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月に願う ―果たす約束―

寒いよ~…。
できればまた別の話を
もう1作書きたいと思いますorz

追記より、ラスト『月に願う』。
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「お父さん、どう…して…?」

俄かには信じがたい言葉。
だって、私の気持ちは誰よりも知っているはず。
皆が。お父さんも、フェイトちゃんも。
なのに、婚約が決まった、だなんて。


「正式には、決まっては居ない。」
「ぇ?」
「…彼女に口止めされていたんだがな、」

苦虫を潰したような表情で
お父さんがゆっくりと話し出す。

今回の婚約は、隣国からの脅しである事。
それから、この国には武力が無いに等しいと思って、
少数の武力をこの国へ送り込んだって事。
たぶん、フェイトちゃんが向かったのは
この少数武力の所…だよね。


「だが、彼女は賢い人間だ。」
「ぇ?」
「隣国はもう傾きかけている。今回の婚約は、それを抑えるための計略らしい。」
「どういう…?」
「つまり、隣国の王はお前を上手く嫁に貰うことで国民の反乱を防げると思ったんだろう。」
「…じゃぁ、フェイトちゃんがその人たちを足止めできれば…。」
「隣の国はひっくり返るさ。夜天の一族によって。」


フェイトちゃんは、その夜天の一族の長と
内密に計略を練っていたみたいで、
ようするに少しでも足止めできれば良いって事。

だけど、いくら少数武力とは言っても、
フェイトちゃん1人で―…


「フェイトちゃん、無事に帰ってくるよね?」
「…彼女がな、万が一戻ってこれたら褒美をくれと言った。」
「ぇ?」
「何も欲しがらない子なのに、珍しく…ね。」

そう言って優しく私の頭を撫でるお父さん。

「褒美って…?」
「ふっ、なのは。…お前をくれと言われた。」
「ぇッ…。」

そう言って嬉しそうに
微笑んでいるお父さんだけど、
どうしてか少しだけ浮かない顔をしてる。


「お父、さん…?」
「何だかなぁ、普段何も願わない奴が急にそんなことを言うなんて、不安でね。」

ちくん、と胸が痛くなる。
私もそう思ったから。


『無事に帰ってきたその時には褒美を賜りたい。』


そう言ったフェイトちゃんの瞳は、
何よりも強い輝きがあった。
もしかして…フェイトちゃんは…?

「お父さん。」
「どうした?なのは。」
「馬を借ります。私もフェイトちゃんの所に―…」
「ダメだ。」

そう言って立ち上がった私の着物の裾を掴む。
そう言われるのなんて分かってる。
だけど、フェイトちゃんが無事に戻ってこなかったら、
私は何のために生きてるか分からない。


「なのはっ!」

着物を掴んだお父さんの腕を振りほどいて、
ゆっくりと振り返る。
そして、一国の姫として傅き、誓う。


「約束致します。絶対に戻ります。」

だから、とゆっくり見据えて。

「私の出立をお許しください。」

そう、部屋に響くような声で。
はっきりと伝える。


「…なら、一番速い馬を使いなさい。」

それからこれを、と言って手渡されたのは
家に代々伝わる宝剣。

「お父さん…。」
「その代わり、無傷で戻ってきなさい。彼女を連れて。」

でないと許さん。と
そう言ったお父さんに一礼して
すぐに馬に跨った。

馬の扱いも、剣術も全ては
フェイトちゃんに褒められたくて習ったもの。

私は場所を教えてもらって、
急いで馬を走らせた。









◇◇◇







徐々にこちらへ向かってくる足音。
数にして十数名あたりかな…?

私は、少数武力を待ち伏せして、
思いを巡らせる。
なのはのお父さん、…王と話した事を。




『この国に、少数武力が向かってきています。』


そのことを伝えるために、
私が組んだ計略を話す為に、
8年ぶりにやってきたこの国。
私の故郷。

そして、愛しい彼女に再会した。

亜麻色の髪を結って、
蒼い瞳を携えて屈託無く私の名を呼ぶ。


『フェイトちゃん。』

愛しい、私の姫様。
この計略は、もちろんこの国を守るために。
だけど…君を護る為でもある。
隣国の王なんかに、君を渡さない。
私を救ってくれたあの時から

私は一生貴女だけに仕えると誓った。
命果てるその時まで、私は君だけに―…。


『無事に帰ってきたその時には褒美を賜りたい。』


この気持ちは本当だけど、
私はそう簡単に帰れるなんて思っていない。
もちろん帰ったら頂きたいけど。
世の中そんなに簡単にはいかないんだ。
これは身をもって知ったこと。

