足音。包帯を巻き終えたギンガはフェイトと二言三言言葉を交えて、それからなのはと入れ替わる様に。さっさと片付けを終えて、なのはに軽く挨拶をしてその場所を後にした。気を利かせたつもりなのか、或いは別の気持ちがあったかは分からないが。


「……どうかした?」


名前を呼ばれて、先程までの戦闘の、一連の出来事がなかったかの様に振る舞うフェイトに。ほんの少し、なのはが胸元で小さく手を握る。


「…あ、ちょっと待ってて、服を着るから。」


そんななのはに少しだけ困った様に苦笑して、フェイトは背を向ける。流石になのはの前でも裸でいる気は無いらしく、背を向けて水浴びで濡れた体を拭いて。服を着る。

向けられたフェイトの白い背中に一瞬なのはも赤面しかけるが、それよりも見つけたフェイトの背中の古い傷痕に、今度は顔を少し青ざめた。

ずっとずっと古いものに思えるその傷痕。心臓付近、恐らく急所に近いだろうその傷は、かつてフェイトが今よりも幼い頃に受けたものだとなのはにも分かる。


「……っ」


それは、幼い頃、なのはが連れ去られた時にフェイトが負った傷だった。致命傷にも思えるその怪我から生還して、こうしてフェイトが目の前にいる事が奇跡なのだと。改めてそう思うと恐怖で身体が震えた。

が、当の本人はそんななのはに見られていることも気付かず、服を着終えてなのはのそんな様子を見て首を傾げた。


「寒い?」


フェイトの気遣わしげな問いかけに首を振る。

──フェイトが躊躇いなく人に剣を降ろしたのが実は少しショックだった。

それはフェイトが、自分の知らない人になってしまった様な気がしたから。けれど、それが自分のために選んだ道だったと聞いた。ここへは、謝りたくて来た。自分のためにここまでしてくれているフェイトに、謝りたくて。

顔を上げると、目の前、月に照らされたフェイトはほんの少し儚く見えた。


「なのは?」
「……。」


水の滴る髪をかきあげて、心配そうに名前を呼ぶフェイト。昔と変わらない、だけど大人びた紅い瞳。何も言えないなのはに、フェイトは何も言わず、そのままなのはを連れ立って、近くの木の根元に腰を下ろした。


「………嫌だった、かな。」


それから、暫しの沈黙の後、それを破ったのはフェイトだった。少しだけ小さい声で、なのはの顔を見るでもなく、隣で懺悔するかのように呟く。なのはは視線だけをフェイトに向けた。


「その、人を殺める様な事…を」
「違うの」


それから、懺悔の様な言葉を続けるフェイトに、首を振る。それ以上言わせない様に、言葉を被せた。


「違うの。……違う。」


そう言葉にして、なのはの中に色んな感情が湧いた。


「なのは?」
「そうじゃ、無いよ。…そうじゃ無いの。」


自分の中に巻き起こる色々な感情のせいで、声が震えるなのはに、フェイトはただ黙ってなのはの言葉の続きを待つ。


「本当はね、実を言えば少しだけ…ショックだったのかもしれない。」
「……うん。」
「知らない人みたいだったから。」
「うん。」
「でも、違うの。」


フェイトの隣に腰掛けたまま、胸元で手をぎゅっと握るなのはに、今度はフェイトが視線だけ向けた。


「フェイトちゃんの背中に、傷があったのを見て、もっと怖くなったの。そんなのが気にならないくらいに。」
「………もう平気なのに。」


少しだけ苦笑して宥めるように言うフェイトに、なのはは泣きそうな顔で首を横に振る。


「それでも…だよ。もう傷ついて欲しく無いの。……離れて欲しく無いの。」
「………。」


いつもよりほんの少し低いなのはの声。どこか震えているような気もしたし、泣いているような気さえした。もしも自分に、幼い頃のようになのはの隣に居る資格があると思えたなら。そのままなのはを抱き締めていたかも知れない。けれどフェイトはそれをしなかった。衝動を無視して、目を閉じる。


「でもね。」


そんなフェイトの隣で、なのはがまた言葉を紡ぐ。


「シグナムさんが言ってたよ。フェイトちゃんは慈悲深いから相手が苦しまないように一撃で楽にしてあげてるって。」
「そんな事言ってたの。」
「うん。それはフェイトちゃんの優しさだって。」
「………違うよ。」
「え?」