何度、君のもとに帰りたいと願ったか。
何度、君を思って泣いたか。
何度、この手を血に濡らしたか…。


きっと、君のもとへは帰れない。
だけどせめて隣国の盤上がひっくり返るまで―…



「ここは、通さない。」


命を賭して護ってみせる。
スラリと長い剣を鞘から抜けば、
相手方もそう簡単には引いてくれず

やはり剣を抜く。

たちまちそこは殺し合いの場に変わる。









「ッ、はぁ!」

剣の鋭さが徐々に落ちてきた。
切った人間の、血と脂で赤黒く光る刃。

あと3人―…


剣の技には絶対の自信を持っている。
並大抵の奴に負ける気は無い、無いけれど…

如何せん数が悪い。
多勢に無勢とはこの事だ。
やっぱり王の言うとおり何人か連れて来ればよかった。


ドス、と相手の肉に剣を深く突き立て
勢い良く引き抜く。
何度見た光景でもやはり気持ち悪い。


「…はぁ、はッ…あと、1人。」

もはや動く者は自分と、ただ1人の相手。
ここまで時間を稼げれば


もう


大丈夫かもしれない。


そんな風に考えたからか、
ただ単に疲れが出たのか…

足元に転がる死体に足をとられて
滑って転んだ。

その拍子に手から剣が滑りぬけた。



「は…ッ、はぁ……」

「死ね。小娘がッ…!」


残った最後の1人は
仲間の仇、と言わんばかりに
私の喉元に剣の切っ先を突きたてる。



なのは。



ごめんね…。


死にたくない。
君に会いたい。


でも―…




残念だ。



目を閉じた瞬間に、鈍い音が聞こえた気がした。









「フェイトちゃんっ!」



恐る恐る目を開ける。
と、どうやらまだ生きているみたいだった。
首がつながっている。


「なの、はッ…何で此処に?」
「助けに来たのっ!」

何で君がこんな血に濡れた戦場に?

「ぅぐッ!?」

別に大した怪我はしていないけれど
なのはが私の腹の上に乗ったことで
なんとも無様な声が漏れる。


「…な、なのは、ッ何を…?」

口が裂けても重い、なんて言えやしない。
だけど冗談言っている場合ではなかったみたい。
目の前のなのはの蒼い瞳には大粒の涙。

やがて、なのはの白く綺麗な手が
返り血に汚れた私の頬を包む。


「…なのは。汚れるから。離して…?」

私はいくら汚れたっていいけど、
君が汚れるのは見たくないんだ。
なんて勝手な言い分かもしれないけど。


「嫌。離さない。」
「…?なの―…」

「フェイトちゃんが言ったんだよ。」
「なのは?」
「『私の全てはなのはの為に。』」
「…。」

私が黙って聞いていると
なのはが更に続ける。


「だから、フェイトちゃんは私のもの。
 私は絶対に手離したりなんてしない。
 絶対に離さない。…だから」
「なのは…。」
「だから、私の許しもなく死ぬなんて
 許さない。
 諦めるなんて絶対に許さない。
 どんな時も、必ず私の所に戻ると誓いなさい!」

私の頬に落ちる雫は
綺麗で、彼女の蒼から流れるそれに
魂まで奪われそうな錯覚を起こす。
全く、何処までも私の心を捕らえて離さない。
その涙は、言葉は何と気高いんだろう。

そして、なのはを抱きかかえて立ち上がらせると
その下に傅いて指先に口付ける。


「―…申し訳ありませんでした。」

傅いていた体勢からゆるゆる立ち上がり
流れる亜麻色を一房捕まえて


「また、命を救われてしまいましたね。」
「…これでますますフェイトちゃんは私のものだね。」

クス、と悪戯に微笑むなのはの瞳には
もう涙はなくなっていた。


「なのは。」
「…。」
「もう、二度と何処にも行きません。だから…」


私だけの姫君になってください。

と、もう一度傅いてくと、
なのはは目を細めて綺麗に微笑んだ。


「…なら、私を連れて帰って?」
「ふふ、畏まりました。」
「それから話し方を元にもどして。」
「…わかったよ。」


なのはを抱きかかえて馬に跨って
ゆっくりと馬を歩かせる。


「…そう言えば、馬…乗れたんですね。」
「フェイトちゃんに褒めてもらおうと頑張ったの。」
「危ないので感心しません。」
「はーなーしーかーたーッ!」

ポコ、と殴られて
思わず苦笑してしまった。

「私のお姫様はじゃじゃ馬みたいだね。」

なんて冗談めかして。

「…にゃは。嫌いじゃないでしょ?」
「うん。大好きだよ。なのは。」
「…。///」


無事国に戻ると、早馬での伝言が届いた。
どうやら、隣国の盤上は見事にひっくり返されたらしい。
さすがは策士の親友。
彼女は、隣国の外れで出会った友。
いつか挨拶に行かなくちゃ―…


「さて、婚儀の予定を立てなきゃなぁ。」
「じゃあ明日っ!」

城に戻った私に、開口一番で言うなのはのお父さん。
なのはもそれはもう嬉しそうに微笑む。


「ぁ、あの…そんなに急ぎはしないので。」

褒美にくれ、と言ったのは
確かに私だけど…


「盛大にやらなきゃなぁ。」
「城下町一週とか?」

…誰がそんな事するの。
発想が派手すぎるよ、さすが王と姫。

「ぁ、…その、そんなに派手じゃなくていいので…。」
「何言ってるの!歴史に残す婚儀にするのっ!」

と、愛しい私の姫…
もうすぐ妻になる君が言うので
私はそれに従うことにした。






あの日月に願った願い。
叶う事など微塵も無いと思っていた。
だけど、そんな願いさえ
君にかかれば簡単に叶ってしまうんだ。


だから、もう一度今夜。
そっと月に願おう。



いつまでも、君と一緒に、と。











駄文なのに、ここまで
読んでくださって
ありがとうございました。
精進いたします。

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なのフェイ信者ですw
初心者ですが宜しくお願いしますorz
あと、一応リンクフリーです(^^);

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