苦しまずに楽にしてあげる。確かにそう思ってやっている事もある。けれどもっと根本的な理由があった。


「昔ね、本当に初めて人に剣を向けた時。」


フェイトが遠くを見ながら言葉を続けるのを、なのはは黙って聞いた。


「その時はまだ力も今より足りなくて、剣を向けた相手は瀕死で転がってた。…勿論、お互い様で私も似たような感じだったけどね。その相手が、死ぬ間際に言ったんだ。」


少しだけ情けないような顔をしたフェイトと目が合う。フェイトはなんとも言えないような、少しだけ泣きそうな顔に見えた。


「呪ってやる、って。たった一言なんだけどね。」
「そんな…」
「当時の私にはそれが恐ろしいほど耳に残った。あ、呪われることがじゃないよ。……その敵の胸元に、家族の写真を入れたペンダントがあったんだ。」


フェイトが小さく服の裾を握ったのが見えた。


「誰にだってそうなんだけど、その彼にも家族がいて、待ってる人がいて大切な人がいて。……でもその人は私が…。そう考えたらとても恐ろしかった。…それでも私にも譲れないものがある。躊躇えない理由もあった。」


フェイトが少しだけ苦笑する。


「だから違うんだ。私が一撃で敵を仕留めるのは、もっと利己的な理由。……命乞いをされない為だよ。」


命乞いをされたらきっと揺らぐから。そんな自身の弱さを守る為。いつか命乞いされて逃した兵が倍になって迫ってきた事があった。それがいつか仇になるかも知れない。そのせいで目的が果たせなかったら。それが恐ろしく怖かった。


「幻滅した?」


ちょっとだけ苦笑して自嘲するように言ったフェイトに、なのはは首を横に振る。フェイトの「譲れないもの」が自分にあると誰よりも分かっていたから。フェイトはなによりも、なのはの為に自分を犠牲にしたという事が分からないはずがない。そうして今がある。何にも変えられない事実。それをなのはが非難するはずが無かった。


「ねぇ、フェイトちゃん。」
「ん?」


もう二度と彼女が自分で自分を傷付けないように。今度は自分がフェイトを守りたいと、なのはは小さく願う。二度と剣なんて手にしなくて良いように。だから。


「このままウミナリに帰れたら──」


だけど、なのはが最後まで言い終えることはなかった。顔を上げて目が合った先。フェイトが少しだけ儚く笑ったから。「ウミナリに帰れたら一緒になろうね」などと言う台詞は、言葉になる前になのはの喉元で止まる。そんなフェイトの表情に何故か予感がした。


ウミナリに帰っても、フェイトと一緒に居られないのではないかという直感。そんななのはの様子にフェイトは何か勘付いたのか、少しだけ苦笑してなのはの頭を撫でた。


「ウミナリに帰ったらなのははまず国のこと勉強しなきゃね。」
「う、…ん。」
「一国の姫として学ぶ事は沢山あるよ。」
「……フェイトちゃんが、教えてくれるんだよね?」
「なのはに教えるのは骨が折れそうだ。」


クスクス笑って、フェイトは言う。けれどどうしてもなのはのその予感を拭えなくて、フェイトの肩口に額を埋めた。

このままではきっとフェイトは自分の側から居なくなってしまう。それは予感で、でも確信した。長い間離れて居ても、お互い大人になってしまっても、隠されていても分かる事がある。きっとフェイトはもう神官には戻らないと決めている。

フェイトの肩口に額を埋めたまま、なのははどうすれば良いのかずっと考えていた。どうすればフェイトは自分の側から離れずに居てくれるのか。どうすれば自分はフェイトの隣に居られるのか。




──我儘だと分かっている。ここまで自分を犠牲にして助けに来てくれたフェイトに、それ以上を求めるのは。




なのに、なのはは求めずにはいられなかった。















続。




続くかどうかわかりませんがとりあえず。


テーマ : 魔法少女リリカルなのはStrikerS
ジャンル : アニメ・コミック

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なのフェイ信者ですw
初心者ですが宜しくお願いしますorz
あと、一応リンクフリーです(^^);

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